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23. 嫂(あによめ)の種馬

康次君(34歳)が兄・康一君(36歳)に呑みに誘われた。康一君は相撲雑誌の記者で、名古屋・大阪・福岡へはもちろん、地方巡業や海外巡業にも取材に出るため、一年の半分近くは家にいないという忙しい身体である。だから、兄弟で呑むなどということは滅多にないことだった。

「お前な、絵里と寝てくれや」兄の康一君が云った。絵里さんとは、康一君の33歳になる妻である。
「え?なに?」康次君が耳の穴をぐりぐりして聞き返す。
「あのな」康一君は周囲の客に聞かれぬように、弟の耳に口を寄せ、低い声で云った。「おれの女房とおまんこしてくれ」
「ぐふっ!」康次君は口に含んでいたウィスキーを吹きそうになり、慌てて飲み込もうとして咳き込んでしまう。「げほ、げほ。あ、兄貴!悪い冗談はやめてくれよ!」
「冗談じゃない」と康一君。「真面目に頼んでるんだ」
「し、しかし、一体どういうこと?」
「お前にはもう三人も子供がいるが、うちはゼロだ。絵里ももうそろそろ34になりかけている。女が35歳過ぎての初産は危険なんだそうだ。だから、早急に妊娠させたいんだよ」
「二人とも身体は調べて貰ったの?」と康次君。
「ああ、絵里は問題ない。おれが“種無し”なんだそうだ」
「種無し?」
「正式には無精子症と云うんだそうだ。おれに精子が無いんで妊娠しないと分ったんだ」
「ほんと?間違いないの?」
「ああ」
康次君は慰めの言葉もなかった。これが会社の同僚や先輩なら何か云わなければならないところだが、兄弟だと沈黙だけでも気持が通じるものだ。日本人同士ならではの意思の伝達法である。
「養子を貰うとか、人工授精という選択肢があるのは百も承知だ。しかし、おれはどこの馬の骨とも分らん奴の子供を育てるのは嫌なんだ」と康一君。

「しかし、何でおれが嫂(ねえ)さんと?」と康次君。義姉・絵里さんは映画女優にでもなれるぽっちゃりと色っぽい美人で、康次君は自分の十人並みの器量の妻・登美江さん(31歳)とは月とスッポンだと思っていた。口に出したことはなかったが、美女と結婚した兄を羨んでいたし、一度でも義姉を抱けたら死んでもいいとすら考えていた。だから、兄の提案は棚ぼたのように嬉しかったのだが、ほいほいと飛びつくのはあまりにも安っぽく思われた。
「お前にもおれと同じ両親の血が流れている。お前の種ならおれも子供を可愛がれると思うんだ」
「嫂さんは承知なの?」
「ああ」
「兄貴、妬いたりしない?」と康次君。
「よくよく考えた上で頼んでるんだ。妬いたりするもんか」
「交換に登美江とやらせろなんて云わない?」
「これはスワッピングの提案じゃないよ。お前に種付けを頼んでるんだ。競走馬の種付けだと何百万も払うらしいが、兄弟の仲だし、お前もいい思いをするわけだから、タダでやってくれ」
「まだ信じられないけど、ほんとに本当なの?」
「ああ。三月の大阪場所でおれが留守にする時から始めてくれ」
「分った」

「一つだけ条件がある」と康一君。
「なに?」と康次君。
「妬かないと云うのは間違いないが、お前らが惚れ合うようになっては困る。そこんとこケジメをつけて貰いたい」
「そりゃ当然だ。嫂さんは、あくまでおれの義理の姉だからね」
「そうだよ。その一環として、絵里をイかさないようにしてやってくれ」
「え?」康次君には飲み込めない。
「お前が絵里をイかそうとすると時間をかけた前戯が必要だろう。種付けのための義理マンとは云え、丁寧な前戯は愛情とあいつに錯覚される恐れがある。そして、イかして貰えば絵里がお前を好きになったりしかねない。そうなると、こっちの結婚生活がヤバくなる。それだけは避けなきゃならん」
「嫂さんをイかさずにやるわけ?」
「そうだ。三擦り半で出して貰えれば一番いいんだが、それをお前に押し付けることはしない。ただ、あいつのことなど考えないで、お前は自分本位で果ててくれということだ。情に溺れるな」
「ふーん?」康次君はちと腑に落ちない。
「もう一つ。これはおれとお前と絵里の三人だけの秘密だ。絶対に口外しないでくれ」
「誰にも云わないよ。生まれた子供にも叔父さんで通す」
「それを聞いて安心したよ。頼むぞ」

康次君は東横線・自由が丘から渋谷に通勤しているのだが、兄と絵里さんの家はその中間の中目黒にあった。康次君は会社を退けてから電車に乗り、途中下車して種付け作業をすることになる。ちょっとした残業という風を装えばいいので便利だった。康次君は突如浮気の相手が出来たような、急に妾を囲ったようなわくわく気分に浸った。それも相手は飛び切りの美人である。夢のような幸運であった。康次君は大阪場所の開幕が待ち切れなかった。

いよいよ三月に入った。兄が東京駅から電話して来た。
「これから三週間留守にする。いつでもいいから始めてくれ。頼む」と康一君。
「了解」と康次君。
その日の午後、康次君は絵美さんに電話した。
「今日、6:30に伺ってよろしいですか?」
「はあ。お待ちしてます」と絵里さん。
康次君は時間きっかりに兄の家に到着した。玄関のドアに貼り紙があった。「康次さん。ドアは開いています。入ったらロックして、私どもの寝室においで下さい」と書いてある。康次君は勝手知ったる家なので、応接間にブリーフケースを置き、背広を脱いでワイシャツ姿で寝室に向かった。絵里さんはベッドに横たわっており、シーツを一枚掛けているだけだった。胸の二つの隆起からして、シーツの下の絵里さんは全裸に間違いなかった。兄・康一君の希望通り、絵里さんも色事としてではなく種付け作業としてスピーディにコトを済ませたいという意向のようである。
「嫂さん」と康次君は云ったが、その後が続かない。何と挨拶しても馬鹿げていてこの場にそぐわなかった。大体、人間同士で種付けを行なうということが尋常ではなく、そんな際の挨拶などあるわけがないのだ。
「ごめんなさい。こんな格好で」と絵里さん。
「嫂さん、辛いでしょうね」と康次君。
「康次さん、お喋りはやめて。早くやって!」と絵里さん。
康次君は驚いた。まるで売春婦の台詞のようだ。売春婦は一晩に何人も客を取らないと食って行けないのだから理解出来る。しかし、義姉に慌てる理由はない筈だ。普段は優しい性格の義姉が売春婦のように冷たく振る舞うのは何故か?「絵里をイかそうなどと考えるな」と兄は云った。義姉にも「弟と愛し合おうなどと考えるな。受胎することだけ考えろ」と云ったに違いない。義姉は兄の云い付けを忠実に守っているのだろう。

康次君はワイシャツを脱ぎ、ズボンとブリーフを取った。絵里さんは無関心の態(てい)で天井を向いている。全裸になった康次君は絵里さんを覆っているシーツを剥いだ。義姉の適度に熟れ、むちむちした肉体が現れた。康次君は義姉の方を向いて身体を並べて横たわった。義姉の豊満なおっぱいを揉み、しぼる。義姉は目を閉じているが、快感を味わおうというのではなく、快感を無視しようと努力しているように見える。康次君は義姉にキスしようと唇を近づけた。絵里さんは康次君の鼻息を感じてパッチリと目を見開いた。 「康次さん!」と絵里さん。
「キスは駄目ですか?」と康次君。
「どうしても必要なら仕方ないですけど」と絵里さん。
「分りました。やめときましょう」と康次君。売春婦も客とはキスしない。キスは自分のヒモとしかしないそうだ。
康次君は義姉のおっぱいに吸い付き、乳首を舐めたり吸ったりした。義姉は唇を真一文字に引き締め、呻きも喘ぎもしない。康次君は手を義姉の股間に伸ばし、そのおまんこをまさぐる。わくわくどきどきした。義姉のふっくらした大陰唇を掻き分け、クリトリスを刺激する。義姉は眉根を寄せて必死に無表情を装っている。康次君は指で膣口付近を探った。そこはぐじゅぐじゅに濡れていた。 「康次さん。入れて!入れて下さい」絵里さんが催促した。

「嫂さん」と康次君が云った。「全ての男が獣(けだもの)というわけではないんです」そう云って、康次君は絵里さんの手を取り、自分のペニスに触らせた。それは勃起していなかった。
「ど、どうして?」絵里さんが信じられないという顔をする。
「嫂さんとやりたくないわけじゃないんです。誤解しないで下さい」と康次君。「本当は逆で、僕の憧れだった美しい嫂さんとやれるなんて、こんな幸せはないんです」
「康次さん、そんな話はやめて!」
「なぜ勃(た)たないか、知りたくないんですか?」
「え?」
「いくら僕がゲスで義理の嫂さんに欲情しても、僕も一応理性のある人間ですからね。普段はそういう欲望を押し殺し、何もないような振りで本心を隠しているんです」と康次君。「いきなり、『さあ、おまんこしていいよ』って云われても、普段抑圧されていた身体は素直に反応しないんです。嫂さんとキスしたり、嘘でもお互いに好き合っているように抱き合ったり、嫂さんがよがり声を出してくれたりすれば僕も勃つでしょう。しかし、嫂さんが渋々やられるような態度を取っている限り、僕の知性的ペニスは勃たないんですよ」
「んまあ!」絵里さんが途方に暮れる。
「嫂さん、もっと感じて下さいよ。勃たないとどうにもなんないでしょ?」
「分りました」と絵里さん。
康次君は義姉が考えを変えたのかと思って喜んだ。勘違いだった。絵里さんはむっくり起き上がると、康次君の身体を押し倒し、フェラチオを始めたのだ。康次君にとって、義姉が美貌を台無しにしてペニスを頬張り、ぺろぺろすぽすぽと奉仕してくれるのは望外の幸せだった。ペニスはむくむくと勃起を始めた。
「ううう、気持いいーっ」と康次君。
「口に出しちゃ駄目よ!おまんこに出してくれないと!」絵里さんが云い、またフェラチオに戻る。
「オッケー。やりましょう」康次君が云って、義姉の身体を横たえると、その上に乗っかった。膝で義姉の股を開き、勃起したてのペニスを膣口に当てる。いよいよ憧れの女、そして兄の女房とおまんこするのだ。心臓がどきどきした。康次君はずぶりとペニスを義姉の身体に捩じ込む。
「むっ!」絵里さんが押し殺した呻きを漏らす。
康次君は兄の云い付けに背き、必死で義姉をよがらせようとした。無駄だった。絵里さんは売春婦のようによがることを拒み通した。仕方なく康次君は自分だけの快楽を追求した。美しい義姉の顔を見ながらのピストン運動は、本来なら最高の興奮材料の筈だったが、快感を堪え、ひたすら射精だけを待っている義姉の態度は幻滅だった。ペニスが萎えそうになる。康次君は義姉のおっぱいを揉み、撫で、握りつぶしながら必死で興奮を持続させ、無理矢理射精した。それはちっとも快くなく、射精というよりまるで精液を漏らしたような感じであった。

「お帰りなさい」“残業”で疲れた康次君を迎えた妻・登美江さんが云った。
「ただいま」と康次君。
「あら?香水の匂い」登美江さんが鼻をくんくんさせる。「あなた、どこで残業して来たの!?」登美江さんの目が吊り上がる。
「営業の田中嬢にプログラムの説明をしたんだよ。彼女の香水が移ったんだろ」康次君が冷や冷やする。
「お酒の臭いはしないわね」なおも鼻をくんくんさせる登美江さんは、まるで麻薬捜査担当の警察犬みたいだ。「バーで残業したんじゃないことは確かね」
康次君は、今後は絵里さんに香水をつけないように頼まないといけないと思った。

三日後、再び康次君が絵里さんを訪れた。電話による康次君のリクエストで、絵里さんは香水をつけていなかった。康次君としては、二度目ならお互いの垣根が取れて、より親密なおまんこが出来ることを期待していた。それは儚い望みだった。絵里さんの態度は丸きり変わらなかった。

翌週、康次君は絵里さんの拒否姿勢を無視し、絵里さんをよがらせる行動に出た。クンニリングスをし、Gスポットを攻めたのだ。絵里さんは苦悶した。必死で快感を堪え、よがることを拒否した。

その夜、康次君は妻の登美江さんを抱いた。登美江さんは久し振りのおまんこに歓喜し、盛大によがった。
「ひーい!うぐわーっ!あわわーんっ!」
康次君はこれが本当のセックスだと実感した。男は女を喜ばせることで興奮する。男の興奮が女の興奮を増幅する。「愛し合う」という言葉は体裁のいい表現だが、一対一で身体を交えている男女は刹那的にでも愛し合っているのだ。心も身体も許し合った者同士だけが、お互いに性感を高め合い、絶頂を迎えられる。義理マンはオナニーと同じか、それより劣るようなものでしかない。

康次君はその後しばらく絵里さんの家に行かなかった。すると勤務先に絵里さんから電話があった。
「康次さん、どうなさったの?御病気?」と絵里さん。
「いえ。ぴんぴんしてますよ」と康次君。
「だったら、またいらしてほしいんですけど…」
「んー…」康次君が云い淀む。
「あの、何か気に触るようなことでも…?」絵里さんが不安な声を出す。
「ええ」康次君が言葉少なに答える。
「おっしゃって!主人も私も康次さんが必要なんですから」
「会社のこの電話じゃ云えません。周りに人もいますし」
「だったら、お話だけでもいいですから、今晩いらして。お願い」
「弱ったなあ。兄貴に電話して断ろうと思ってたとこなんですよ」と康次君。
「そんな!私が叱られます。ね、五分でも十分でもいらして。一生のお願い」
「そう云われると断れませんね。じゃ、伺います」
「きっとよ?きっといらしてね?待ってますから」

康次君と絵美さんは、応接間で着衣のまま向かい合っていた。こんなことは種付け開始後、初めてのことであった。
「もうやって貰えないんですか?」絵里さんがすがるような目で康次君を見る。
「馬鹿馬鹿しくなったんです」と康次君。
「え?何ですって?」
「前にも云いましたけど、僕は嫂さんとやりたいんです。けど、僕が交わってるのは嫂さんの顔をしたダッチワイフか嫂さんの死体みたいなものだと気がついたんです」
「?」
「先日、嫂さんとやったわけですが、嫂さんが全く反応しないんで、僕は欲求不満になりました。その夜、僕は登美江とやったんです。登美江はわあわあひーひー云ってのたうち廻りました。僕は『ああ、これこそ生きてる女とのおまんこだ!』と凄く満足しました。僕らは倦怠期だし、登美江は美人でもグラマーでもなく、僕は登美江を深く愛しているわけでもない。嫂さんと登美江との違いは、生きてるか死んでるかなんです」
「…」絵里さんは困惑していた。
「もう一つ云いましょう。男が完全勃起していないと精液はだらだらっと出るだけで、遠くへ飛ばないんです。無反応な嫂さんの身体と交わっていると、『何で嫌がる女性とやってるんだろう?』って疑問が湧いて萎えちゃうんで、精液は子宮口まで届かないような気がします。これじゃ意味ないでしょう」
絵里さんはうつむいて聞いていた。康次君が喋り終わってもしばらく顔を上げなかった。
「兄には電話で謝ります。じゃ…」康次君が立ちかける。
「待って!」絵里さんが手を上げる。

「私、子供が欲しいんです」と絵里さん。
「分ってます」と康次君。「でも…」
「私、康次さんが好きになりたくなかったんです。それで…」
「何ですって?」
「女は『この男の子供を妊(みごも)りたい』って思う時、最高に燃えるんです」
「?」
「主人とのおまんこでも以前はずっと燃えていました。でも、主人が種無しだと知ってから、主人とのおまんこは意味がなくなりました」
「…」
「康次さんとのおまんこは純粋に妊るためのものです。燃えないわけがありません。同時に、子種をくれる康次さんを私が愛し始めてしまうのも当然の成り行きです。でもそれは、主人と私の生活を破壊することになります」
「兄も同じことを云っていました」
「『私をイかさないように』ってお願いのこと?」
「ええ」
「あれは私が頼んだんです。条件をつけてって」
「えーっ?兄の考えじゃなかったんですか!」
「私の考えです」
「なんと!」

「お話した通り、私は不感症ではありません」と絵里さん。「康次さんに性感帯を攻められてよがらずにいるのは大変な苦しみでした」
「はあ」
「でも、もう苦しむのはやめます」
「え?」
「私、この機会を逃すと子供を作れないんです。子供なしで朽ち果てるんじゃ、女に生まれた甲斐がありません。素直によがりますから、これからもおまんこして!」
「嫂さん!」康次君は義姉に飛びついてキスし、遠慮なくその舌を舐め廻した。
「がぶぶ」舌を絡めた絵里さんがよがる。
「嫂さん。種付けの間、僕を好きになって!」と康次君。
「ええっ?」
「好きな同士の間でルンルン気分の精子と卵子が結びつく方が、生まれて来る子供も幸せだと思いません?」
「そうかしら?」
「だから、嘘でもいいから僕を好きになって」
「嘘がほんとになっちゃうのが恐いのよ」
「ほんとになっても僕は構いませんけど」
「無責任ね、康次さんっ!」絵里さんがぶつ真似をする。
康次君は義姉を抱き締め、ブラウスとブラジャー越しに絵里さんのおっぱいを揉む。絵里さんが呻く。康次君が義姉の身体をソファに押し倒し、スカートをめくる。
「いやん!」
絵里さんの白いパンティは愛液の大きな滲みを作っていた。康次君はそのパンティの上から義姉のおまんこを舐めた。絵里さんは、義弟のその予想外の愛戯に驚き、かつ興奮した。絵里さんは既に義弟を愛し始めていた。

康次君も義姉を愛し始めてしまった。康次君の“残業”は毎日のようになった。義姉と義弟は狂ったように激しくおまんこした。康次君の妻の登美江さんは夫に愛して貰えず、日中に一人でオナニーしなければならなかった。

大阪場所が終り、康一君が帰京した。大相撲は続いて四月の春巡業に入り、康一君もそれを追って出張した。その後は七月の名古屋場所まで二ヶ月間、大相撲の行事は何もなかった。義姉と義弟のおまんこも中断を余儀なくされた。二人はジリジリして名古屋場所を待っていた。康次君は絵里さんの妊娠を恐れていた。康次君の精子が命中していたら、もう種馬はお役御免だからだ。心配しつつ、義姉を思い描きながら康次君は妻を抱いた。登美江さんは大喜びした。

名古屋場所となった。
康次君は義姉の家を訪れると、一言も発せずに義姉の衣類を剥ぎ取り、その全身を舐め廻した。絵里さんは義弟の情熱に打たれ、大股を開いて義弟のペニスを待ち受けた。
「嫂さん。僕、今後はコンドームを着けようと思う」と康次君。
「何ですって?」と絵里さん。
「嫂さんが妊娠したら、僕もう嫂さんを抱けないじゃない。コンドームを着けてやれば、ずっと抱ける」
「冗談じゃないわ。私は妊娠したいんだから!」
絵里さんはジレンマに陥っていた。絵里さんも康次君との仲を長引かせたい。しかし、妊娠もしたい。妊娠すれば二人の仲は終わる。 「嫂さん、二人で駆け落ちしようか?」と康次君。
「私はいいけど、あなた、三人の子供たちを捨てて行けるの?」と絵里さん。
「あ、そうか。無理だなあ」
こうしてコンドーム着用は却下され、駆け落ちも廃案となった。

名古屋場所が終わると、すぐ八月に秋巡業がある。それが終わると11月の福岡場所まで、また二ヶ月間義姉と義弟の道ならぬ恋の試煉の時が待っていた。康次君にとって、もっと悪いことがあった。絵里さんが妊娠したのだ。

康次君は兄に呼び出され、またいつかのバーに行った。
「ありがとう!よくやってくれた」康一君がにこにこする。
「困っちゃうな」と康次君。「普通ならおめでとうと云うとこだけど」
「おめでとうだよ。うちの子が生まれるんだから」
「そうか。じゃ乾杯!」
二人はウィスキーのグラスをカチンと合わせた。
「康次。お前の助けに礼を云うが、もう今度の仕事は終わった。もう絵里とは寝ないでくれ」
「えっ?」康次君が愕然とする。覚悟はしていたが、こうハッキリ云われるとは思わなかった。
「元の義姉と義弟の関係に戻るんだ。手を握るのも許さん」
「…分った」と康次君。
「お前を信用しないわけじゃない。しかし、絵里がお前を呼び出すこともあるかも知れん」と康一君。「おれの出張中は、興信所に家の前を見張らせる。お前が前と同じように通って来るのが分ったら、お前とは兄弟の縁を切る」
「そ、そんな!」康次君は目の前が真っ暗になった。種馬は解雇されたのだ。もう、法事の時などを除いて義姉と会うことも出来ないのだ。

康次君と絵里さんが電話で話した。康次君が兄の言葉を伝えた。
「んまあっ!」絵里さんが低く叫んだ。「じゃあ、あなたはもう来れないってこと?」
「そうなります。何か手段を考えないと…」
「今、主人は東京にいますから、興信所の張り込みはないんじゃない?」と絵里さん。「ホテルとかで会うことも出来るでしょ?」
「いや。万一張り込んでると困るし、嫂さんが尾行されるかも知れない」
「そうかしら?」
「僕がお宅にお邪魔しても、嫂さんとおまんこしているとは思われない工夫をしなきゃなりません」
「何か考えがあるの?」
「いや。まだですが、何とか考えます。嫂さんを抱きたい一心で」
「嬉しいわ。康次さん…」絵里さんが何か云いかける。
「何です?」
「愛してる」と絵里さん。
「僕もです!」と康次君。

福岡場所が始り、康一君は出張に出て行った。妊娠中でもおまんこは出来る。康次君と絵里さんは互いに会いたがった。
「嫂さん。張り込みの車、います?」と康次君。
「え?さあ。ベランダに出てみるから待ってて」と絵里さん。「門の前にはいないわよ」
「通りの角にはどうです?」
「見てみる」絵里さんは門まで歩いて通りをチェックする。「うちの前と横の二つの通りが見える位置に、黒い車が一台停まってる。見慣れない車だわ」
「クソ!興信所ですね」康次君が憤る。
「意地悪ねえ」絵里さんが溜め息をつく。

康次君は必死で考えた。先ず、変装して義姉の家を訪れるという方法があった。七つの顔の名探偵・多羅尾伴内のように、片目の運転手に化けたり、禿げの老人に化けたり、せむしの醜男に化けたりするのだ。そういう扮装なら写真を撮られてもバレないだろう。待てよ?写真を比較されると、人相は違っても体格・体型の相似でバレるかも知れない。また、絵里さんも「なぜ片目の運転手だのせむし男が一時間近く家の中にいたのか?」を夫に説明するのは難しいだろう。

康次君は義姉宅の前は避け、裏の通りを徘徊した。もし貸家でもあったら、そこから映画『大脱走』のように義姉の家までトンネルを掘ろうという作戦であった。残念ながら、裏に貸家はなかった。

ぐずぐずしているうちに十月十日経ち、絵里さんは立派な男の子を出産した。康次君は一度だけ病院に絵里さんを見舞い、赤ちゃんの顔を見た。意味深な会話はお互いに避け、目と目で心を伝え合った。

康之ちゃんと名付けられた赤ん坊はすくすくと育っていた。康次君は義姉と交わりたい欲望で悶々としながら、相変わらず兄と興信所を誑(たぶら)かす方策を練っていた。誰かと一緒に義姉宅を訪問出来るなら怪しまれないかも知れない。しかし、誰と?兄が見知らぬ人間だと、康次君と絵里さんが雇ったカモフラージュ用人間だと見抜かれる恐れがある。康一君も知っていて、怪しまれない人間…?。

「嫂さん。僕とおまんこするためなら、何でもやってくれます?」康次君が電話した。
「何でもするわ。云って!」と絵里さん。
「僕がうちの親父と一緒に伺えば怪しまれないと思うんです。親父が孫の顔を見に行くのは自然でしょう?」
「ええ。だけど、お義父(とう)さんに子守りさせといて私たち二人でおまんこするわけ?バレるわよ?」
「バレる前に、親父を味方につけるんです」
「どういうこと?」
「親父にもおまんこさせてやって下さい」と康次君。
「えーっ?」電話口で絵里さんが叫ぶ。
「親父もお袋を亡くして数年経ちます。しかし、まだ58歳ですから性欲はある筈です」
「ちょ、ちょっと待って。わたし、義弟とばかりじゃなく、義父ともおまんこするの?」絵里さんが度肝を抜かれる。
「これが一番怪しまれない方法なんですよ。確かに、好きでもない親父とやるのは鬱陶しいでしょうけど、僕らが愛し合うにはそれしかないんです」
「一日に二人とやるわけ?」と絵里さん。
「今日は僕、次は親父…と交代でもいいと思いますけど、たまには3Pもいいかも?」
「んまあっ!いま決めないといけない?」
「いえ、考えておいて下さい」
「ええ。考えてみる」

「康次さん?」絵里さんが電話して来た。
「決心つきましたか?」と康次君。
「ついたわ。でも、ちょっと康次さんの案と違うの」
「ほう?」
「ね。私が何を云っても私を嫌いにならない?」と絵里さん。
「僕、嫂さんを愛してます。嫌いになんかなりませんよ」
「ほんと?」
「ほんとです」
「私、結婚する前、兄と…やってたの」
「え?何ですって?よく聞こえない」
「私、結婚前まで兄とおまんこしてたの」と絵里さん。
「ひえーっ!?」と康次君。近親相姦ではないか!
「兄は結婚後も私とやりたがったんだけど、私、必死で断ってたの」
「はあ」康次君は呆然としている。「それ、僕の兄は知ってるんですか?」
「とんでもない!云いませんよ、口が裂けたって。世界中であなただけよ、この話知ってるのは」
「分りました」
「兄にやらせると云ったら、ほいほいと飛んで来るわ。私、お義父さんよりは気が楽なの。以前やってた仲だし」
「なるほど」絵里さんの兄・啓造さんは確か35歳で、売れない画家だと聞いたことがある。まだ独身だそうだから、妹の身体を欲しがる理由も分る。康次君は、年齢の近い絵里さんの兄と絵里さんの身体を共有することに抵抗があった。「急に義兄(にい)さんがやって来て不自然じゃないですか?それも、僕と一緒に」
「んー、そう云われればそうかも。孫を見に来るお義父さんの方が自然でしょうね」
「そうですよ」
「だったら、私、兄との近親相姦告白しちゃって馬っ鹿みたい!」絵里さんが悔しがる。
「嫂さん、義兄(にい)さんと又やりたいの?」
「違うわよっ!あなたとおまんこするための方便として考えたのよっ」絵里さんが怒る。 康次君は義姉の激しい言葉に驚いたが、義姉の自分への愛を感じて嬉しかった。

康次君は通勤の途中も義姉宅を訪れる方法を考え続けていた。ある日、渋谷で呑み会があり、康次君は夜11時頃の東横線に乗った。義姉の家のある中目黒駅に近づくと、下車して絵里さんとおまんこしたい衝動に駆られた。酔いのせいだ。興信所の車はまだ張っているに違いないから、危険きわまりない。康次君はからくも衝動を抑えた。立って電車の支柱につかまっていた康次君に誰かの手が触れた。偶然ではなく、意図的に触っている!女の痴漢か!康次君はびっくりした。その女の指を見て、もっとびっくりした。それは爪を伸ばしマニキュアも施されているが、男のようにゴツゴツした指だったのだ。康次君は女の顔を見た。オカマが媚びるような目でニッと微笑んだ。康次君は鳥肌を立てて「おえっ!」となった。急いでその場を離れ、別の乗降口に移動した。

自由が丘で下車し、自宅まで歩きながら、まだ康次君の胸は不快感で一杯だった。「クソーッ!オカマ野郎め!」と独りごちた。自宅の玄関に着いた時、ハッとあるアイデアが閃いた。女装して、義姉の女友達として訪問するのはどうか!いくら変装していても、男だと「一時間も家の中で何をしていたんだ?」と疑われるが、女ならぺちゃくちゃお喋りしていたと解釈されるに違いない。帰宅した康次君は、妻子が寝静まっているのを幸い、パソコンに向かって女装について調べ出した…。

渋谷に女装クラブが一つあった。鬘や婦人服のレンタル、メークアップのサービス、着替えを収める会員用ロッカーまで備えている。翌日、康次君はその女装クラブを訪れ、説明を聞いた。新規会員募集中なのですぐ入会出来る。会費は結構高いが、義姉宅の近くの貸家を借りるよりは安いし、何よりもトンネルを掘る必要がない。胸を大きくするバストパッドやお尻を大きく丸くするヒップパッド・ショーツを見せられた。これらは肌につけるものなので、自分で購入しなければならない。入会した康次君は、自分に合うローヒールの婦人靴とハンドバッグ、帽子などを買いにデパートに出掛けた。

ある週末、シリコン製バストパッドと、同じくシリコン製ヒップパッド・ショーツを身につけ、ブラウスにスラックスをまとった康次君は、メーキャップ係から入念にお化粧して貰った。鬘をつけツバの大きな帽子をかぶり、サングラスをかける。鏡を見た康次君はドキッとした。グラマーで色っぽい女が立っていた。横を向いて出っ張った胸やお尻を見る。セクシーだ。これが自分でなければ、口説いてホテルへ連れ込みたいほどだった。絵里さんが見たら何と云うだろう?しかし、康次君はいきなりそのまま義姉宅を訪れたりはしなかった。山手線に乗り、座席に腰掛け、女性客たちの動作を観察したのだ。彼女たちの歩き方、座り方、手の置き方、バッグの持ち方。山手線を一周して渋谷に戻る頃には、女性流身のこなし方の研究が終わっていた。

東横線に乗り換え、中目黒に向かう。車内は混んでいた。中目黒が近づき、康次君はドアの近くに移動した。妙な感じがした。誰かに触られている。しかし、その感触はかなり隔たった感触である。ヒップパッドを撫でている奴がいるのだ!馬鹿め!康次君はそいつの手を掴んだ。中年の痴漢がギョッとなった。女性は痴漢にあっても遠ざかろうとするだけで反撃はしないのが普通だ。女性警察官にお触りしたかと恐れた痴漢が、手を振り切って逃げようとする。康次君は掴んだ手を離さず、振り向きざま痴漢の股間を膝蹴りした。
「イデーッ!」痴漢が金玉を押さえてうづくまった。
電車が中目黒に着いた。康次君はしゃなりしゃなりと下車して、駅を出た。

確かに黒塗りの車が義姉宅を窺うように停まっていた。運転席のドアの下に沢山の吸い殻が落ちている。間違いなく興信所の張り込みだ。康次君は義姉宅の門をくぐり、ブザーのボタンを押した。
「どなた?」と絵里さんの声。
「同級生のマリですけど」康次君が高い声で云う。
「はあ?」不審に思った絵里さんが広角ドアスコープを覗く。訪問者が女性であることを知り、ドアを開ける。
「こんちわ」と康次君。
「どちら様?」絵里さんにはまだ分らない。
康次君がサングラスを取る。
「まあっ!」絵里さんが驚く。
「入れて!」と康次君。
「ええ」

二人は抱き合い、飢えた者同士のように互いの舌を吸い合った。康次君が絵里さんの手を自分のバストパッドに導き、自分は絵里さんの乳房を揉む。
「あなた、私よりグラマーね」絵里さんが笑う。
康次君は絵里さんのもう一方の手を自分のヒップパッドに触れさせる。
「まあっ!」絵里さんは康次君の“お尻”を撫でながら、「私、レスビアンになった気分」と云う。
「電車の中で痴漢にお尻撫でられた」
「わーっ、じゃ完璧なんだわ。ね、ゲイにならないでね?」
「嫂さんが相手にしてくれないと、ゲイになるかも」と康次君。
「私、やっぱり男のあなたがいい。お化粧、早く落して!」
「帰る時、またお化粧してくれますね?」
「いいわ。面白そう」絵里さんが笑う。
「康之、元気?」と康次君。
「ええ。今おっぱい飲んで寝たとこ」
「グッド・タイミング」

男に戻った康次君と絵里さんは狂ったようにおまんこした。ただし、第二子が生まれたりしたらバレるので、コンドーム使用は欠かせない。女として訪問すれば、また美しい義姉を組み敷いてその心と身体を自由に出来る。女友達が週に二遍ぐらい訪れるのは、そう不自然ではないだろう。康次君は女装というアイデアをくれたオカマに感謝した。
「嫂さん!これで前のようにしょっちゅう会えるね」康次君が云った。
「ええ。一年ぐらいはね」と絵里さん。
「えっ?一年?どういうこと?」康次君が驚く。
「康之が物心ついたら、女の人がやって来て、男になって、また女になって帰るのを不思議に思うでしょ。喋れるようになったら、主人に云うかも…。ずっと使える方法じゃないわ」
康次君は赤ん坊の成長を計算に入れてなかった。絵里さんの云う通りだ。また、別の手段を考えなければならない。果たしてどんな方法が?

しかし、もう別の手段は必要なかった。絵里さんの関心はセックスよりも子育ての方に移ってしまい、二人の間は急速に冷えてしまったからだ。康次君は義姉の変心を察知し、もう訪れるのを止めた。だが、康次君の女装趣味は終わらなかった。女装の魅力から逃れられなくなってしまったのだ。退社すると渋谷で着替えて女になり、新宿や池袋に遠征した。康次君はゲイ道を突き進み始めたのだった。




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