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30. 家族的快楽の行方

例のナイトクラブで、勝君と茂君が呑んでいた。

「結局、どうなったんだい?」と茂君。
「結局、服部家は血族だけの相姦の儀式をやめることになった」と勝君。
「なにもやめることはないじゃないか」
「血族だけの儀式をやめるんだ。儀式をやめるわけじゃない」
「じゃ、枠を広げるのか?お前も入るのか?由加さんも?」茂君が羨望の眼差し。
「そんなもんじゃない」勝君が謎めいた笑みを浮かべる。
「何だよ。早く聞かせろよ」

「服部真蔵氏と長男・真一君が親父を訪ねて来た。おれも同席した」と勝君。「連中の提案は、大伴・服部両家の儀式として合併・発展させようというものだ。一緒にやれば、もはや服部家の秘密ではなくなり“両家の秘密”になる。暴露を恐れる必要がなくなるわけだ」
「考えたね」と茂君。
「服部家の儀式はたった7人で行なわれていた。それに引き換え、大伴家は11人だ。これまで親父やおれが関係したお前や幸ちゃんの家族、おばさんまで入れれば、何と18人。連中の三倍近い。連合・合併すれば連中は三倍楽しめるというわけだ」
「じゃあ、当然大伴家主導だな?」
「もちろん。親父は邸宅の一部に儀式のための建物を拵えることにした。広くて、畳が敷き詰められているだけで、まるで柔道場みたいなものだ」と勝君。
「そこで24人でやるわけか?」
「実際にはもっと多い。服部真一君の奥さん・由加さんと二人の子供、服部真弓さんの旦那とその子供二人も加わるから、総勢30人だ」と勝君。
「すげえ!」
「よりどりみどりだからな。6歳から58歳まで」

「ところで、“儀式”の起源は分ったのかい?」
「なに、大したことはないんだ。昔、服部家で代々長命・長寿だった人を調べたところ、どうも親子兄妹で相姦していたらしいということが分ったんだそうだ。相姦で出来た子供は早死にしたが、相姦した当事者は驚くほど長命だったと伝えられている。それで、あの儀式が行なわれるようになったらしい」と勝君。
「科学的根拠はないわけだ」と茂君。
「全然」
「でも家族全員でおおっぴらに乱交が楽しめる」
「そういうこと。いい儀式だ」

「ところで義兄(にい)さん」と茂君。
「何度云ったらわかる?義兄さんはやめろよ」と勝君。
「ひとつ忘れてることがあるぜ」と茂君。
「何だ?」
「あんた、まだ恵美里とやってない」
「あーっ、白雪姫を忘れてた。おい、今晩行っていいか?」と勝君。
「おれを入れても、あと五人の助けが必要だ。すぐかき集めろ」と茂君。
わはははと二人が笑った。

【めでたく完】




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