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34. 吾輩は猫である

吾輩は猫である。名前はあるにはあるのだが、これから弁ずる物語が当家の主人の名誉を損なうこと無きにしもあらずなので、吾輩の名によって主人が特定されぬよう「名無し」ということにしておく。時代は明治の後期である。野良猫だった吾輩は、自称文人の主人(40歳)の家に住みついた。文人と云っても文藝家協会に所属出来るような著述家では毫もなく、世の中に掃いて捨てるほど存在する好色本の作家の一人に過ぎない。しかし、当人は好色小説は好色小説でも、後世に残るような金字塔を打ち立てようと偉い鼻息である。

家には細君(34歳)と一人娘の美禰子ちゃん(16歳)、それに女中の清(きよ、24歳)、吾輩を含めた四人と一匹が住んでいる。主人は三文文士であるにもかかわらず、人望があるのか気楽な話し相手だからか知らぬが、来客が結構多い。それらの人物はおいおいに紹介するが、性格も言動も甚だ多彩で吾輩が退屈しないで暮らせるのは彼らのお蔭であると云ってよい。

ぽかぽか陽気の午後、吾輩は陽当たりのいい縁側でうつらうつらしていた。主人は原稿用紙を前に何か悩んでいる。鼻毛を抜いたり、楊枝で歯をせせったり、耳かきで耳をほじったり、おならをしたり、色んなことをやっているが、いい案が浮かばないようだ。そこへ、女中の清が廊下を歩いて来た。手水鉢の水を替えるらしく、水の入った馬穴を手にしている。
「清!」主人が呼び止めた。
「へえ」清は山形の農家の出身である。
「戻ったら美禰子に来るように云ってくれ」
「へえ。かしこまりましたっす」清はいったん通過し、数分後に空の馬穴と共に戻って来て、茶の間へと去った。
「お父様、お呼び?」入れ替わりに美禰子ちゃんがやって来た。美禰子ちゃんは当家の一人娘なので綺麗な振り袖を着せて貰っている。ちょっとおでこで、くりくりした利発そうな目に、常に笑みを含んだような口元。髪に赤いリボンを結んで16歳の若さを謳歌している。
「おいで」主人が娘を手招きして、自分の膝に乗せて抱っこする。16にもなる娘を抱っこするのは尋常ではないが、娘は大人しく抱かれる。「美禰子。お父さんはお前ぐらいの歳の娘が出て来る小説を執筆中なんだ」
「わあ?私が主人公?」と美禰子ちゃん。
「そういうわけではないが、重要な役だ。で、その娘が男とおまんこするのだが、いいよがり声が浮かばなくて困っている」
「よがり声ってなあに?お父様?」
「お前も気持いいと『あはーん!』とか云うじゃないか。あれのことだ」
「あ、あれ?」
「お父さんがお前の身体をいじくり廻すから、色んな声を出してみてくれ」
「わかったわ」

主人は美禰子ちゃんの着物の裾をめくり、襦袢や腰巻きもめくって16歳の真っ白い股を露出させる。盛り上がった恥丘に僅かの陰毛がぽしょぽしょと生え、ふっくらとした左右の大陰唇が密着して割れ目を塞いでいる。主人は指に唾をつけ、娘の割れ目をなぞる。その指先が次第に割れ目に潜り込んで行き、娘のクリトリスに触れる。
「あはーん!」と美禰子ちゃん。
「『あはーん!』はもう要らない。別な声を出せ」主人が云い、掌でクリトリスを優しくぐりぐりしたり、圧迫したりする。
「わうーん!」
「『わうーん!』も、確か使ってしまった。別な風によがれ」主人が娘の膣口を刺激する。
「あううう!」
「それも月並みだな。仕方がない。本格的にやるか」主人は美禰子ちゃんを座布団の上に寝せ、その両脚を開かせて、自分は娘の股ぐらに顔を寄せる。娘の大陰唇を左右に開き、ピンク色をした複雑な形状の粘膜を曝け出す。そして、クリトリスを舌で舐めたり弾いたりする。
「うおーんっ!」
「『うおーんっ!』か。えっと手帖、手帖」主人は書き物机の上から手帖を取り上げ、鉛筆を舐めると、「うおーんっ!」と書き留める。そして、また娘のクリトリスを舐め出す。
「あひーっ!」
「お、それいいね。『あひーっ!』か」主人はまた鉛筆を舐めると手帖に書き留める。また主人は娘のおまんこを舐め始める。
吾輩はよく知らぬが、あんなに鉛筆を舐めていいものだろうか?主人の身体も影響を受けるだろうが、美禰子ちゃんのおまんこも鉛の毒で変になったら可哀想である。【実際には鉛筆の芯は黒鉛と粘土で作られていて、有毒物質の鉛とは別物である】

主人は娘の膣口から愛液がこぼれ出て来たのに気づいた。主人は指を一本膣に差し込み、16歳の狭い穴の肉襞を撫で廻す。
「うぐわーん!」と美禰子ちゃん。
「お、それもいいじゃないか」主人は手帖に「うぐわーん!」と書き足す。主人は指を伸ばし、娘の体内をぐりぐり擦る。
「ひひーんっ!」
「『ひひーんっ!』は馬みたいだな」主人はこれはパスする。主人は美禰子ちゃんの肛門や蟻の門渡りを刺激する。
「おおおーっ!」美禰子ちゃんが身体をのけ反らしてよがる。主人の指はどくどく出て来る娘の愛液でぬるぬるになる。
主人は膝で立つと、自分の着物の裾をめくって褌(ふんどし)の横から勃起したペニスを取り出し、娘のおまんこに捩じ込もうとした。
「いけないわ、お父様!」気配を察した美禰子ちゃんが云う。「お母様がね、もうお父様とやっちゃいけないって」
「何だと?」主人が動きを止める。
「私、もう妊娠する恐れがあるから、駄目だって」
「そういうことか。お前も女になったんだな。しかし、敷島サックを使えば心配ない」敷島サックとは国産コンドームの初期の製品である。主人は引き出しから敷島サックを取り出し、一個をペニスに装着する。
「それだけじゃないの。おまんこは父娘でやっちゃいけないって、お母様が」
「ふん!それは普通のおまんこのことだ。お父さんのはあくまでも文筆活動の研究のためだ」
「お仕事のため?」と美禰子ちゃん。
「そうだ。美禰子はお父さんの仕事のお手伝いをするんだ」
「じゃあ、それならいいわね?お母様も怒らないわよね?」
「そうさ」主人は娘に大股を開かせ、その初々しいおまんこにずぶずぶとペニスを埋め込む。「おおお。お前のおまんこは素晴らしい。きつくて、襞々が吸盤のように吸い付いて来る。ううーむ、最高だ」主人はうっとりとし、余りの快感に腰をぐりぐり廻す。その動きが美禰子ちゃんのクリトリスを刺激する。
「あうーっ、あうあう!」美禰子ちゃんがよがる。

吾輩はこの父娘のおまんこを何回か見たことがあるので驚かないが、これはまさしく近親相姦である。犬や猫は子供が乳離れすると、自分の縄張りから子供を追い出す。それは一定量の餌しか得られない縄張りの中での生存競争が理由なのだが、結果的に近親相姦によって種が劣化することを防ぐ効果もある。万物の霊長などと気取っている人間が近親相姦を犯すというのは笑止である。もちろん、犬や猫も近親相姦を犯すことはある。追い出した息子が数年後に戻って来て、母猫と交尾するということはあり得る。それはお互いに知らずに交わってしまうのであって、血縁と知っていてやるのではない。ギリシャ悲劇のオイディプースも知らずに母と交わってしまった。そういう運命は仕方がない。しかるに、主人と美禰子ちゃんの場合は親子と知りつつやっているのだから始末が悪い。

その夕刻。主人と細君、美禰子ちゃんが夕餉を終え、お茶を飲んでいた。吾輩は女中の清から家族の残り物の魚の骨や煮転がしなどを貰ってむしゃむしゃ食べていた。
「旦那様、奥様。お話がごぜえます」と清が云った。
主人と細君はびっくりした。女中というものは歌舞伎の黒子(くろこ)のようなもので、改まって口をきくものではないと相場は決まっている。「お話がある」などと云っていい存在ではないのだ。
「何なの?お給料のこと?」と細君が気をきかす。
「そうではねえっす。来年、嫁さ行ぐごどになったっす」と清。
「誰が?お前が?」普通、親戚の縁談について改まって喋るわけはないのだから、当人に決まっている。
「郷里(くに)の者が決めたのか?」と主人。
「へえ」
「山形へ帰るのか?」
「んだっす」
「清」と細君。「旦那様と私もお前の相手を探していたんだけど、これまでいい話がなかったのよ。ごめんね」
「とんでもねっす。よぐして頂いて嬉しかったっす」清が鼻をすする。
「じゃあ、お前の後を探さなくちゃならんな」と主人。
「それですけんと、妹がこちら様に御奉公してえって云ってるっす。どげんでがすか?」
「まあ!お前の妹なら安心だわ。いいわよ。ね、あなた?」
「うむ」と主人。
「ありがとごぜえます。ほんではそういうこって」清が一礼して汚れた食器を台所へ下げて行く。

夜。夫婦の寝室に寝床が二つ延べてある。主人は腹這いで煙草を吹かしながら何か物思いに耽っている。細君はその主人をちらちら見ていたが、突然起き上がって主人の横にやって来て布団に滑り込む。
「ね、あなた。たまには抱いて下さいな」細君が猫撫で声で云う。
「うむ」主人が生返事をする。
「ねえったら!」
「うるさいな。いま考え事をしてるんじゃないか。邪魔するな」
「考えがまとまったらやってくれます?」と細君。
「ああ。だから待ってるがいい」
「きっとですよ?」細君が念を押して自分の布団に戻る。
そのうち待ちくたびれた細君が微かに鼾をかき出す。それを聞いた主人がむっくり起き上がった。細君のところへ行くのかと思ったら素通りする。主人は女中部屋へ向かった。何事ならんと吾輩もとことこと後を追う。

主人はそーっと女中部屋の障子を開けて忍び込んだ。吾輩も障子の一番下の破れ目から忍び込む。清のすやすやと眠る息が聞こえる。主人は清の布団に潜り込み、寝間着の上から清の身体を撫で廻した。
「ひっ!」清が目覚める。
「騒ぐな!」主人が清の口を掌で塞ぐ。
「だ、旦那様!」
「静かにしろ」
「どういうこってがんす?」清が小声で云う。
「どうもこうもない。お前とやりたくなった」と主人。
「五年も御奉公してたっちゅうに、何で今頃夜這いに来なさる?」
「お前が嫁に行くと聞いて、急にやりたくなった。やらせろ」
「やらせだら妾にしてくれるでがんすか?」と清。
「何だって?」
「殿様だって手ばつけた女子(おなご)は側室にするす。旦那様もおらとやったら妾にしてくんねば」
「お前、直ぐにれっきとした本妻になれるんだ。妾より上等じゃないか」
「農家の女房は朝から晩まで働かされ通しで辛いっす。妾になっておまんこだけして暮らした方がええっす」
「冗談じゃない。お前を囲うほどの財力はないよ」
「ほんじゃおらに触らねでけろ」
「うるさい!つべこべ云うな。やらせるがいいんだ」主人はいきなり清の身体に乗っかり、寝間着の上からおっぱいを掴み、勃起したペニスを清のおまんこに押し付け、ぐりぐりした。
「ひーっ!大声出すど!奥様起ぎるど!」清が脅す。
「そんなことすると、お前の妹の働き口がなくなるぞ」
「あじゃー。使用人を脅すとはひでえ旦那様でねが」
「だから大人しくやらせろ。いいな?」
「妊娠したら妾にしてけろ。ええすか?」
「安心しろ。妊娠はさせない。これを使う」主人は寝間着の袖口から敷島サックを取り出す。
「何でがんす?」清は敷島サックを知らない。
「これをこうすると…」と主人がペニスにコンドームを装着する。「お前を妊娠させないでやれるんだ」
「ひえーっ!そっだらええもんがあるでがんすか!」
主人は清の寝間着を脱がせ、素っ裸にする。雪国育ちの真っ白い肉体。豊かな乳房、大きな腰。濃い陰毛の茂み。主人は乳房に吸い付き、清のおまんこに手を伸ばす。
「旦那様?」と清。
「何だ?」と主人。
「そんなええもんあるちゅうに、何で今日までやってくんねがったすか?」
「え?」
「おらも五年の間にはやりで時もあったっす。そん時、来てくれれば嬉しがったべけんと」
「そうだったのか。済まない」
「過ぎたごどは仕方ね。やっぺ」
「うむ。やっぺ」主人まで山形弁になり、濡れた清のおまんこに勃起したペニスをぶち込む。
「あへーっ!」清がよがる。
主人がえっさほいさと汗をかいて清を攻める。清は主人の尻に両足をかけ、より深く性器を結合する。主人は清のよがり声を消すため清の口に接吻しながらおまんこする。

その時、吾輩は不審な物音を聞いた。微かな水音だ。表で人間が小便をしている。それも雨戸に引っ掛けているようだ。吾輩は障子の破れ目から抜け出て、音のする方に向かった。雨戸の一枚が音も無く外された。泥棒としてはかなりの腕前と見た。彼は頬被りをし、シャツに腹掛け、紺の股引に地下足袋という出で立ちである。泥棒は地下足袋のまま上がって来ると、耳を澄ませながら、しばらくじっとしていた。闇に目を慣らそうとしているのだ。猫なら暗闇でも不自由はしないのだが、人間というものは口だけ偉そうで実際の能力は猫よりも劣るようだ。泥的は真っ直ぐ夫婦の寝室に向かった。専門家だから、どこに金目のものがあるか先刻承知なのだ。泥的は懐から用意の風呂敷を取り出して広げ、細君のよそ行きの着物や帯、主人の羽織などを手際よくまとめ、しっかり縛った。非常に効率の良い手際である。

何を思ったか、泥君がすやすや眠っている細君の顔を覗き込んだ。この細君だが、今を去る十数年前はすこぶる美貌だったそうだ。細君の母親は夫を日清戦争で失って未亡人となり、止むなく学生下宿を経営して食べて行くことになった。主人はそこに下宿し、当時のお嬢さん(今の細君)と知り合った。そのまま相思相愛なら目出度かったのだが、主人の同級生K君が転がり込んで来て、彼もお嬢さんに惚れてしまったから大変。恋の鞘当ての結果、主人が抜け駆けでお嬢さんの母親に結婚の許しを得てしまった。友の裏切りに傷ついたK君は首を吊って自殺してしまったという。それぐらい美貌を誇っていた細君だから、34歳の今でも色っぽいのである。泥棒君は行きがけの駄賃に細君を犯そうと決めた。

泥棒は細君の背後の布団をめくり上げ、細君に背後から抱きつく。股引から勃起したペニスを引っ張り出し、細君の寝間着をめくり上げ、尻の割れ目にペニスを押し付ける。
「あら、あなた!」細君が目覚める。
泥的はギョッとなって身体が凍り付いた。細君は後ろに手を伸ばして泥的のペニスを掴み、おまんこに誘導する。細君は主人がやっとその気になったと勘違いしているのだ。思いがけない協力を得て、泥的のペニスは迷うことなく細君のおまんこのとば口に達した。泥的は細君の寝間着の下に手を差し込み、細君のおっぱいを揉む。
「あうーん!」細君が久し振りの濡れ事に興奮する。
泥棒君の愛撫と、ペニスの頻繁なおまんこへの突撃によって、細君の膣は愛液を噴出した。泥的の亀頭がぬるぬるする。泥棒は一気にペニスで細君の身体を刺し貫く。
「わああーっ!」細君が喜悦の悲鳴を挙げる。
泥的は、本来は手っ取り早く自分の性欲を満たすだけのつもりだったのだが、相手の婦人が非常に協力的であるし騒ぎ立てる気遣いもないことに安心し、この愛すべき婦人をイかそうと仏心を出した。泥棒君は細君の陰部に手を伸ばし、クリトリスを刺激し始めた。
「あはあはあはーん!」細君がよがる。
泥的はおっぱいを揉み、腰を細君のおまんこに突き立て、指でクリトリスをいじくる。
「ひいーっ!あひーっ!」細君が非常によがる。
泥棒君が乳首を抓ったり擦ったりする。
「うぐーっ、むむーっ!」細君が快感に耐えかね、身体を震わす。
泥棒君は腰のピストン運動を激しくし、クリトリスをさする。
「し、死ぬ〜っ!」細君が死んだ。
「むぎゅー」泥棒君が細君の体内でどぴゅぴゅーん!と射精した。

「あなた。よかったわ」細君が礼を云って、おまんこから漏れ出る泥君の精液を枕元のちり紙で拭き取り、すやすやと満ち足りた眠りに落ちた。
泥棒は濡れたペニスを細君の寝間着の裾で拭き、股引の中にしまった。そして、風呂敷包みを抱えると、忍び足で出て行き、外した雨戸をハメ直しするでもなく闇の中へと消えて行った。

翌朝、刑事がやって来た。
「で、盗難推定時刻は何時頃になるですか?」刑事が聞いた。
「さあ?お前、分るか?」と主人。
「あなたが考え事を終えたのは何時ですか?」と細君。
「12時頃かな?」
「その後、あなたが私にナニしたでしょ?あれが20分ぐらいとして…」
「ナニって何だ?」と主人。
「いやねえ、アレですよ、アレ」と細君。
「アレって何です、奥さん?」と刑事。
「女の私にそんなこと云わせるんですかっ!」
「一体なんのことだ。はっきり云えよ」と主人。
「んもうっ!あなた、私におまんこしたじゃありませんか。それですよ」
「何?おれは夕べお前とおまんこなんぞしなかった」
「嘘おっしゃい!後ろから抱きついたじゃありませんか」
「後ろから?へえ?」
「へえじゃありませんよ。敷島サックもしないで、この歳で妊娠したらどうするの?」
「なに?サック無し?そりゃおかしい。おれは子供は美禰子一人で沢山だから、サック無しでやるわけがない」
「何ですって?」細君が青ざめる。
「お前、泥棒とおまんこしたんだ。それに違いない」
「そんなっ!じゃ、あなたは私が犯されてるのも知らないで白河夜船だったの?」
「うむ。そういうことになるな」主人は、口が裂けても女中部屋で清とおまんこしていたとは云えない。
「分りました。盗難時刻は12時半という見当ですな?」と刑事が事務的に云った。

「わはは。奥さんの貞操も盗まれたってわけか?」金縁眼鏡をかけた美学者の迷亭という男が笑った。「それも盗難届に入れたのかね?」
「冗談じゃない」と主人。
「千金の子(し)は堂陲(どうすい)に座せずとばかり狸寝入りを決め込んでいたわけか?」と迷亭。
「ぐうぐう寝ていただけさ」と主人。
「鼻先で間男されて気づかんとはね。君も相当暢気だな」
「迷亭さん」と細君。「間男だなんて云わないで下さい。見も知らぬ泥棒に犯されたんですから」
「いや、こりゃ失敬。奥さん、衷心より御同情申し上げる次第であります」
そこへ理科大学で科学研究をしている寒月君がやって来た。
「やあ、来たか」と主人。
「寒月君、実は奥さんがね…」迷亭が云いかける。
「もうよござんす」細君はまた貞操を盗まれた話を吹聴されるのを恐れて茶の間に引っ込んだ。

「最近は何を研究しとるね?」主人も、鼻先で女房を犯された話が繰り返されるのは避けたいので、話題を変える。
「首縊りの力学は頓挫しまして、今度はいたちの最後っ屁の軍事利用の可能性をやろうかと思ってます」と寒月君。
「つまり毒ガスだね?」と主人。
「そりゃ駄目だ」と迷亭。「アメリカにはスカンクといういたちの親分がいて、これの屁の方が数倍強い。日米開戦となって、お互いに毒ガスを使ったら日本に勝ち目はないよ」
「いけませんか。じゃ、10万馬力で空を飛んだり地に潜ったりする人造人間を作ります」
「君、それはお茶の水博士がもうやっとるよ」と迷亭。
「違うよ。天馬博士だよ」と主人。
「人造人間も駄目なら、時航機を作ります」
「何だね、そりゃ?」と迷亭。
「time machineかね?」と主人。
「そうです。過去のどの時点にも瞬時に到達出来るという機械です」
「おお、そりゃいい。是非、1,150年ころの蒙古に行って確かめて貰いたいことがある」と迷亭。
「はあ?」と寒月君。
「チンギスハーンが義経だったかどうか聞いて来てくれたまえ」
「そんなのは下らん」と主人。「1,590年頃の倫敦(ロンドン)へ行ってほしい」
「どうせ、沙翁(シェイクスピア)が本当は誰だったかてえんだろ?」と迷亭。「僕のと変わらんじゃないか」迷亭は下らんと一蹴されたことが面白くない。
「両先生は、御自分では行きたくないみたいですな」と寒月君。
「行ったっ切りで戻って来れないと悲劇だからね。桑原桑原」と迷亭。
「信用ないですなあ」
「君が無事に現在に戻って来たら信用するさ」と主人。
「私は自分が生まれた場面が見たいです」と寒月君。「母親のおまんこから健気に『おぎゃあ』と出て来るところが見たいものです」
「そんなの面白いかね?」主人が懐疑的に云う。
「どうせなら両親の性行為を見たらどうかね?どんな風に母親が君を受胎したか分る」と迷亭。
「折角の大発明を使うにしちゃ、ちと目的が矮小過ぎやしないか?」と主人。

寒月君が帰ると、入れ違いに女中の清が四十がらみの婦人を案内して来た。
「初めまして。わたくし、そこの角屋敷の金田鼻子と申します」鼻子は狐のような顔に、ピサの斜塔が垂れ下がったかと思わるる巨大な鼻の持ち主。鼻子は古ぼけた畳を見て、汚らしそうに眉をひそめる。「実は、寒月さんのことについて聞きたいことがあるんざます」
「ふむ」主人は鼻子の鼻も気に入らないが、彼女の不遜な態度も気に入らない。
「奥さん」と迷亭。「お宅のお嬢さんが寒月君の嫁になりたいとかいう御事情ですかな?
「そう云うあなたは?」と鼻子。
「いやなに。僕の伯父が金田さんを存じ上げておるものですから、伯父に伝えたいと思って…」
「伯父さんて何方?」と鼻子。
「牧山男爵です」迷亭が澄まして云う。根も葉もない出任せである。
「まあ、牧山様の?これはお見それしました」鼻子が飛び退って、畳に額を擦り付ける。「どうか、男爵様によろしくお伝え下さい」
「畏まりました」と迷亭。口の周りをピクピクさせて笑いを堪えている。
「で、寒月さんですけど」鼻子は打って変わって主人には高飛車に出る。「一体全体、あの方は博士になれますか?」
「それを聞いてどうするんです?」と主人。
「いえね、娘をくれという方は大勢いるんですが、博士になれるなら寒月さんでもいいかなと…」
「真剣に知りたいと?」
「ええ、とっても真剣ざます」
主人は膝立ちで鼻子の鼻先へいきなりペニスを突き出し、「これを舐めたら話しましょう」と云った。主人は金持が嫌いだからこの挙に出たのだが、内心鼻子の鼻と自分のペニスの組み合わせが見たいという気もあった。
「まあっ!」鼻子は鼻白んだが、「よござんす!」と四つん這いになって主人のペニスを舐め始めた。主人は鼻子の着物の脇から手を突っ込み、鼻子の垂れ下がった熟れたおっぱいを揉む。
「奥さん。寒月君に関する私の話も聞きたいでしょう」迷亭が鼻子の着物の裾をめくり、真っ白い尻を剥き出しにする。迷亭は指に唾をつけ、鼻子のクリトリスをいじくる。
「ぶぐぐぐぐ」主人のペニスを口に含んだ鼻子が鼻声でよがる。
鼻子のおまんこから愛液が漏れ出る。迷亭は膝立ちになって自分の着物の前を開け、勃起したペニスを取り出すと鼻子のおまんこにずぶずぶと埋め込む。
「ぶぎゃああ!」鼻子が悲鳴を挙げる。

四つん這いの女に後ろから性交するという図を人間は犬の体位とか云うが、猫もあの体位でやる。あれが動物にとっての正常位であって、顔を突き合わせながらやるのを正常位などと呼ぶ人間は異常なのである。ともあれ、犬の体位を目にした吾輩はつい春情を催し、裏の二軒先の二弦琴の師匠の家の白ちゃんを訪ねることにした。吾輩は裏の車屋の黒と白ちゃんを争っているので、黒に気づかれぬように遠回りする。

ちりんちりんと首の鈴を鳴らして白ちゃんが迎えに出て来る。幸い白ちゃんもやりたい気分だったようで、吾輩が彼女の美貌や毛並みの良さについてぐだぐだ褒め言葉を弄する必要もなく、あっさりやらしてくれた。人間が出来るだけ長く快楽を貪ろうとするのに較べると、われら猫族の性交は至って淡白なものである。生殖本能だけで交わるのであって、快楽の度合いは生殖本能が満足されることに等しい。つまり、雌猫にもクリトリスはあるのだが、それをいじくり廻したりする必要はないのだ。生殖と無関係な、性器を舐めるなどという行為は無論行なわない。吾輩は白ちゃんの尻に股がって三擦り半で性交を終えた。白ちゃんはそれで満足し、「ちょっと!あんた早漏じゃないの?」などと文句は云わないから有り難い。

年が明けた日の午後、常連の訪問客によるささやかな新年の宴が始まった。迷亭、寒月君のほかに、禪坊主・八木獨仙、詩人・越智東風(おち・とうふう)、去年熊本から上京して来た大学生・小川三四郎君とその同級生・佐々木與次郎君もいる。
「寒月君。その後、時航機の研究はどうなっておるかね?」と迷亭。
「一応原型は出来たのですが、運転費用が捻出出来なくて…」と寒月君。
「ふむ。全体、どこまで過去に行けるものかね?」
「理論的には創世記の昔まで行けます」
「そこまで行くと、大分ガソリン代がかかるだろう」と主人。
「いえ、地表を移動するわけではないので、ガソリン代はかかりません。時空を振動させる電気代が大変なんです」
「僕の小遣い程度で、一体どこまで過去に行けるものだろう?」と迷亭。
「さあ?昨日の今頃ぐらいには間違いなく行けます」
「昨日の今頃のことならよく覚えてるよ。つまらん」
「凄いですね!」と三四郎君。「源平の合戦も見られるし、本能寺や松の廊下の一幕なども見られるわけだ」
「時航機があればクレオパトラとか楊貴妃の寝所に夜這いをかけられる」と與次郎。
「そう云えば先生」寒月君が何か考えながら主人に云う。「私が尼さんに夜這いをかけた話はしましたっけ?」
「いや、聞いた覚えはないようだ」と主人。
「なに?寒月君が尼さんに夜這い?」と迷亭。「それは聞き捨てならん。さあ、詳しく話したまえ」
「是非、お願いします。参考になるから。なあ、小川?」與次郎が三四郎に云う。
「いつ頃のことです?」と三四郎。
「僕が郷里にいた高校生の頃だ。近くの尼寺に若く美しい尼さんが住んでいた。僕は彼女に懸想してしまった」
「詩を捧げたのではないの?」と越智東風君。
「いや。そんなものでは満足出来ない。彼女のおまんこに僕の勃起した男根を捧げたいと思った」
「その頃、君の郷里じゃ敷島サックは手に入ったかね?」と主人。
「そうだよ。尼さんを妊娠させたら大変だ」と越智東風。
「僕は若くて世間知らずだったから、そこまで考えが至らなかったね」

「とにかくやりたい一心だったわけだ?」と迷亭。
「ええ。ある日、『今夜は絶対夜這いをかけよう』と決心し、寝床の中で日が暮れるのを待っていました」
「秋の日は暮れ易いから好都合だ」迷亭が楽観的に云う。
「ところが違うんです。一眠りしては布団から首を出すんですが秋の日がかんかんとして一向に暮れない。ペニスはもうビンビンに勃起しています。私は待ち切れなくて縁側に出て自慰をしました」
「縁側で?」三四郎がたまげる。
「その日は祭日で家族はみな出払っていたんだ。隣家はずっと離れているから、誰にも見られない」
「安心しました」と三四郎。
「また布団をかぶって、ちょっと寝て、頭を出してみるが秋の日がかんかんとして暮れない」
「それはもう聞いたよ」と主人。
「ペニスはまた勃起している。私はまた縁側へ出て自慰をしました」
「分るね、その気持」と與次郎。
「また布団をかぶってうとうととし…」と寒月君。
「どうせ起きても日は暮れず、また縁側で自慰をするんだろう」と八木獨仙。
「そう先を越されちゃやりにくいですな」と寒月君。
「いい加減に日が沈んだことにしたらどうだ?」と主人。
「分りました。しかし、当方にも都合がありますので、もう一回縁側で自慰をさせて下さい」
「何回でもしたらいいだろう」主人は床柱に寄りかかって英語の好色本を読み出す。
「自慰をしていると山寺の鐘がゴーン!となる。竹薮の向こうに日が落ちて行く」
「いよいよだね!」越智東風が興奮する。
「僕も自慰したくなった」と與次郎。
「縁側でやれ」と主人。

「私は尼寺に忍び寄りました」と寒月君。「幸い、祭日だったせいで下男も下女も実家に帰され、尼さんは一人だった」
「僥倖だね」と越智東風。
「尼さんは丸裸で風呂に入った」と寒月君。
「つるつる頭でか?」と主人。
「もちろん。宇宙人のようなその姿は想像を絶する色っぽさでした。私はどきんどきんと脈打つ心臓の音が尼さんに聞こえやしないか心配でした」
「さもあらんだね。さ、早く濡れ場の幕を開けて貰おう」と迷亭。
「私は尼さんが床に入り、蝋燭を消すまで待ち、ついに尼さんに躍りかかりました」
「口説くのじゃないの?」と越智東風。
「普通の女なら口説いてどうにかなるだろうが、尼さんだからね。絶対駄目だよ」
「で、乱暴狼藉かね?月並みじゃないか」迷亭がいささか幻滅して云う。
「乱暴狼藉しようと思ったのです。尼さんを押さえつけて、勃起したペニスを尼さんのおまんこに当ててぐりぐりしようとした。ところが、この段になってペニスはうなだれている」
「ははあ!自慰のし過ぎだ!」と主人。
「しかし、高校生なら三回の自慰ぐらい何でもないでしょう」と與次郎。
「いや、皆さんの御要望で話を端折ったのだが、実はもう二回自慰をしていたのさ」
「それで立たないのか」と迷亭。「尼さんを押さえ込んだはいいが、引っ込みがつかないね、どうも」
「ええ。それで『さいなら』と云って帰って来た」と寒月君。
「それだけかね?」と越智東風。
「うん」と寒月君。
「また行ったんでしょうね?」と三四郎。
「なに、恥ずかしくて行けやしない。それきりさ」寒月君が云って澄ましている。
「どうも欲求不満が残る話ですな」と越智東風。

「先生、歌っていいですか?」と與次郎。興醒めの座を盛り上げようという意図である。
「ああ。いいとも」と主人。
「♪一つ出たホイのヨサホイのホイ。一人娘とやるときにゃ、ホイ、親の承諾得にゃならぬ、ホイ〜」與次郎が先導し、みんなが手を打って歌い出す。
「♪二つ出たホイのヨサホイのホイ。二人姉妹とやるときにゃ、ホイ、姉のほうからせにゃならぬ、ホイ〜」
一同は「ホイ」を一度だけ云うのだが、主人だけ「ホイホイ」と二回繰り返す。
「先生。ホイは一回だけでいいです」と與次郎。「♪三つ出たホイのヨサホイのホイ。醜い女とやるときにゃ、ホイ、顔を隠してせにゃならぬ、ホイ〜」
相変わらず主人だけ「ホイホイ」とやっている。
「先生」と三四郎。「先生のところもお嬢さんが一人ですが、誰かが希望したら承諾しますか?」
「誰でもというわけにはいかんよ。しかし、僕の眼鏡にかなった男なら承諾するね」と主人。
「え?ほんとですか?」三四郎が目を輝かす。「僕はどうでしょうか?」
「娘とやりたいのかね?」と主人。
「おいおい。青年をからかうなよ」と迷亭。
「からかってはいない」主人は机の引き出しから何か取り出して三四郎に渡す。それは昔の関所の通行手形のようなもので、木の札に『性交手形』と焼き印が押してあり、敷島サックが一つくっついている。
「これは?」三四郎が怪訝な顔をする。
「それは私が承諾した印だ。娘に見せればいい」主人が云う。
「わあ!ありがとうございます!」三四郎は駆け出すように美禰子ちゃんの部屋に向かう。
「先生!」と與次郎。「僕はどうでしょう?」
「君か。細君でいいかね?」
「え?奥さん?」さすが能天気な與次郎も一寸驚く。
「ほれ」主人がもう一個の『性交手形』と敷島サックのセットを與次郎に投げ与える。
「では失礼します」與次郎が誰にともなく云って奥に消える。

吾輩は美禰子ちゃんの部屋に行った。三四郎が美禰子ちゃんの身体にのしかかろうとし、美禰子ちゃんがじたばたしている。
「いけないわ、三四郎さん!やめて!」と美禰子ちゃん。
「これが目に入りませんか?」三四郎が水戸黄門の印籠のように性交手形を振りかざす。
「あら!父が許したのね?どうして早くそれを見せないの?」美禰子ちゃんが抵抗をやめる。「このままでいい?脱ぎましょうか?」
「お嬢さんの裸が見たい。お手数でも脱いで下さい」
「いいわ」美禰子ちゃんが着物を脱ぐ。おっぱいはまだ五分咲きで膨らみ切っていない。まだ成長途中の少女なのだ。恥丘のもっこりに僅かな陰毛が生え、ぷっくりとした大陰唇が深い谷間を形成している。尻はふっくらと丸く、太股にも肉が乗っていて美味そうである。
「綺麗だ!」三四郎も着物を脱ぎ、裸になって美禰子ちゃんを抱く。二人は接吻する。三四郎が美禰子ちゃんのおっぱいやお腹、お尻を撫で廻す。三四郎は美禰子ちゃんを横たえ、そのおまんこを撫でさする。
「あううう」美禰子ちゃんがうっとりする。
「あ、猫が見てる」三四郎が吾輩の存在に気づいて云った。
「野良猫を英語で何て云うか御存知?」と美禰子ちゃん。
「stray sheepでしょう」
「馬鹿ね。sheepは羊です。stray catよ、解って?」
「あ、お嬢さん、濡れて来ました」三四郎が指で膣口をぐりぐりする。
「入れて!気持良くして!」と美禰子ちゃん。
三四郎がペニスに敷島サックを装着する。美禰子ちゃんの身体にのしかかり、股を開かせ、ずぶずぶとペニスを挿入する。
「わああああ!」美禰子ちゃんがのけ反る。
「池の端でお嬢さんを一目見た時からやりたかったです」と三四郎。
「私もよ!やって!」と美禰子ちゃん。
二人は激しく腰を動かし、互いの性器と恥骨を擦り合わせる。
「うふーんっ!」美禰子ちゃんがよがる。
三四郎が急速にピストン運動をする。
「むひーんっ!」美禰子ちゃんがイった。
「お嬢さんっ!」三四郎がどぴゅぴゅーん!と射精した。

数日後、女中の清がある客を主人の書斎に案内して来た。
「ケ、K君!」主人が腰を抜かした。死んだと思っていたK君が甦って来たのだ。「君は死んだ筈だ…」
「どっこい、生きていたのさ」とK君。K君は大柄で頑健な体躯の持ち主である。
「し、しかし…」幽霊を見ているように主人ががたがた震えている。「君の遺体は検屍もされ、雑司ヶ谷の墓地に葬られた。僕は毎年君の命日に墓参に行っている」
「礼を云うべきだろうが、それは別人だ」そう云って、K君はどっかと腰を下ろし、巻き煙草に火をつけた。「君や下宿の奥さん、お嬢さんが僕を無視したことが分ったあの日、確かに僕は死のうかと思ったさ。ところが、下宿の前で偶然行き倒れの死体を見つけて、考えが変わった。その死体に僕の着物を着せ、天井から吊るしたんだ。君らは恐くて顔をよく見もしなかったに違いない」
「本当かね?いや、君が生きているところを見ると本当だろうね」主人も煙草を取り出したが、手がわなわなと震えている。
「あら、お客さまでした?」細君が入って来て、丁寧にお辞儀をした。「気がつきませんで。今、お茶を…」そう云って出て行った。
主人はまじまじとK君の顔を見る。十数年前、K君が恋い焦がれた当の相手が現れたというのに、K君の表情は全く変わらなかった。主人はいささか拍子抜けした。
「お待たせしました」しばらくして、美しい着物姿の美禰子ちゃんがお茶の盆を捧げ持って静々と歩いて来た。今日は白いリボンを髪に結んでいる。
「お、お嬢さんっ!」K君がガバッと立ち上がった。目を大きく見開き、顔中の筋肉をぴくぴくさせ、両手の拳をぶるぶる震わせている。
「どうぞ、ごゆっくり」美禰子ちゃんは畳の上で一礼して去った。

「君!」とK君が云った。「頼みがある」
「聞こう」と主人。
「僕は満州へ行く。もう帰らぬ決心だ。日本の最後の思い出にお嬢さんとやらしてくれ」
「何だって?」主人が呆気にとられる。
「お嬢さんと一発やらしてくれれば、君の裏切りも忘れる。頼む」
「君。今のは僕の娘だよ。君が恋慕したのは、最初に来た女だ」
「また僕を騙すのか?え?最初の年増はお嬢さんの母親じゃないか!僕がやりたいのはお嬢さんだ」
「君、あれから何年経ったと思っているんだ。昔のお嬢さんが年を取ってあの年増になったんだ」
「議論は沢山だ。やらしてくれるのか、どうなんだ?」K君が詰め寄る。
「嫌だと云ったら?」
「満州へ発つ前に、この家に火をつける」
「冗談じゃない!」主人は仕方なく引き出しから『敷島サック付き性交手形』を取り出してK君に渡す。「これを見せれば大人しくやらせる」と云った。「出来ればイかしてやってくれ」
「分った。済んだら、そのまま出て行く。さらばだ」とK君。
哀れ、美禰子ちゃんは見も知らぬ男とおまんこすることになった。

ある日の午後、以前この家に書生として住み込んでいた多々良三平君がやって来た。小さな女の子を連れている。
「しぇんしぇい(先生)、具合よくおんしゃったな」と三平君。
「なんだ、そりゃ君の娘か?」と主人。
「とんでもなか。あたきはまだ独身たい」
「うむ。ではどこで拾って来たんだ?」
「ついそこですたい。しぇんしぇい、こんぐらいの子供とおまんこする話ば書きたか〜ち云うておられたやろ?こん子は五十銭出せばやらせるちゅうとるとたい」
「なに?」主人は女の子に向き直った。「キミ、いくつ?どこの子?」
「あたしね、裏の車屋の子でまん子って云うの。歳は十よ」とまん子。
「なんだ、車屋の子か」主人はさも軽蔑したように云う。「キミ、もうおまんこしたことあるの?」
「うん」
「誰と?」
「んーとねえ、お兄ちゃんと、お父さんと、あと知らない小父さんたち」
「みんな五十銭出したの?」
「お兄ちゃんとお父さんはタダ。小父さんたちからは五十銭ずつ貰った」
「ひえーっ!いっぱしの売春婦だね」主人がたまげる。「じゃ小父さんも五十銭出そう」
「しぇんしぇい、もう二人分一円払ったとです」と三平君。「あたきも炭坑会社の役員ですけん、そのぐらいは何でもなかですたい」
「そうか、済まんね」と主人。そしてまん子ちゃんに「じゃ、君、裸になりたまえ」と命じる。

まん子ちゃんが裸になる。主人と三平君も裸になった。
「見たまえ」と主人。「完璧な子供だね。まるで少年から珍々を取ったようだ。こんな小さい身体でおまんこ出来るものかね?」主人がまん子ちゃんを畳の上に寝せる。
「ちっこいばってん、こん子の親父さんもやっとるけん、問題なかばい」と三平君。
「君。車屋の娘にしちゃ、この子は可愛いね」と主人。「二重瞼に赤い頬っぺ、おちょぼ口と来てる」主人はまん子ちゃんに接吻し、少女の舌を舐める。
「しぇんしぇい。こん子のおまんこも愛らしかですたい」三平君はまん子ちゃんの股を開かせ、おまんこを左右に引っ張って、粘膜を舐めようとする。「うむ、ちょこっとおしっこの味がしよるばい」
主人はまん子ちゃんの平らな胸の乳首を舐めている。
「しぇんしぇい。もう濡れたったい。しぇんしぇい先にやりんしゃい」
「え?いいの?悪いね」主人と三平君が位置を交代する。主人も十歳のおまんこを観察し、その粘膜の色や形状を後日の執筆のために脳裏に刻む。主人は勃起したペニスをまん子ちゃんのおまんこに突っ込もうとする。
「思ったよりきついね、こりゃ」と主人。「おお、しかし、愛液のおかげで入ったよ」主人がペニスを出し入れする。
「どぎゃんですか、塩梅は?」と三平君。
「いい!最高だ!子供とやるのがこんなにいいとは知らなかった。美禰子よりずっといい。君に感謝するよ」と主人。
「しぇんしぇい。あたきもお嬢さんとやりたか」
「ああ、今度やりたまえ」
「わあ、嬉しか!」
「しかし、子供とのおまんこのこの快感を文字にするのは難しいな」
「しぇんしぇい。傑作ば書きんしゃい」と三平君。
「うん。頑張るよ」主人はまん子ちゃんの両脚をお腹にくっつくほど曲げさせ、おまんこを上向きにし、恥骨を擦り合わせたり、ペニスのピストン運動を繰り返す。
「ああーん!」まん子ちゃんがよがる。
「しぇんしぇい、こん子よがってますばい!」と三平君。
「うむ。こうなりゃイかしてみようか」主人が本格的におまんこを始める。
「ひいーい!」まん子ちゃんが身をくねらせてよがる。

吾輩は呆れた。我等猫族はこんなことはしない。発情していない雌の仔猫が雄に性交させるわけもないが、雄の成猫が仔猫と性交したがるなどということは絶対にない。性本能というのは猫族を絶やさぬように生殖を促すものである。生殖に繋がらぬ性交は意味がないばかりか、動物の本能を逸脱しておる。人間は動物のくせに本能を捩じ曲げ、無駄なことに精力を使っているようだ。この分ではヒトという種は絶滅し、早晩犬や猫の天下が訪れるに違いない。有り難や、有り難や。




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