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20. 性のデュエット

優希(ゆうき)君と芽以(めい)ちゃんは二卵性双生児である。お母さんが若い頃歌手だったせいもあり、二人は五歳の頃からプロの歌の先生について歌唱法を学んだ。「のど自慢」や「天才発掘」などのTVショーに登場して、天才少年少女デュオとしての人気を高めて来た。二人は「ジュモウ」(フランス語で「双子」)という名で、ラジオやTVに頻繁に出演し、CDも出している。二人のレパートリーは幅広く、クラシック、フォーク、ロック、歌謡曲まで何でもこなした。

「ジュモウ」が青少年ばかりでなく一般大衆にも知られるようになり、「紅白歌合戦」にまで登場するようになった切っ掛けは、何と云っても「シン・ティ」の大ヒットであった。'Sin Ti'(シン・ティ)は、元々イギリスのロックバンドのバッドフィンガーが「ウィズアウト・ユー」として1970年にリリースしたバラードだが、アメリカの女性歌手マライア・キャリーがドラマチックな唱法でリバイバルさせて1994に大ヒットさせた。そのマライアの唱法を真似てスペインの天才少年歌手アブラム・マテオ(当時11歳)がスペイン語で唄ってヒットさせ、その彼がフランスの天才少女歌手カロリン・コスタ(当時13歳)と組んだ二重唱が、またまた大ヒットとなった。大人の愛と別離を少年・少女が、ある時は小節を利かせ、ある時は高らかに唄い上げる。それは、感動の涙をそそる絶唱であった。

優希君と芽以ちゃんの両親がヨーロッパ旅行に行った折り、フランスとスペインで「シン・ティ」の大評判を耳にした。聞けば、自分の子供たちと同じ年代の少年少女のデュオだという。CDを試聴したお父さんとお母さんは驚いた。スペイン語なので意味は分からないが、少年少女の熱唱は胸に迫って来た。「これはぜひ優希と芽以に唄わせたい」両親は即座に決意した。帰国した二人は、バッドフィンガーのオリジナルとマライア・キャリーによるカバーを聞いてみた。英語の歌唱は日本人にも解り易いが、スペイン語の迫力には到底及ばなかった。二人は東京在住のスペイン人教師を雇って、歌詞の意味と発音を子供たちに教えさせた。スペイン語の歌詞は英語のオリジナルと異なっていたから、この手順は重要だった。

【'Sin Ti'は、https://www.youtube.com/watch?v=-7WafXzNxSI で聴くことが出来ます】

13歳の「ジュモウ」デュオによる「シン・ティ」は爆発的な人気を得た。曲とアレンジもよかったが、二人の歌唱力が絶品だったからである。スペイン語による歌詞が障害になる危惧は、TVの場合は日本語のロール・テロップを流すことで解決出来たし、雑誌の多くが「シン・ティ」の歌詞をスペイン語と日本語対訳で掲載してくれ、これらも大ヒットの下地を作ってくれた。

「紅白」出場後は、日本各地での公演が企画された。もちろん二人には学校があるので、冬・春・夏の休みの期間である。しかし、雑誌の取材やTV出演は通常の週末にも行われ、一泊二日で沖縄やグアムでのヴィデオ撮影に出張することも少なくなかった。TV局や劇場に出入りする「ジュモウ」へのファンの追っかけも増えた。子供たちばかりでなく、20代のお姉さんたちまで「優希く〜んっ!」とか「芽以ちゃーんっ!」と声をかけ、サインをねだったり、身体に触ろうとしたりした。

優希君と芽以ちゃんが小さい頃は、お母さんがステージ・ママとして常に同伴していた。コンサートやTV出演の場合、出番に遅れないように…という見張り役でもあったし、何も分からない子供たちだけだと楽屋でおろおろしたり、食事やお手洗いに行くのをどうしていいか分からないこともあるだろうという心配からだった。沖縄や海外のロケの場合は、ディレクターやカメラマンの無理な注文や長時間労働を撥ね付ける人間も必要だった。

しかし、紅白以後、所属プロダクションが「ジュモウ」専属の女性マネージャーをつけてくれることになった。かなり売れるようになったことと将来も有望なので、大物扱いになったわけである。お母さんはステージ・ママを引退し、ファンレターの整理や、ブロマイド入りの返事を出す作業に専念することになった。それまで地方公演で宿泊する場合、お母さんと芽以ちゃんが一室に泊まり、優希君が別の一室を与えられていた。女性マネージャーがついてからは、三人は別々の部屋に泊まるようになった。

やがて、優希君と芽以ちゃんは14歳になった。優希君はピアノ、ギターや、フルート演奏なども器用にこなすようになり、芽以ちゃんは、演奏はボーカルとパーカッションだけだが、作詞を試みるようになって、彼女の詩にプロの作曲家が曲をつけた歌もいくつか生まれていた。「それなら…」というので、優希君は最近作曲の勉強も始めた。兄妹の作詞・作曲の歌を作ろうという意気込みである。

優希君と芽以ちゃんは口を揃えて「コンピュータとiPadを買って!」と両親に頼んだ。ちゃんと稼いでいる子供たちのリクエストを無視出来ず、両親はそれぞれにiMacとiPadを一台ずつ買い与えた。優希君は自力でFacebookやTwitterを開設し、ファンとやりとりを始めた。もちろん、芽以ちゃんも参加した。そういうコンピュータ利用法に気づかなかった両親は恥じ入った。ゲームや電子メールなどのためばかりでなく、ファン・サービスに役立てているのだ。それなら「ジュモウ」の人気にも繋がり、CDの売り上げも伸びるだろう。お父さんとお母さんはにこにこした。優希君は、さらに作曲のためのソフトウェアを駆使して、シンセサイザー風の演奏や多重録音にも挑戦した。これまた両親が想像もしていなかった利用法であった。

もちろん、優希君はそんな真面目なことばかりしていたわけではない。14歳といえば、思春期真っ只中である。優希君は性とセックスについて色々調べた。「18歳未満お断り」のサイトに「18歳以上」のボタンを押して入場し、女性のヌードや性器の写真、男女の性交などに目を丸くして見入った。ある時、ウェブサーフィンしている途中で、ジュニア・アイドルのサイトにぶつかった。自分と同じ年頃の女の子が、セーラー服やスクール水着、ビキニなどでお尻を突き出したり、大きく股を開いたり、ビキニ水着を着用してパンチラに見せたりしている。優希君のペニスが勃起し始めた。優希君はズボンの上からペニスを撫でた。(こういうジュニア・アイドルたちは自分と同じ年頃なのだから、双子である芽以もこういう体つきをしているわけだ) 優希君は、ビキニ姿のジュニア・アイドルの顔を芽以ちゃんに置き換えてみた。ペニスは萎えなかった。萎えるどころか、ぐんぐん固くなった。優希君はオナニーを始めた。

「とんとん」ある夜、優希君が芽以ちゃんの部屋のドアをノックした。「おれだ」と優希君。
「あ、お兄ちゃん?入っていいわよ」と芽以ちゃん。
現行法律では、先に生まれた方が兄(あるいは姉)と定められている。芽以ちゃんは10分前に生まれた優希君を「お兄ちゃん」と呼んでいた。互いは一卵性双生児ほどそっくりの顔ではないが、かなりよく似ていた。芽以ちゃんが短髪にするか、優希君が鬘をかぶって一人で現れれば、それが双子のどっちなのかを見分けるのは難しいくらいだった。
「芽以。頼みがある」と優希君。
「なあに?」芽以ちゃんはくりくりした目で優希君を見返した。芽以ちゃんは、双子としては同格ながら、音楽的に多芸多才な兄を尊敬していた。兄が自分に何か頼みに来るということはほとんどなく、珍しいことだった。
「おまんこさしてくれ」と優希君。
「…」芽以ちゃんは自分の耳を疑った。
「駄目か?」と優希君。
「何て云ったの、いま?」芽以ちゃんのショックはさめない。
「聞こえただろ?何度も云わせんなよ」
「お兄ちゃん、正気なの?あたしたち、兄妹(きょうだい)なのよ?そんなことするもんじゃないわ」芽以ちゃんが諌めるように云う。

「おれ、セックスしたくてもう気が狂いそうなんだ。やらしてくれよ。頼む!」と優希君。
「お兄ちゃん、ファンが一杯いるじゃない?いい娘(こ)を捉まえればいいじゃないの」と芽以ちゃん。
「おれたち、清純派のデュオで売ってんだぞ?おれとおまんこしたファンが週刊誌やTVに衝撃の告白なんかしたら、どうなる?」
「破滅だね、あたしたち。ね?マネージャーの中井さんならやらしてくんない?」
「頼みゃやらしてくれるだろ」
「じゃ、中井さんとやりな!」芽以ちゃんは、自分に降り掛かる火の粉を払うのに懸命である。
「でもな。中井さんはいつ馘になるか分かんない只の社員だ。馘んなって金が欲しくなったらどうすると思う?」
「衝撃の告白?」
「そうさ。危ないもんだ。おれが本当に秘密でおまんこ出来るのは、芽以、お前しかいないんだ」と優希君。
「げーっ!」芽以ちゃんが身を固くする。「あたし、まだセックスしたくもないし、ましてお兄ちゃんとなんて…」

「おれたち、家やホテルを出ればカメラや記者や追っかけの目に曝されてる」と優希君。「行動の自由なんてないし、サングラスかけてお忍びで女の子を引っ掛ける歳でもない」
「まだ結婚する歳でもないしね」と芽以ちゃん。
「そうだよ。だけど、おれおまんこしたいんだ。やらしてくれよ!」と優希君。
「やーよ。あたし、お兄ちゃんとセックスしたりしたら、清純派の詩なんか書けなくなるもん」
「大人の詩を書けばいいじゃんか?『シン・ティ』だって大人の歌だぜ?」と優希君。
「んー、そうかも知んないけど、大人の歌作るために、何もお兄ちゃんとセックスする必要ないわ」と芽以ちゃん。
「くそ!どうしても駄目か?」
「駄目!お断り」芽以ちゃんがにべもなく云った。

二人の間はしばらくぎすぎすしたが、舞台やTVで仏頂面も出来ない。外面はあくまでも仲のいい双子の兄妹でなくてはならなかった。

沖縄での写真撮影があった。兄妹二人が浜辺でウクレレを演奏して見せたり、泳いだりして見せる。二人一緒の写真のほかに一人ずつの写真も撮られた。白いビキニを着た芽以ちゃんがポーズをとりながらふと見ると、兄が自分の身体を上から下まで舐めるように見ていた。芽以ちゃんは赤くなった。これまでは互いに空気のような間柄だったのに、兄は自分を女として見始めたのだ。芽以ちゃんにはそれがウザったかった。(やめてよーっ!)と叫びたかった。

その夜、「とんとん」と、ホテルの芽以ちゃんの部屋のドアがノックされた。
「だーれ?」と芽以ちゃん。
「おれだ」と優希君の声。
パジャマ姿の芽以ちゃんがドアを開ける。お座なりにシャツとズボンは着けているが、かなりだらけた格好の優希君が入って来た。
「駄目か?」と優希君。
「駄目。悪いけど」と芽以ちゃん。
「わかった。こういうのはどうだ?おまんこはしない。舐めるだけ」
「なにーっ?」芽以ちゃんがたまげる。「駄目ーっ。却下」
「じゃ、おまんこ見るだけ」優希君が譲歩する。
「ノー。ネバー」と芽以ちゃん。
「じゃ、キスしながらお触りするだけ」優希君がどんどん譲歩する。何でもいいから初体験したいのだ。
「さよーなら」芽以ちゃんが拒絶する。
「クソ」優希君がくるりと背を向けて出て行った。

札幌公演の夜。「とんとん」と、ホテルの芽以ちゃんの部屋のドアがノックされた。
「はい?」と芽以ちゃん。
「おれだ」と優希君の声。
ネグリジェ姿の芽以ちゃんがドアを開ける。Tシャツに半ズボンの優希君が立っていた。
「頼むよ」と優希君。
「おやすみ」芽以ちゃんがバタンとドアを閉めた。

大阪公演の夜。「とんとん」と、ホテルの芽以ちゃんの部屋のドアがノックされた。
「だーれ?」と芽以ちゃん。
「おれだ」と優希君の声。
「おやすみ」と芽以ちゃんの声。
ドアは開かなかった。

博多公演の夜。ホテルの芽以ちゃんの部屋のドアは叩かれなかった。芽以ちゃんは心配になった。
「とんとん」と、優希君の部屋のドアがノックされた。
「はい?」と優希君の声。
「お兄ちゃん?あたし」と芽以ちゃん。
「おお。一寸待て!」優希君が慌てたような声で云い、ややあってドアを開けた。「何だ?」
「ううん。どうしたのかと思って。気分でも悪いの?」芽以ちゃんがドアを少し開けたままで、身体を滑り込ませる。デスクの上にiPadがあったが、スクリーン・セーバーになっていた。
「んなことない。快調そのもの。どして?」とパジャマ姿の優希君。
「だって…。いつも来るのに来ないから…」と芽以ちゃん。
「頼んでも駄目なんだろ?無駄なことしても仕方ねーだろ」と優希君。
「お兄ちゃん、怒ってる?」
「怒れないだろ?」と優希君。「おれの身体じゃねーんだ。お前の身体だからな。お前がその気になんなきゃ始まらねえってことが、よく分かったよ」
「あたしをその気にさせるの?」と芽以ちゃん。
「いや。お前、その気になんねーんだろ?特に、おれとじゃ」
「お兄ちゃん、怒ってる!」芽以ちゃんが目に涙を浮かべる。
「怒ってねーって!」優希君が笑って見せるが、ちょっと空々しい。
その時、芽以ちゃんは兄のパジャマのズボンの前が突っ張っているのに気づいた。兄はペニスを勃起させている。iPadでよからぬ写真かビデオを見て、自分で自分を慰めていたのだ!
「お休み」芽以ちゃんが顔を赤らめ、慌てて出て行った。

「お父さん?」博多から帰ってからのある日、芽以ちゃんが思い余ってお父さん(40歳)に相談した。「男の性欲って抑えられないほど凄いもんなの?」
「な、何だ、出し抜けに!」お父さんがうろたえた。「お父さんは抑えられるけどね」
「ううん。お父さんの世代じゃなくて、あたしぐらいの世代の話」
「優希のことか?」
「ううん、一般論として知っておきたいの。教えて?」芽以ちゃんがターゲットをぼかす。
「思春期か。そうだな。思春期は性欲ってよりも、好奇心の方が勝っていると思うがな」とお父さん。
「どういうこと?」
「女の身体への関心だ。おまんこってどうなってるのか知りたい、見たい、触りたい…という願望だ」
「ふーん?」男の珍々なんか見たくない芽以ちゃんには理解出来ない。「好奇心だったら、割れ目ちゃん見せて『分かった?こういうもんよ。じゃお仕舞い』で済むのかしら?」
「ペニスをおまんこに突っ込んでみたいというのも好奇心のうちだ。どんな快感が得られるのか、女の身体に射精するってどういうものなのか?だから、当然おまんこしたくなる」
「なーんだ。じゃ、やっぱり見るだけじゃ済まないのね」
「一度、全てを経験するまでは好奇心さ」とお父さん。「経験して、その気持ちよさを知ると、もう一回やりたい、機会さえあれば何度でもやりたいと思うようになる。そうなると、それは性欲ってことになるだろうな」

「お兄ちゃんに好奇心が芽生えたみたいなの」芽以ちゃんは思い切って云った。
「なに?どういうことだ?」お父さんが訝る。
「あたしとおまんこしたいって…」
「あの野郎、妹にちょっかい出したのか!太え野郎だ!」お父さんが息巻く。
「怒らないで、お父さん!あたし、まだ何もされてないんだから」と芽以ちゃん。
「お前、去年からもう生理あるんだろ。妊娠でもさせられたらエラいことだぞ。それも実の兄に」
「あたし、嫌だって云って拒否してるからだいじょぶ」
「そうか。しかし、あいつがファンの娘に強姦でもしたらおおごとだ。『ジュモウ』のイメージ・ダウンで、コンサートもTV出演もキャンセルされちまう」お父さんが青ざめる。
「レイプじゃなくても、セックスしたファンがTVや週刊誌に暴露する恐れもあるって、お兄ちゃん、ちゃんと分かってる」と芽以ちゃん。
「ふむ。そんならいい」お父さんが安堵する。
「マネージャーともやらないって」
「おお、それは大事なことだ。プロダクションに弱みを握られたら契約更改で不利になるからな」とお父さん。「しかし、優希の性欲は不発弾みたいなもんだな。いつ爆発するか分からん。恐ろしい」

「あたし、『ジュモウ』ずっと続けたい」と芽以ちゃん。「『ジュモウ』はあたしの青春だから…」芽以ちゃんの目が潤む。
「しかし、お前たちもいつまでも子供じゃいられない。これが最初の試練で、まだまだ一杯出て来るだろう」とお父さん。
「お父さん?あたし、お兄ちゃんに許すべきだと思う?」芽以ちゃんが真剣な顔で云った。
「『ジュモウ』を続けるために?馬鹿な!お前はずっと清純でなくちゃいかんよ」お父さんが諌める。
「じゃ、不発弾をどう処理するの?何か、名案ある?」と芽以ちゃん。
「母さん(36歳)をまたステージ・ママに復帰させるしかないか…」お父さんが苦しそうに云う。
「え?お兄ちゃんを監視するため?」芽以ちゃんが驚く。
「違う。母さんに優希の性欲を処理させるために」お父さんが言葉を絞り出すように云った。
「えーっ!何それーっ!母子で近親…」と芽以ちゃんが云いかける。
「馬鹿!大声出すな!」お父さんが芽以ちゃんの口を塞いだ。「秘密を守れる女は、お前と母さんしかいない。お前は処女だ、母さんは違う」
「駄目よ、そんな!お母さんと兄ちゃんがセックスするなんて!想像したくもない!」芽以ちゃんが吐き出すように云った。
「おれたち夫婦は倦怠期で、あまりセックスしてないんだ」とお父さん。「母さんは欲求不満の筈だ。優希とやれれば、母さんも喜ぶだろ」
「嫌!お兄ちゃんとセックスするんなら、お母さんじゃない!あたしよ!」芽以ちゃんが云い放った。
「おいっ!」お父さんがぶったまげて叫んだ。

グアムでの写真撮影の夜、芽以ちゃんはホテルの優希君の部屋に乗り込んで行った。
「何だよ、そんなおっかねえ顔して。立ってねえで座れよ」と優希君。
「立ってる方がいいの。聞きたいことがあるの」と芽以ちゃん。
「ふーん?云ってみろよ」
「お兄ちゃんに恋人が出来たとする。いい?」
「いつのことやら」と優希君。
「お兄ちゃん、その人に『おまんこさしてくれ』なんて、云う?」と芽以ちゃん。
「バッカ。冗談じゃねえ。張ったおされちゃうよ」と優希君。
「でしょうね。だったら、どうやって目的を達成するの?」芽以ちゃんが追及する。
「さあ?プレゼント上げたり、甘い言葉を囁いたりしてロマンチックな気分を作り出して、じわじわとその気にさせんだろうな」
「どうして、あたしにもそうしないの?」と芽以ちゃん。
「え?」優希君が呆けたような顔をする。
「あたしと恋人とどう違うの?」
「?」優希君には呑み込めない。
「あたし、売春婦でも慰安婦でもないの。あたしとやりたいんだったら、恋人みたいに扱ってくれるべきじゃない?」芽以ちゃんが思い切って云った。
「お前?」優希君が驚く。
「あたし、考え変えたの」と芽以ちゃん。「じわじわとその気にさせてくれたら、ひょっとしてひょっとするかも…」
「お前!」優希君の顔が明るくなった。

その頃、東京ではお父さんがお母さん(36歳)に、優希君の性の懊悩について話していた。子供たちが重大な岐路に立っているわけだから、お母さんをつんぼ桟敷に置いておくわけには行かなかったのだ。
「んまあっ!」話を聞いたお母さんは愕然とした。いつの間にか自分の生んだ子供たちが大人になり、性の世界に突入しようとしている。想像もしていなかったことだ。お母さんも『ジュモウ』の存続を望んでいた。お金だけでなく(それも大事だったが)、子供たちの音楽の才能を開花させてやりたかったからだ。そのためには、優希君がセックス・スキャンダルの種を蒔いたりしてはならなかった。しかし、兄妹相姦を許していいものだろうか?
「芽以はそうするしかないと思ってるようだ」とお父さん。
「そんな!芽以が可哀想!」とお母さん。
「おれは二十歳になるまで童貞だった。あいつだって我慢出来る筈なんだが…」
「もうそんな時代じゃないんですよ。どんどん初交年齢が下がっていて、16から14ぐらいになってるっての読んだことあるわ」
「初体験した友達が自慢すれば、おれも…って気になり、みんなやり出すわけか」とお父さん。「いい時代だな、クソ!」
「あなた?あたしが優希の歯止めになるっての、どう?」とお母さん。
「おれもそれを考えた。芽以を優希の慰安婦にするのは哀れだからな」
「あなたさえよければ、あたしはいいわよ?」
「だが、駄目なんだ。芽以はキミと優希がセックスするのは嫌だって云うんだ。だったら自分がやるって」とお父さん。
「えーっ?嫉妬かしら?独占欲?」
「さあ?そういう運命だと思ってるみたいだったな」
「んまあ!」

お母さんは、自分の双子の子供たちのセックスを思い描いた。童貞と処女のセックス。それは稚拙で、相手に奉仕する考えなど全くない、性器の結合だけの性交ではないだろうか?射精によって息子は満足感を得られるとしても、娘は何も感じないで終わってしまうのではないか。そんな義理まんは不幸である。お母さんは子供たちのセックスに介入することを決意した。

ある夜遅く、お母さんはトレパンにTシャツで優希君の部屋を訪れた。ジョギングする時間でもないのに、それはいささか妙なスタイルだった。
「なに、お母さん?」優希君が怪訝な顔でお母さんを迎え入れた。
「お前、芽以とセックスしたいんだって?」とお母さん。
「えーっ!」ガターン!と椅子を倒して優希君が立ち上がった。ショックだった。(どうして?なぜ、知られたんだ?)「あいつ、喋ったな!?」
「もう秘密でも何でもないの。家中、みんな知ってるんだから」とお母さん。
優希君はがっくりして、椅子を起こして腰掛けた。優希君はさんざ叱られることを予期して、首をうなだれていた。
「お前の年齢なら、性に目覚めるのはきわめて自然」とお母さん。「でも、家中を巻き添えにするってのはどうかと思うけど」
「…」優希君はママの話の行く先が見えないので黙っている。しかし、凄い剣幕で怒られることはなさそうなので、ホッとしている。
お母さんは黙って優希君のベッドに上がると、仰向けに横たわった。「おいで」とお母さん。
「えっ?お母さん、やらしてくれんの?」優希君が目を丸くした。36歳とはいえ、お母さんは美人でいい体型を保っていたし、元歌手のオーラも備えていた。お母さんとセックス出来れば最高だった。
「お前たち、ボイス・トレーナーについてるでしょ?お母さんはお前のセックス・トレーナー」
「じゃ、やらしてくれるんだね?」優希君が興奮して、ベッドに上がる。

「違うのよ。興奮しないで!」お母さんが両手を突き出して、自分にのしかかって来る息子を防ぐ。
「やろう、お母さん!」優希君はお母さんの手を払いのけて、お母さんを抱きすくめようとする。
バチーン!お母さんが息子の頬にびんたを食らわせた。
「痛(い)ってーっ!」優希君が頬を押さえて、動きを止めた。
「優希。よく聞きな」とお母さん。「お前とお母さんがセックスしたら、『ジュモウ』は解散よ?」
「えーっ?」優希君がショックを受ける。
「芽以がそう云ったんだって。お前とお母さんはやっちゃいけないって」
「ほんとーっ?」優希君がたまげる。
「お前とやるのは芽以だって」とお母さん。
「信じらんない…」と優希君。
「だから、お母さんは形を教えるだけ。セックスは出来ないの」
「ふーん?」優希君は何が何やらよく分からない。

「さ、お前が首尾よく芽以を口説き落としたとして、どんな風にやるのか見せなさい」とお母さん。
「ぼく、おまんこ見たい」と優希君。
「駄目よ、そんな!」お母さんが呆れる。「まだ興奮させられてもいないのに、恥ずかしいとこ見せる女なんかいるもんですか」
「そうなの?」
「そうよ。もうやめられないとこまで興奮したら仕方なく見せるけど、それまではアンタッチャブル」
「じゃ、興奮させるんだね?キスしたりして?」と優希君。
「キスもいいけど、女の身体はどこもかしこも性感帯なの。おっぱいとか股の周辺を触りまくるのよ」
「芽以はまだおっぱい膨らんでないよ?」と優希君。
「乳首を弄くったり舐めたりするのよ。やってみなさい」とお母さん。
優希君がお母さんの胸をよく見ると、Tシャツが乳首の形に絞り上げられ糸で縛られていた。「これーっ?本物じゃ駄目なの?」
「駄目。お母さん、興奮しちゃうから」
「興奮すれば?」
「解散よ?」
「ちぇっ」

優希君は馬鹿馬鹿しいと思ったが、お母さんのTシャツに作られたおしゃぶりみたいな凸起を舐めたり、弾いたりした。
「乳首の天辺を舌でちろちろしたり、軽く噛むのもいいわ」とお母さん。
そのうち、優希君は顔を押し付けてお母さんの乳房の柔らかさを感じ取るようにした。
「あ、お前、ズルしてる!」とお母さん。
「このぐらい許してよ」優希君はお母さんの乳房を揉み上げるようにした。
「お触りのお勉強はもういいわ。とにかく、あっちこっち触るの。いい?」
「あーん、もっとお触り…」優希君がどさくさに紛れてお母さんの両方のおっぱいを揉む。
「駄目っ!じゃ、性交の方法」お母さんは色んな体位を実演して見せ、その時の性器の結合深度や角度について説明し、性交しながらでもクリトリスを刺激することの重要性を強調した。「じゃ、やってみて?」
「こうかな?」優希君がトレパンを穿いたお母さんの股に、ジーンズの中で膨らんでいるペニスを押し付ける。
「そして、腰を廻したり押し付けたりするの」
優希君が云われた通り腰をぐりぐり廻す。
「お、オッケー」お母さんが胸をどきどきさせて吃ってしまう。いくら着衣のままとは云え、息子との近親相姦のシミュレーションに興奮してしまったのだ。「いい?ピストン運動は最後までとっとくこと。でないと早漏れしちゃうから」
「わかった。お母さん?リクエスト」と優希君。
「なーに?」
「おまんこ見せてよ。ぼく、どこへ入れていいかも分かんないんだから」
「んまあ!それで、よくも芽以にちょっかい出せたもんね」お母さんが皮肉る。

「お願い!」優希君が両手を合わせる。
「分かったわ。ズボンとブリーフ脱いで、お前のペニス出しなさい」とお母さん。
「やったぜ!」優希君がほいほいと下半身裸になる。
お母さんはトレパンを脱がず、股の間で右掌を丸めて輪っかを作った。それを膣口の前に当てる。「これがおまんこ。入れなさい」
「えーっ?そんなーっ!」当てが外れて優希君はがっかりする。
「ついでだから云っとくけど…」お母さんが左の人差し指と中指でチョキの形を作り、それを右手の輪っかの上に乗せた。何やらキャッチャーの投手へのサインみたいだ。「この指の股がクリトリス。ここを刺激し続けること。いい?」
「はい」仕方なく、優希君はお母さんの手の輪っかにペニスを突っ込む。「こんな下の方なの?」
「そうよ。よかったわね、予行演習しといて」とお母さん。
優希君が腰を廻したり、押したりして、お母さんの指で出来たクリトリスを擦る。
「いいわ、とっても」お母さんが褒める。「お前、Gスポットって知ってる?」
「あ、知ってる。読んだことある」
「じゃ、お母さんのこの穴に指入れてみて?」
「えっと、この辺かな?」優希君がお母さんの手の輪っかに指を入れる。
「指を上に向けて、曲げなさい」とお母さん。
「こう?」
「そ、そこら辺」

「お母さん、ほんとにやろうよ。お母さんがやらせてくれれば、芽以とやんないでもいい」優希君がお母さんを誘惑する。
「駄目よ。芽以は、お前とお母さんがやっちゃいけないって云ってるんだから」お母さんが拒む。
「芽以に内緒で。ね?」優希君がお母さんにのしかかる。
「そういうことは必ずバレるもんなの。芽以も女の勘を持ってるからね。すぐ気づくわ」
「あーん、やりたーい!」優希君が駄々をこねる。
「聞き分けが悪いと金玉蹴るわよ?いいの?」お母さんが脅す。
「ぎょえーっ!」優希君が身を引く。
「じゃ、頑張ってね?」お母さんがベッドを下り、すたすたと出て行った。

セックス・トレーニングは受けたものの、優希君は芽以ちゃんをどう攻めていいか分からなかった。芽以ちゃんは別に催促がましいことは云わないが、こっちの出方を意識しているのは間違いない。「家中みんな知ってる」と云われた以上、お母さんばかりでなくお父さんも知っているわけだ。みんなが知らんぷりしつつ、自分の出方を窺っている。優希君は、何も出来ない自分が相当間抜けに思えて来た。妹にちょっかい出そうとしたりしなきゃよかった。後悔した。

優希君は妹・芽以ちゃんについて何も知らないことに気づいた。兄妹という互いに空気のような存在だから、ろくに顔も見ないで接して来たせいだ。新曲のリハーサルで議論する時に、ちらと相手の顔を見るぐらいだった。芽以ちゃんがどんな髪型をしているのか、どんな髪飾りをしているのか、どんなアクセサリーを着けているのか、空では何も思い出せない始末だった。これでは芽以ちゃんの好みも判らず、プレゼントも選べなくて当然である。優希君は妹を注視するようになった。まるで初めて出会った女性を見るように、芽以ちゃんの身なりや装飾品、一挙手一投足に注目した。妹は新鮮な驚くべき異性であることに気づかされた。

芽以ちゃんは兄の変化に気づいた。見られている。絶えず見られている。それは、いつかビキニ姿を舐めるように見られたのとは異なり、ウザい視線ではなかった。芽以ちゃんは、兄の、人間としての(あるいは女としての)自分への関心が嬉しかった。もちろん、ナルシシズムも満足させられた。

双子の兄妹の間柄が次第に変わり始めた。互いに相手を男の子、女の子と見るようになったのだ。芽以ちゃんは兄にどう見えるかを気にしながら髪型や服装、アクセサリーを選んだし、優希君も妹にかっこ良く見えるように髪型や服装に気を配った。それは恋人同士が取り合う態度と同じであった。二人は今や互いのために生きていた。性的テンションも高まって行った。優希君はプレゼントも買わず、甘い言葉も囁かずに芽以ちゃんの心を捉えてしまったのだ。

横浜公演の夜。
「とんとん」と、優希君の部屋のドアがノックされた。「何してんの、お兄ちゃん?」芽以ちゃんが白いTシャツにピンクのショートパンツ姿で入って来た。
「ん。曲を作ってんだ。…お前に捧げる曲」と優希君。
「えーっ?なに、それーっ!どんなの?」芽以ちゃんが興奮した。
「ステージで唄うかどうかは未知数だ。お前に聞いて貰えればそれでいい」
「もう出来たの?聞かせて?」芽以ちゃんが優希君の手を揺さぶる。そんな親しい態度はかつてないことだった。
「よし」優希君がiPadの作曲ソフトをカラオケ・モードにして囁くように唄い出した。それは一般的な恋歌の体裁を取っていたが、芽以ちゃんにだけ解る優希君の真情を詠み込んだ歌詞だった。妹のようなお前。ふと気づくとお前に恋していた。お前の心を捉えたい。しかし、自分には金も地位もなく、何も上げられない。上げられるのはこの心だけ…という思いを切々と歌い上げたものだった。
いつの間にか芽以ちゃんが優希君の手を握っていた。唄い終えた優希君は芽以ちゃんの目を見つめた。二人はじっと向かい合って立っていた。芽以ちゃんが兄の胸に飛び込み、兄は妹の身体を抱きしめた。二人は頬を寄せ合った。これほど二人が接近したのは物心ついてから初めてだった。
「素敵!恋人同士みたい!」芽以ちゃんが呟いた。顔を上げて、兄の顔を見つめ、濡れた舌を出して自分の唇を舐めた。
優希君は、妹の招待状を見逃さなかった。そっと妹にキスした。キスしながら、妹の背中や腕やお尻を撫で廻した。

目を閉じてキスを味わっていた芽以ちゃんがぱちんと目を開けた。「上げる、全部」芽以ちゃんが云った。
優希君はぎゅっと芽以ちゃんの身体を抱きしめ、そのまま抱き上げてベッドに運んで仰向けに寝せた。
「あたしが脱ぐ?お兄ちゃんが脱がす?」芽以ちゃんが聞いた。
「おれが脱がす。プレゼントの包装紙を開けるのはわくわくするもんだからな」優希君が裸になりながら云った。
「コンドーム要るよ?」と芽以ちゃん。
「何個?」優希君が聞いた。
「ぷっ!」と芽以ちゃんが吹き出した。




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