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29. あたしは3Dポルノ画家 パート1

雅美ちゃん(20歳)はショートヘアにくりくりした綺麗な目、厚めの唇、小柄だがむちむちボディの可愛い娘。雅美ちゃんは美術短大を出たら、すぐお金を稼ぐつもりだった。それは多くの若い娘のように、最新のブランドもののドレスを買うためでも海外旅行に行くためでもなかった。弟・雅夫君(16歳)を四年制大学にやるためであった。

雅美ちゃんのお母さん(40歳)は、夫に先立たれてから女手一つで二人の子供を育てて来た。お母さんはある小さな会社の事務員として働いていたものの、生活は楽ではなかった。雅美ちゃんを四年制の大学にやれなかったのは純粋にお金の問題だった。

絵心があった雅美ちゃんは、美術短大でコンピュータによる3Dアートの制作に熱中した。3Dと云っても、立体映画のことではなく3次元コンピュータ・グラフィックス(3DCG)のことである。現在、3DCGは映画に利用されて実写と組み合わされ、実写では不可能な映像を作り出すことに寄与している。さらに、アニメや宣伝素材、美術としてのグラフィック・アートにも使われ、時代の最先端を行くテクニックとなっている。雅美ちゃんは短大での勉強だけでなく、アルバイトで購入したラップトップに大容量ハードディスク、無料の3DCGソフトなどを駆使して自宅でも腕を磨いた。

雅美ちゃんの皮算用では、美術短大を卒業したらすぐ大手のプロダクションに雇われ、映画用のCG作成によって人並み以上のお給料を貰い、毎月その半分をお母さんが蓄えている雅夫君の大学入学資金に加えるつもりだった。しかし、その皮算用は完全に当てが外れた。どこも雅美ちゃんを雇ってくれないのだ。雅美ちゃんの技倆とセンスを買ってくれるところがない。雅美ちゃんは焦った。一ヶ月たりと無収入ではいられない。弟のために稼がなくてはならないのだから。

新聞やインターネットの求人広告を血眼で探しまくった雅美ちゃんが、唯一「見込みあるかも?」と思った求人広告があった。それは3Dによるエロチックなイラストや絵物語を有料会員制のホームページで提供する小さな会社であった。雅美ちゃんは会員になるつもりはないので、そのサイトの中には入らなかったが、無料サンプル画像を見る限りかなり過激な内容だった。処女の雅美ちゃんは、裸体の男女の絡み合いに顔を赤らめ、正視出来ない思いをした。しかし、とりあえず稼ぎながら3Dアートの修行を続けるには、こういうものに手を染めなくてはならないのだと思って、雅美ちゃんは歯を食いしばってエロ絵画を研究した。

その会社に採用されるかどうかは、三つの課題に応じた3Dアートの出来如何にかかっていた。1) 男女の全身裸像、2) 男女の性器のクローズアップ、3) 性交する男女の全身像…が課題で、それらを締め切り日までにCDデータ・ディスクに納めて送付し、会社からの呼び出しを待つ。雅美ちゃんは自信満々だった。その会社のサンプルを作ったアーティストたちの3Dは、センスもなく品もなく、リアルさも不足だった。美術短大を出た雅美ちゃんの目にはトーシロの域にしか見えない作品ばかりだったからだ。

「やったーっ!」雅美ちゃんが飛び上がって喜んだ。プロダクションから「面接に来られたし」というメールが届いたのだ。つまり、テクニックは認められたということだ。面接に通ればプロダクションから仕事が貰え、ギャラを得ることが可能になる。

「え?何かの間違いじゃない?うちはあんたにメールした覚えはないけど?」面接に赴いた雅美ちゃんに、プロダクションの事務員らしい30代の若い男が云った。やや長めの髪、ハンサムだが鋭い目の男である。
「えーっ!うっそーっ!」雅美ちゃんが思わず口走った。「あたし、メール貰った本田雅美ですけどー?」
「本田、雅美?」男が復唱した。「えーっ?」今度は男が驚いた。「あんた、女じゃないか!」
「女ですよ?女じゃいけないんですかあ?」雅美ちゃんが食ってかかった。
「いけないね。あんた、うちの売り物はポルノだぜ?女にポルノは無理だろうが」男が云った。「男にも雅美っているからさ、てっきり男だと思ったんだ。手違いは謝る。悪いけど帰ってくれ」
「帰りません!」雅美ちゃんが必死で云った。「女にだって出来ますっ!仕事させて下さい!」
「無理だよ。諦めな」男は素っ気なく云って、バイバイというように手を振った。
「そんなっ!社長さんに会わせて下さいっ!あなたじゃなく、社長さんと話しますっ!」雅美ちゃんがテコでも動かないという表情で叫んだ。
「おれが社長の本郷 猛だが、何か?」男が雅美ちゃんを睨みつけながら、机の上に重ねてあった名刺を一枚滑らせて寄越した。
「え?」雅美ちゃんがぽかんとした。「しゃ、社長さんでした?ご、ごめんなさい…」一介の事務員かと思ったが、社長だったのか。雅美ちゃんが顔を赤くして恐縮した。減点1。

「これ、電車賃だ」本郷社長が財布から千円札を抜き出し、雅美ちゃんの前に投げ出す。
「要りません、こんな端金(はしたがね)。仕事を下さい!」雅美ちゃんが云う。
「は、端金?」本郷社長が唖然とする。「云うねえ、キミ!」社長は雅美ちゃんを見直す。
「あたし、お金を稼ぎたいんです!」雅美ちゃんは社長に弟の進学資金の話をした。
「ほう?」社長の強硬な壁が揺らぎ始めた。
「お願いです。一本だけでもテスト的に使って下さい!社長さんの気に入らなければ、ギャラ無しでもいいですから!」
「ふーん?」雅美ちゃんの真剣さと熱心さに、社長もいささか気圧される。
「お願いしますっ!」雅美ちゃんが深々と頭を下げた。

「よしっ!」本郷社長が決断した。「あくまでもあんたが云った前提でテスト採用しよう。あんたの作品が気に入らなければギャラは無し。即刻クビだ。いいね?」
「ありがとうございますっ!」雅美ちゃんが大喜びする。
「断っておくがおれの審査は厳しいぞ。おれの条件に合致していなければ洟(はな)も引っ掛けない」と社長。
「どういう条件ですか?」雅美ちゃんが恐る恐る聞く。

「ポルノ産業というのは、男の満たされない性欲をヴァーチャルに叶えてやることで金を稼ぐビジネスだ」と本郷社長。「貧乳の女房を持っている男に巨乳の女とセックスする幻想を与え、ブスな女房を持つ男に美女とねちょりんこんする夢を与える。しかし、こういった類いのものはもうやり尽くされ、出尽くした。おれたちは新たな分野を開拓しなくてはならない」
「と、云うと?」雅美ちゃんには見当もつかない。
「未成年とのセックスだ。それも下は6歳ぐらいから14歳ぐらいの女の子とのセックス」と社長。
「えーっ?」雅美ちゃんが驚く。
「若いキミには解らんだろうが、男も女も中年を過ぎると若い相手が欲しくなる。それもまだ性的に未成熟な少年や少女だ…」
「へー?」
「そんな低年齢の子供とセックスしたら児童の性的虐待とやらで刑務所行きだが、今やそういう子供たちのヌード写真やセックス・シーンの写真をコンピュータに入れているだけでも逮捕されてしまう」
「へー?」雅美ちゃんの知らないことばかりだ。
「そこで3DCGの登場というわけだ」社長が続ける。「3DCGは写真ではないから、コンピュータに入れていても犯罪ではない。しかし3DCGは写真のようにリアルだから、それを見て男たちは興奮し、あたかも自分たちがロリータとセックスしているような気になれる。男の夢の一つが叶うって寸法だ。だから、どうしても3DCGでなきゃならん。日本のグラフィック・ポルノは漫画チックだったりアニメ風の二次元ものが多い。そういうものは、アメリカの3DCGに較べたら便所の落書きみたいなもんだ。大人の鑑賞には耐えない」
「はあ…」

「未成年とのセックスが違法とされているのと同様、近親相姦もタブーとされている」と社長。「近親相姦自体は違法じゃないんだが、相手が未成年だと違法になる。つまり、相手が他人だろうが近親だろうが、未成年とのセックスの道は閉ざされてるってわけだ。法律で禁じられているということは、逆に云えば禁じなければみんながやりたがるということでもある。スピード違反、駐車違反、飲酒運転などと同じだな。禁じられててもやる奴はいるが、多くの人間は刑罰が怖いから欲求を抑えて我慢する。当社(うち)は3DCGでその欲求を叶えてやり、金もがっぽがっぽ儲けようと算段してるってわけ」
「てことは…?」と雅美ちゃん。
「つまり、未成年の娘と父、未成年の息子と母親、未成年の妹と兄、未成年の弟と姉…などという組み合わせだ」社長が説明した。「これによって、禁じられている二つのアブノーマルな要素、近親相姦と未成年とのセックスへの欲求が同時に満足させられる。どうだい?」
「はあ…」雅美ちゃんが考えてもいなかった世界である。

「ところで、キミはまだ処女だろ?」社長が突如聞いた。
「えっ?」雅美ちゃんは、教室でぼけっとしてる最中に突然指された生徒のようにパニックに陥った。「な、なんですって?」
「キミの表情を見ているとまるで未経験の処女のように思えてね。どうなんだい?」と社長。
「そ、そんなプライベートな質問にお答えする義務はありません。ノ、ノーコメント!」雅美ちゃんが必死で云う。
「そこの長椅子でおれがセックスを教えてやってもいい。どうかね?」社長が身を乗り出す。
「け、結構です!そんな必要ありません!」雅美ちゃんが逃げ腰になる。
「そう怯えなさんな。キミを犯そうなんて思ってないから」社長がにやっと笑う。
「本題に戻って下さい!」雅美ちゃんが促す。
「何だっけ?あ、おれの条件だったな。そうだそうだ」

本郷社長は、机の上のラップトップ・コンピュータを操作し、あるフォルダを開いてから画面を雅美ちゃんの方に向けた。「ファイルはどれもアメリカの3DCGによる近親相姦ものだ。上から順に見てくれ。一つ始まる毎にタイトルを云ってくれ」と社長が云いながら、机の上に白い紙を置き、何か書き出す。
「えっと、最初は'Beth and Son'(ベスと息子)って題です」ファイルを開いた雅美ちゃんが云う。
「そいつをどう思う?」社長が紙に何か書きながら問いかける。
「ひどいですね!まるで3Dモデル作成の学習教材みたい!」と雅美ちゃん。このCGは顔や肌が瀬戸物みたいにつるつるだし、目もどこを見ているのか分らないほど虚ろであった。
「そう!無表情で、博多人形もいいとこだ。人間の血が通ってない!そういうのは落第っ!次!」と云いながら、社長はさらさらとペンを滑らす。

「次は'Daddy and Daughter'(父と娘)で、んまあっ、六歳ぐらいの女の子とパパが…!」雅美ちゃんが目を丸くして驚く。訳も分らない小さな娘を裸にし、父親がフェラチオさせたり、クンニしたり、挙げ句の果ては四つん這いにした娘を尻の方から犯している。 「それをどう思う?内容じゃなく、テクニックだ」社長が相変わらず何か書きながら聞く。
「凄く暗い画面ですね。肌色も紫っぽいし」
「あんたも学校で習ったろうが、3Dソフトそれぞれに癖がある。こういうローキーでしか描けないものや…」
「ローキーって何ですか?」雅美ちゃんが口を挟む。
「あ、映画から来てる用語だ。場面の基本的明るさを決定する照明をキー・ライトと呼ぶ」社長が解説する。「それが明るめならハイキー、暗めならローキーさ」
「なるほど。これはローキー系のソフトですね」
「いいかい?タブーを描くからって暗めにしちゃいかん。おれは陰鬱なのは嫌いだ。どんなセックスでも明るく描くこと」社長が力説する。
「こんな、幼い子供とのセックスもですかあ?」雅美ちゃんが頭を傾げる。
「そう!3DCGは幻想の世界なんだ。死んだら行くあの世が、美しく平和な世界であると思いたいのと同じことだよ、幻想さ」社長がうがったことを云う。

「次は'Home Sex'(ホーム・セックス)です。これも父親と娘ですけど、あらあ?」雅美ちゃんが眉を顰める。
「何か変かね?」まだ紙に書きなぐりながら、顔も上げずに社長が聞く。
「これっておかしいです。こんなとこに、あのう、男性のペニスが入るわけがありません」そのCGでは、娘のクリトリスの直下に膣口があるように描かれていた。
「だからそのCGは童貞の男が描いたと解るわけだ。逆に処女のキミは男のペニスや陰嚢の形を間違えるかも知れんぞ?」社長が皮肉る。
「…」雅美ちゃんが顔を赤くする。
「その近辺に'Home Sex Education'(家庭内性教育)ってのない?」と社長。
「あります。開きます」と雅美ちゃん。
「父親が娘とセックスしてる局部のクローズアップの場面を探してみてくれ」
「はい、いま見てます」
「問題は父親の陰嚢だ。金玉の袋だな。男のペニスが勃起すると、陰嚢は自然に縮んでペニスの根元に近づく。勃起していながらそんな風にだらんと下がってるわけはないんだ」と社長。
「んまあ!そんな間違いを描いてるわけですね」雅美ちゃんは冷や汗をかいた。そんなこと、自分も知らなかった。
「だが、その作品に良い点もないではない。父親が立ってる娘の後ろからセックスする時、娘が台に乗ってる絵があるだろ?」
「あ、これですね?大きな壷みたいなものを伏せて乗ってます」
「それが娘の幼さを象徴している。おっぱいの小ささや体格だけでなく、その踏み台で年齢差を強調しているわけだ」社長が褒める。「ロリコンの男性が喜ぶ趣向だ」

「あのー、よく分んないんですけど…」雅美ちゃんがおずおずと切り出す。「日本では陰毛まではよくても、お珍々や割れ目を表現すると猥褻罪になるんじゃないんですかあ?」
「日本国内のISP(インターネット・サービス・プロバイダ)にデータを置いて公開すれば、確かに違法だ。しかし、うちのデータは全部アメリカのレンタル・サーバーにアップするんでね。日本の官憲は何も文句は云えんのだよ。安心したまえ」
「あの、あたしが逮捕されることはないですね?保証してくれます?」雅美ちゃんは必死である。
「あんたが勝手なセールスをせず、公開方法はおれに任せといてくれれば絶対大丈夫。何てったっておれ自身が捕まりたくないからね」社長が太鼓判を押した。

「次のは'Mike and Pat'(マイクとパット)ですけど、何かこのお父さんは気違いみたい。娘も可愛くないし」と雅美ちゃん。
「いいかね?性器だの愛液、精液なんかはリアルな方がいい」と社長。「しかし、近親相姦だからって、人物を変質者や気違いみたいにしちゃいかん。父親はハンサム、母親は色っぽい美人であってほしい。何せ幻想なんだからね。実写なら十人並み以下の顔の男女が出て来るのも仕方がないが、CGなら何だって可能なんだから」

「そういえば、こないだエマ・ワトソンとか、アンジェリーナ・ジョリーの顔に似せた3DCGポルノ見ました」と雅美ちゃん。
「だろ?おれの好みで云えば小六の頃の鎮西寿々歌がいいねえ。彼女が38歳ぐらいの父親とセックスする」
「それって明るいセックスかもですね」雅美ちゃんが社長にゴマをする。
「お、キミ分って来たね」社長が嬉しそうな顔をする。
「ところで、社長さん、ずっと何書いてんですかあ?」雅美ちゃんが気になっていたことを聞く。
「あ、これ、キミの仕事の筋書き」社長が書き終わった紙を雅美ちゃんに渡した。「当社(うち)は海外市場をターゲットにしているんで、台詞はない。翻訳する手間も省けるし。台詞がなくてもストーリーが解るようにするのが、キミの腕だ。いいね?」
「ハイっ!」雅美ちゃんが答えた。

帰りの電車の中で社長がくれた筋書きを読んだ雅美ちゃんはぶったまげた。‘Boy & His Little Sister'(少年とその妹)?えーっ?兄妹の近親相姦?)雅美ちゃんは弟の雅夫君との近親相姦を想像しようとしたが出来なかった。兄妹のセックスなんてあり得ないことに思えるからだ。束の間でも弟とのセックスについて考えた雅美ちゃんは、電車の中で一人顔を赤くした。

帰宅した雅美ちゃんは早速仕事に取りかかった。しかし、問題があった。様々な角度から見たペニスの写真が必要だったが、頼みの綱のGoogleの日本語による画像検索はろくな画像を見せてくれず、"penis"と英語で検索してもさしたる成果は挙げられなかった。気持ちの悪くなるような異常なペニスや解剖写真ばかりで、健康で精気に満ち、女性性器を求めて猛り立つようなペニスの写真は皆無であった。仕方なく、雅美ちゃんはアメリカのポルノ・サイトを渡り歩き、そういう理想的なペニスの画像を探し廻った。収穫は少なかった。いくつか見事なペニスには出会えたものの、絶望的なほどアングルが限られていた。これを参考にするだけでは3DCGの構図も限られてしまう。雅美ちゃんは困惑した。

とんとん!と雅美ちゃんが弟・雅夫君の部屋のドアを叩いた。
「はい?」と雅夫君。雅夫君はスポーツ系なので16歳ながら姉さんより背が高く、がっしりした身体をしている。髪も短めに刈っており、その精悍な顔はどちらかと云えば男前と云える。
「雅夫?」部屋に入った雅美ちゃんは弟の目をひたと見つめて云った。「お前のお珍々見せて?」
「?」雅夫君は耳をほじくった。姉さんの言葉とは信じられなかったからだ。「な、な、な?」雅夫君は吃ってしまった。
「お仕事に必要なの。お願い、見せて?」と雅美ちゃん。
「そんなあ!やだ、恥ずかしい!」雅夫君が身体を硬直させて姉を睨む。
「恥ずかしいなんて云ってる場合じゃないの!お姉ちゃんのプロとしての仕事が成立するかどうかって大問題なんだから」雅美ちゃんが必死で云う。
「それでもやだ!」雅夫君は頑なに拒む。
雅美ちゃんは、よっぽど(お前の大学進学のためなんだよ!)と口に出したかったが、それだと親切の押し売りになってしまうので必死で思い留まった。

「ね?どうしたら見せてくれる?あなたしかいないのよ、頼めるのは。お小遣い上げればいい?」雅美ちゃんが買収を図る。
「…」雅夫君は黙っている。
「ね?」雅美ちゃんが催促する。
「あのさ」雅夫君が口を開いた。
「なーに?」雅美ちゃんが弟の色よい返事を期待する。
「お姉ちゃんも見せてくれれば、いい」
「何を?」雅美ちゃんがぽかんとする。
「おまんこ」と雅夫君。
「ば、馬鹿な!何を云うのっ?駄目よっ!」雅美ちゃんが激昂した。弟に女の秘部を見せるなんて、とんでもないことだ。
「どうして駄目なの?」雅夫君が問う。
「だって、恥ずかしいからよっ!」雅美ちゃんが顔を赤くして怒鳴る。
「ボクも恥ずかしい。お姉ちゃんも恥ずかしい。相子じゃない?お互いに見せるか見せないか、どっちかだ」雅夫君が姉の目をじっと見つめる。
「じょ、冗談じゃない。もう頼まないっ!」雅美ちゃんはどすどすと弟の部屋を出、バターンっ!とドアを閉めて自室に戻った。

机に突っ伏して、雅美ちゃんは考えた。弟の云うことはもっともだった。弟も五歳や六歳の子供ではないのだ。成長した弟に陰部を見せろと強制するのはセクシャル・ハラスメントと云われても仕方がない。かといって、弟に自分の女性器を見せるなどというのは言語道断である。弟が姉に対して欲情するものかどうか知らないが、ひょっとして弟に犯されでもしたら、まさに本郷社長が説明したようなポルノの筋書きそっくりになってしまう。社長のポルノは異常な関係を描いた社会的には稀なケースと考えたいが、自分の身に例外の運命が訪れないとは限らないのだ。弟に頼れないとすれば、どうしたらよいのか?やっと社長を説得したというのに、この絶好のチャンスを見送らなければならないのか?




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