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17. 等々力警部最後の事件

「殺人事件だ!等々力君、直ちに現場に急行してくれたまえ!」と橘署長が云った。
「どこです?」オールバックに夏目漱石のような口髭の等々力警部が、脱いでいた黒の上着に袖を通しながら尋ねた。
「八つ墓村」
「八つ墓村?」そこは17年前におどろおどろしい連続殺人事件が起き、等々力警部が担当して見事に犯人を検挙した歴史的な土地だった。「で、今度は何人殺されたんです?」
「一人」と署長。
「一人?たった?」等々力警部がずっこけた。

事件は八つ墓村の旧家の横溝家で起っていた。横溝家の門前で地元の磯川刑事(20代)が等々力警部を待ってた。
「警部殿。ガイシャは16歳になる当家の娘であります」と磯川刑事。
「密室殺人だろうね?」と等々力警部。
「襖だらけの家ですからね。密室になるわけないす」と磯川刑事。
「壁にガイシャの血で書かれた次の殺人予告かなんかあるんだろうね?」二人は豪壮な旧家の中へ入る。
「そんなもんないす」
「随分地味な事件だなあ」等々力警部ががっかりする。「で、死因は?」
「さあ?」
「動機は何かね?」
「さあ?」
「キミ、殺人事件だとわしを呼んだ以上、ほんとに他殺死体が転がってるんだろうね?」と等々力警部。
「それはあります」と磯川刑事。
「ガイシャは美人かね?」等々力警部が娘の部屋を目指しながら聞く。
「凄(すげ)え美人です。まあ、まだ16のおぼこですけどね」
「おぼこ、いいじゃないか。おぼことやりたいもんだ」
等々力警部は娘の部屋に入り、室内の観察に専念した。そして、上向きにした左手に丸めた右手をぽんと打ちつけ、その右手を開いて高くかざし、「よ〜し、わかった!これは怨恨ではない!」と云った。
「ま、ガイシャが全裸になってるんですから、痴情に決まってるっす」と磯川刑事。
「もひとつわかった!これは物盗りの仕業でもない!」と等々力警部。
「そらそうです」と磯川刑事。「机の上に五万円ぐらいの現金が放っぽらかしになってますからね」

等々力警部は仰向けになっている女の全裸死体をつぶさに調べた。「んー。いい身体だ。見たまえ、このむちむちした真っ白い肌。このお椀を伏せたような可愛いおっぱい。もっこりした恥丘。しょぼしょぼっと生えた陰毛。いいねえ、実にいい」
「警部殿?」と磯川刑事。「警部殿のズボンの前が膨らんでまっせ。仏に対して不謹慎じゃないすか?」
「不謹慎?あたしの男根が仏の美しさを賛美しとるんじゃないか。こんないい娘を殺すなんて勿体ない。殺す前に連絡してくれりゃ、一発やれたのに」
「今でもやりたそうじゃないすか」と磯川刑事。
「まだ完全に冷たくなってないしな。やるかな?」等々力警部がズボンのチャックを下ろす。
「いけませんよ!警察官がガイシャを屍姦するなんて!バレたらどうすんです?」磯川刑事がおたおたする。
「これも警官の役得だよ。検視が済んでるんなら、構わんじゃないか」
「ところが検視はまだなんです。今日は市役所との野球大会の日でしてね。あと一時間は来れないでしょう」
「なーんだ、クソ」等々力警部はチャックを戻した。

「お、これは毒殺だな」死体を調べていた等々力警部が髭を撫でながら云う。
「え?どうして判るんです?」磯川刑事が目を丸くする。
「絞殺の痕も撲殺の痕もない。となると毒殺しかない」
「自殺の線もありますよ?」と磯川刑事。
「他殺と断定したのはキミだろうがっ!」等々力警部が磯川刑事をド突く。

等々力警部は手術用の薄いゴム手袋を右手にはめ、その人差し指を死体のおまんこに突っ込む。
「警部殿!検視の前にそんな!」磯川刑事がおろろする。
「残念だなあ。生きてりゃ、『あっはーんっ!』とか云って喜ぶだろうに」等々力警部が指先をぐりぐり廻す。
「あんたっ!」突如怒声が轟き、長めの白髪を振り乱した70過ぎの老人が飛び込んで来た。「故人を冒涜しとるのか?許せんっ!」
「あ、こちら当家の御隠居の横溝さん」磯川刑事が等々力警部に云った。「御隠居さん、こちら等々力警部です」
「あたしゃね、検視の連中が遅いので、独自に捜査を進めとるんです」等々力警部が死者の陰部から指を抜き出し、その指の臭いを嗅いだ。「ほらね?精液の臭いだ。これで動機は痴情関係であること、また性交相手の男性が有力容疑者であること、そしてまたこの精液の粘度からして犯行時刻も推定出来るっちゅうわけですわ」等々力警部が鼻を蠢かして得意そうに云った。
「等々力?」ぽかんと口を開けたままだった横溝老人が云った。「昔、ここへ来た等々力か?」
「はあ。17年前にお邪魔した等々力ですわ」等々力警部は以前の事件解決への賞賛か感謝の言葉を期待して待った。そんなものはなかった。
「くそったれ!またノコノコ来やがってからに!」老人は吐き捨てるように云った。
「なんですと?」等々力警部が驚く。

「あんた、あの当時は捜査を私立探偵に任せ切りにして、この村の娘っ子らの尻ばかり追いかけとったろうが!」と横溝老人。「何人誑(たぶら)かしたか知らんが、少なくともそのうち八人があんたの子供を身籠ってしまった」
「うっそーっ!」等々力警部が唖然とする。
「当時、大都会でもないと堕胎は不可能じゃった。八人は仕方なくあんたの子を生んだんじゃ」と老人。「ところがその子らは、八人が八人ともあんたの血を引いて脳足りんの子に育った。そのせいで、今やこの村は“八つ馬鹿村”と呼ばれておる」
「冗談じゃない!」等々力警部が憤る。「あたしの血を引いてたら頭脳明晰な子供になる筈だ。その連中はあたしの子供なんかじゃありませんよ!」
「この悌子(ていこ)も、わしの娘が生んだあんたの子の一人じゃ。見掛けは立派な女じゃが、知能が低くてのう」老人は涙ぐんだ。
等々力警部にはまだ信じられなかった。当時、この村の女たちと手当たり次第にやりまくったのは事実である。しかし、八人も妊娠させ、その八人がみな自分の子供を生んだなんて想像を絶することだ!等々力警部は裸で横たわる16歳の娘を見つめた。自分に似ているとは思えない。しかし、自分の娘だったとしたら?自分はわが娘の全裸死体を見て勃起してしまったことになる。いや、屍姦さえ犯してしまうところだった。

「遅れまして済みません!」検視の連中がどやどやとやって来た。みな野球のユニフォームの上に白い上っ張りを着ている。「検視の立花です」一人が等々力警部に挨拶した。
「あ、キミ。ガイシャの体内に精液が残留しとる。しかし、注射器で他人の精液を注入するというトリックも考えられるから、念のためホシの陰毛がガイシャの陰毛に絡まっとらんかよく調べてくれ」
「了解しました」

「あんた」と横溝老人。「捜査はあんたの仕事じゃ。しかし、わしにはわしなりの推理がある。聞きたくないかね?」
「ふむ。どんな推理ですかな?」等々力警部は本当は素人の考えなど聞きたくない。
「あんたの子供たち八人は薄ら馬鹿というだけではなく、あんたの血を引いてひどく好色でな」
「またそんな!根も葉もない!」等々力警部が抗議する。
「この八人は互いに自由におまんこしとった。みな腹違いの“きょうだい”だから、立派な近親相姦なんじゃが、止(と)めても止めてもやりまくっておった」
等々力警部は愕然としていた。聞けば聞くほど猟奇的な話だ。殺人事件の背後に、そんな異常かつ淫靡な関係があろうとは。
「わしは、この悌子を除く七人の誰か、単数か複数かは知らんが、セックスのもつれで争い、悌子が巻き添えになったと見とる」
「はあ…」等々力警部は耄けたように虚ろな表情をしていた。

「ところで、あの机の上の五万円は何です?」それまで黙っていた磯川刑事が尋ねた。
「さあ?わしゃ知らん」と横溝老人。「悌子があんな金を持っている筈はないし」
「とりあえず立花君に指紋を調べて貰おう」と等々力警部。

検屍官の調べで、死亡推定時刻が判明した。朝の九時頃だという。朝からセックスするというのは異常だったが、異常な事件ばかり起るこの村では、それは大したことではないとも云えた。

等々力警部と磯川刑事は聞き込みを開始した。先ず横溝老人の言葉をヒントに、八つ馬鹿の七人のアリバイを調べることになった。
「え?アリババ?」と七人の一人・片岡 仁(ひとし)君(16歳)が云った。
「それは盗賊の宝物を盗んだ男。アリバイってのはね…」磯川刑事が説明しようとする。
「今朝の九時、キミはどこにいた?」等々力警部が単刀直入に尋ねる。「あ、これは村のみんなに聞くことだから気にしないように」
「今朝の九時?おら、妹の部屋にいた」と仁君。
「ふーん?妹さんと一緒?何してたの?」と磯川刑事。
「妹とおまんこしてた」と薄ら馬鹿の仁君が云った。
等々力警部と磯川刑事はぶったまげた。

「おらは母ちゃんと一緒だったす」と七人の一人・石坂義男君(16歳)が云った。
「おっ母さんと何してたの?」と磯川刑事。
「母ちゃんとおまんこしてた」と義男君。
またもや等々力警部と磯川刑事はぶったまげた。

等々力警部と磯川刑事は七人の一人・古谷 忠(ただし)君(16歳)に会った。
「今朝の九時、キミはおっ母さんとおまんこしてなかった?」と磯川刑事。
「うんにゃ」と忠君。
「キミは妹さんとおまんこしてたんだ。そうだろ?」と等々力警部。
「ぴんぽーん!」と忠君。
等々力警部と磯川刑事はもう驚かなかった。

二人は七人の一人・西田 孝君(16歳)にも会った。
「今朝の九時、キミは誰とおまんこしてた?」と磯川刑事。
「その頃は誰ともやってねっす」と孝君。
「ほんとかい?」と磯川刑事。
「八時に母ちゃんとやったから、九時には誰ともやってねっす」
この村では誰もが近親相姦しているのだ。等々力警部と磯川刑事はもう不感症になってしまった。

二人は七人の一人・渥美礼子(16歳)のアリバイを確認しに行った。渥美礼子は浴衣の襟を開け胸元の肌を見せ、裾を乱して肉付きのよい太股を曝け出していた。等々力警部が鼻の下を長くし、娘の裸を想像していると、渥美礼子がすり寄って来た。
「小父さん、ハンサムね」そう云って、渥美礼子は等々力警部のズボンの上からペニスをごしごし擦った。
「き、キミ!」等々力警部は磯川刑事の手前、ちょっと抵抗して見せたが、娘の手の動きにうっとりしてしまう。
「小父さん、可愛がって」と渥美礼子。
「磯川君、済まんがちょっと外してくれたまえ」と等々力警部。
「警部殿!この娘は警部殿の娘かも知れないんですよ!」と磯川刑事。
「構わんっ!」等々力警部が怒鳴った。
「ほんじゃ、自分はこの娘の母親から裏を取って来ます」磯川刑事が去った。
等々力警部はドアをロックし、渥美礼子を振り返った。

渥美礼子も横溝悌子に負けず劣らず可愛かった。長い髪、色白、二重瞼の大きな目、めくれ上がったエロっぽい唇。等々力警部は渥美礼子の浴衣を脱がせた。下着は一切着けていなかった。ぽっちゃりしたふくよかな肉体がドバーン!と現われた。横溝悌子よりも大きめの乳房が実っていた。等々力警部はぶちゅっと渥美礼子にキスし、舌を舐め廻した。同時に片手で乳房、片手で渥美礼子のお尻を撫で廻す。渥美礼子は、手探りで等々力警部のズボンのベルトを外し、ズボンを引き下ろす。勃起した等々力警部のペニスがつっかえるが渥美礼子は遠慮会釈なく無理矢理ズボンを引っ張る。
「痛(いて)ててて!」等々力警部が悲鳴を挙げた。

等々力警部は渥美礼子を畳の上に押し倒すと、その股間に頭を埋めた。16歳の割れ目を開く。てらてらと光るピンクの粘膜。膣口からは早くも愛液が滴り落ちている。等々力警部は渥美礼子のクリトリスをしゃぶった。
「あっあっ、ああーんっ!」渥美礼子がよがる。
等々力警部は指二本を渥美礼子の膣に挿入し、Gスポットを探った。
「ぎひーっ!むあーんっ!」渥美礼子が盛大によがった。
等々力警部はびくんびくん脈打つペニスを押さえつけ、渥美礼子のおまんこにぶち込んだ。16歳の性器にペニスをびっちりと包まれた等々力警部は、天上的心地よさにうっとりした。屍姦では得られない、温かく濡れた膣の感触。等々力警部は渥美礼子が自分の娘でなくても愛しいが、娘ならなお可愛いと思った。等々力警部は娘の身体を抱き締め、恥骨を擦り合せた。
「むひーっ!あはあはあっはーんっ!」渥美礼子がよがる。
等々力警部は渥美礼子を四つん這いにさせ、犬の体位で後ろからペニスを突っ込んだ。
「?」渥美礼子の右の尻に名前の一字「礼」の文字が刺青されていた。不思議だったが、それを詮索している場合ではない。等々力警部は背後から手を廻して渥美礼子のクリトリスを弄くりつつ激しくピストン運動をした。
「ぐわはーんっ!」渥美礼子がイった。
「うむーっ!」等々力警部が渥美礼子の体内でどぴゅどぴゅどぴゅぴゅーん!と射精した。

等々力警部が渥美礼子の部屋を後にすると、丁度磯川刑事もズボンのベルトをはめながら戻って来た。
「警部殿。自分はこの村が好きになったであります」と磯川刑事。
「キミ。娘のおっ母さんと姦(や)ったのかね?」
「この村の住人はみな色気違いみたいすな。簡単にやれるっす」
「よかったじゃないか」等々力警部が磯川刑事の肩をぽんと叩いた。
「警部殿が八人の女を身籠らせたというのも嘘じゃなさそうすね」と磯川刑事。
「キミ、ありゃ出鱈目だってば!」と等々力警部。

翌日、二人は七人の一人・豊川智子(16歳)のアリバイを聞きに行った。豊川智子は等々力警部のズボンのチャックを下ろし、ペニスを引っ張り出すとフェラチオを始めた。豊川智子は面長で涼しい顔をした美人である。
「じゃ、自分はこの娘の母親から裏を取って来ます」磯川刑事がにたにたしながら去った。
等々力警部は、豊川智子にペニスを舐めさせながら考えていた。おれの娘ならみなこんな美人である筈がない…と。等々力警部は豊川智子のブラウスとスカートを脱がせ、ブラジャーとパンティをひん剥いた。豊川智子の尻を見ると、やはり右の尻に名前の一文字「智」の字が刺青されていた。「うーむ」等々力警部が唸ったが、勃起したペニスを宥めるのが先決である。等々力警部は豊川智子のピンクのおまんこを観賞した後、69の体勢で互いの性器を舐め合い、最後に正常位でおまんこし、豊川智子の天国逝きの表情を楽しみながらズバコンズバコンと射精した。

七人の最後は稲垣信江(16歳)である。等々力警部は無言で稲垣信江を真っ裸にした。
「警部殿っ!人権蹂躙で訴えられますよ!」磯川刑事があたふたする。
等々力警部は稲垣信江の尻を突き出させた。等々力警部が確信していた通り、稲垣信江の右の尻には名前の一字「信」という文字が刺青されていた。等々力警部は「磯川君、検視の立花君に電話して、悌子の死体の尻に『悌』の文字がなかったかどうか聞いてくれたまえ」と云った。
「ハイ!」と磯川刑事が飛び出して行く。
等々力警部は、裸の稲垣信江の若くすべすべの身体を撫で廻しながら、彼女とねちっこく舌を絡め合った。

等々力警部の推理通り、横溝悌子の尻にも「悌」の文字が刺青されていることが判った。さらに、磯川刑事は横溝悌子が妊娠三ヶ月であったという検屍の情報をももたらした。磯川刑事が男の子たちの尻を点検して来た結果、全員の尻に名前の一文字が刺青されていることが判明した。
「仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌…か。キミ、何か思い出さんかね、え?」と等々力警部。
「さあ?」磯川刑事が首を捻る。
「最近の若い者(もん)は学がないねえ。キミ、御苦労だが、この八人を命名したのが誰だったか調べてくれたまえ。キミがまだ裏を取ってない母親に会えばよかろう」と等々力警部。
「ハッ!」磯川刑事が先輩の好意に感謝しながら駆け出して行った。

「まあ、ご立派になられて…」横溝老人の娘(横溝悌子の母親)である横溝須磨子(36歳)が、自室で等々力警部に云った。横溝須磨子は和服がよく似合う色っぽい姥桜である。
「いやあ、そんな…」珍しく等々力警部が照れた。「ところで、亡くなられたお嬢さんのことですが…」
「お嬢さんだなんて。あなたの娘じゃありませんか」
「そ、そう急に云われても…」等々力警部がおどおどする。「この村に私の血を引いた子が八人もいるなんて噂を立てられて、あたしゃ迷惑してるんです」
「他の七人については何とも云えませんわ」と横溝須磨子。「でも、悌子は私が生んだんですからハッキリしてます」
「ほ、ほんとに私とあなたの?」まだ等々力警部には信じられない。
「十中八九」と横溝須磨子。
「御主人もそれを承知なんですか?」
「さあ?」

「奥さん。他の七人の若者たちと面談しましたが、驚いたことに誰もが色情狂的なんです」と等々力警部。「云いにくいんですが、ひょっとして悌子さんにもそういう傾向があったんじゃないんですかな?」
「村のみんなが知っていることです。隠すつもりはありません。悌子も色情狂でしたわ」と横溝須磨子。
「と云うと、同い年の片岡 仁、石坂義男、古谷 忠、西田 孝などとやりまくっていた…ということですな?」
「それだけじゃありませんわ」と云って、横溝須磨子が両方の袖で顔を覆い、「くくく…」と泣き崩れた。
「奥さん!」等々力警部が駆け寄って横溝須磨子の肩を抱く。
「等々力さん!今でもあたしが好き?」と横溝須磨子。
「も、もちろんです」当人を前にして、あんたは嫌いだとか、どうでもよいなどと云えないではないか。
「抱いて!おまんこして!」横溝須磨子が等々力警部に縋る。
「奥さん。御主人に悪いです…」等々力警部が尻込みする。
「いいのよ、あんなの」横溝須磨子が着物を脱ぎ出した。肌襦袢を取り去ると、熟した乳房がぼろぼろんとこぼれ出た。横溝須磨子が腰巻きを外す。女盛りのむちむちむっちりの真っ白い肌が曝け出された。
等々力警部は「ごっくん!」と唾を飲み込み、黒のスーツを脱ぎ出した。

「警部殿、警部殿!」磯川刑事の声がして横溝須磨子の部屋のドアがどんどんと叩かれた。
「おお、何か判ったかね?」等々力警部がドアを開ける。
「あ、あの…」磯川刑事が先輩の全裸姿にぶったまげる。「命名したのは全てこちらの御隠居さんだそうです」
「やっぱり」等々力警部が室内に仰向けに横たわっている横溝須磨子を振り向く。磯川刑事が覗き込んで全裸の横溝須磨子を見ながら涎を垂らす。
「奥さん。奥さんのお母さんはどちらの出身ですか?」と等々力警部。
「あたしの母?カメダです」と横溝須磨子。
「カナダ?」と磯川刑事。
「ばーか」と等々力警部。「秋田県の亀田でしょうな?」
「あ、それならきっと島根県の亀嵩(かめだけ)でしょ?」と磯川刑事。
「違います。千葉県富津市の亀田です」と横溝須磨子。
「富津市?南房総?」
「はい」
「で、お母さんの死因は?」
「狂死です」と横溝須磨子。
「よ〜し、わかったあ!」等々力警部が手をポンと打ち、右手を高くかざした。
「ところで警部殿?」と磯川刑事。
折角見えを切ったのに無視された等々力警部がずっこける。「な、なんだい?」
「八つ馬鹿の母親たちは自分の担当であります」磯川刑事が横溝須磨子の裸身から目を離さず、ネクタイを緩めながら云った。「縄張りを荒らさないで下さい」
「あ、そうだったな。済まん済まん」等々力警部は脱いだスーツと下着を抱えて室外に消えた。

等々力警部が衣服を着け、茶の間にさしかかると横溝老人が呼び止めた。
「何です?」と等々力警部。
「何ですとは御挨拶だな。ま、茶でも一杯どうかね?」と横溝老人。
「そうですな。相棒がまだ仕事中ですから、一寸待たせて頂きますかな」等々力警部が卓袱台の前に座る。
横溝老人がお茶を煎れ、盆に入ったお菓子を差し出す。
「何ですか、こりゃ?妙な形ですなあ」等々力警部がお菓子をひねくり回す。
「墓の形じゃよ。八つ墓まんじゅうと云うてな、ここの名物じゃ」
「へえ?うむ、こりゃうまい。いけますな」等々力警部がむしゃむしゃ食べ、お茶を飲む。
「で、捜査は進展しとるのかな?」と横溝老人。
「進展どころか、もう解決しました。犯人も判ってます」
「えーっ?誰じゃな、それは?」横溝老人が驚く。
「あんたですよ、御隠居さん」と等々力警部。

「何を云う!デタラメ云うな!」横溝老人が手をわなわなと震わせる。
「陸の孤島のようなこの村では昔から近親相姦が盛んだった」と等々力警部。「あんたは妻を遠方から貰って血が濃くなるのを防ごうとした。それは劣性遺伝を避ける最善の策だったが、あんたの好色な本能は妻との性交だけでは満足せず、この村の女たちと手当り次第におまんこしていた。それだけでなく、妻が生んだ自分の娘とも近親相姦を犯していた。そして、例の事件の後、あんたの娘を含む八人の女があんたの子供を身籠った。あんたと娘の相姦を知った奥さんは、里見家の呪いを口にして狂死したんだ。あんたは里見八犬伝の呪いを防ぐため、八つ馬鹿の子供たちに仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌の文字を刺青させた」
「むむむ!」と横溝老人。
「まんじゅう、もう一個貰いますよ」等々力警部が盆に手を伸ばす。
「あ、こっちに白餡のもあるよ」横溝老人が盆を廻す。
等々力警部が白餡の饅頭を頬張りながら続ける。「奥さんの死をもっての抗議も聞かばこそ、あんたは自分の孫の横溝悌子とも交わり、ついに妊娠させてしまった。あんたは八つ馬鹿が九馬鹿になるのを恐れ、堕胎させようとして悌子に五万円を与えた。しかし、悌子がどうしても堕ろそうとしないので毒殺したんだ」
「証拠があるのか?」横溝老人が挑むように云う。
「昔とは違うんですよ、御隠居さん」と等々力警部。「あんたの血液、横溝悌子のおまんこ内の精液、八つ馬鹿八人のDNAを調べれば、全てがあんたを中心とした事件であることは明らかになる」
「わしは悌子を殺しておらん!」と横溝老人。
「さあ?金田一耕助探偵がいまアメリカから飛んで来てますからな。彼が明快に解明してくれるでしょうよ」
「なに?お前だけかと思って高を括っていたが、金田一も来るのか?」
「その前に自首したらどうです?まだ間に合いますよ?」と等々力警部。

「ふん。自首なんかするか!わしの珍々が立つうちは刑務所なんぞに行かん!死ぬまでやってやってやりまくるんじゃ!」と横溝老人。
「じゃ、御勝手に」そう云って立ち上がろうとした等々力警部が、よろめき、どでーん!とひっくり返った。
「阿呆め。毒入りの八つ墓まんじゅうをばくばく食いおって」横溝老人が勝ち誇る。
「ク、クソ!金田一耕助に仇を取って貰うぞ」等々力警部は弱々しく手足をびくつかせていたが、ぱたっと動きを止め、白目を剥いて絶命した。
「なーに、金田一にも八つ墓まんじゅうを御馳走するまでじゃ。わはははは!」横溝老人が高笑いした。




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