32. 伯父・姪の知られざる生活伯父さん篇・1 16年前、妻の妹夫婦が事故で亡くなった時、私ら夫婦は彼らの忘れ形見である由実(当時五歳)を引き取って育てる決意をした。私と妻には子供がなかったので、ちょうどいい具合だった。由実をうちの養子にするという案もあったのだが、養子にする手続きはいつでも出来ることと、われわれが勝手に由実の実家の姓を途絶えさせていいものかどうか疑問だったため、それは由実が成人してからの意志に待つことにし、由実がわれわれを伯父さん、伯母さんと呼ぶままにまかせて由実を育てた。 由実は幼い頃は丸顔だったのだが、成長するにつれて顔が上下に伸び、まるで映画女優の少女時代のように綺麗な顔になった。切れ長の目、長いまつげ、すらっとした鼻、ふっくらした頬、ほどよく厚い唇。それらが瓜実(うりざね)の輪郭に完璧なバランスで収まっている。由実は私ども夫婦の自慢の娘となった。中学、高校でスポーツに熱中した由実は、素晴らしい体格の持ち主にもなった。背が伸び、適度に膨らんだ胸、大きく張り出した骨盤とそれを取り巻く豊かな臀部。健康的でむっちりした太腿、長い脚。私も妻も、由実が水着姿でミス・なんとかの栄冠に輝く日が来ることを心待ちにしていた。 私が英米文学の翻訳を専門にしていたことが影響したのだろうが、由実は大学の英文科に進みたいと希望した。健康で美しい由実に語学力がつけば、文字通り才色兼備になるに違いなく、私も妻も賛成した。 由実が成人した日、私と妻は由実に尋ねた。私たちの子供になる気はないか?と。 由実は優秀な成績で大学を卒業し、一流の家電メーカーに就職した。由実がビジネス・センスを磨き、社交力も身につければ、将来海外支社の重要ポストに就くことも夢ではなかった。全てはバラ色だった。…由実にとっては。 まこと「禍福はあざなえる縄のごとし」という言葉通りで、由実が就職を果たしたのと相前後して、私の妻が亡くなった。難病が発症し、呆気ないほど急に病死してしまったのだ。気落ちし食欲もなくなった私を由実が慰め、励ましてくれた。私は数ヶ月経ってやっと仕事を再開する気になった。 気がつけば、私は一軒家に21歳の色っぽい美女と二人切りで住んでいた。妻がいた間は、妻が緩衝材となって由実を“女”として考えたことなど一度もなかった(と思う)。由実は妻と私の二人の娘だった。その妻が欠けた今、脳が突っかい棒を失って、電流が無用の方向に漏れるような故障が起き始めたようだ。由実が私を優しい伯父さんと慕ってくれているのは間違いなかった。だから、私が一歩踏み出して、由実と男と女の関係になろうとすれば出来ないことではないように思えた。だが、それは私を慕ってくれている由実の信頼を利用するセクハラに違いなく、16年間由実を掌中の珠のように育てて来た自負と誇りと、由実の信頼を裏切る行為であるのは自明だった。幸い、私はインテリの一人として冷静に自分の心理を分析することが出来た。私は妻を失って単に寂しいのだ。単に“女”を求めているのだ。由実を求めているのではない。由実が手近に存在するから、由実をターゲットにしてしまうだけの話なのだ。 しかし、私は男としての自分自身の衝動を恐れた。男というものは、発情し性欲の虜(とりこ)となると何をやらかすか測り知れない。そんなことがあってはならなかった。ある日、私は由実とさり気なく話し合う機会を持った。 その夜、私は寝付けなかった。由実の言葉が耳に残って何度も蘇って来たからだ。由実は「伯父さまが好きだ」と云った。私が由実との男女関係に一歩を踏み出せば、由実は私を受け入れる、そう私は確信出来た。しかし、由実はどんな風に私を受け入れるのだろう? その時、遠くの応接間のカッコー時計が「カッコ、カッコ、カッコ…」と11回鳴くのが聞こえた。 ■ 私はむっくり布団から起き上がると、由実の部屋に向かった。由実の部屋に鍵は掛かっていなかった。私はするりと忍び込んだ。真っ暗な中で、手探りで布団の位置を確かめる。私の鼓動がどっきんどっきんと高まる。自分の娘のように育てた姪に夜這いするとは!もし、拒否されたらどうしよう?明日からの生活は悲惨なものになってしまう。拒まれたら、私には由実を犯すつもりなどなかった。私もそこまで悪(わる)ではない。私は、由実の頭の方の布団をそーっと持ち上げた。由実の品のいい香水の香りが微かに漂って来た。その時、「パチン!」と音がし、電気スタンドが点灯した。私は身体を凍りつかせた。 ■「伯父さま?」電気スタンドの灯りに浮かび上がった美しい由実が云った。 その時、遠くの応接間のカッコー時計が「カッコ!」と一度だけ鳴くのが聞こえた。 由実ちゃん篇・1 あたしは伯父さまが好きだった。子供の頃から、優しくあたしを可愛がってくれる伯父さまが好きだった。伯父さまは見掛けも好ましかったけど、包容力があり、教養もあり、あたしと好みも似通っていた。あたしが結婚するとしたら、伯父さまのような男性がいいと思っていた。でもそれは、あたしの胸の奥深くに仕舞い込まれた感情であって、それを伯父さまに告げるつもりはさらさらなかった。その優しい筈の伯父さまが「この家を出て自由に暮らせ」と云ったのはショックだった。そのショックは大きく、あたしはついにあたしの秘めた感情を吐露してしまった。でも、伯父さまはそれを軽く受け流した。嬉しそうでも、迷惑そうでもなく…。 あたしは「伯父さまが好き」と云い放った自分の言葉で自分の真の気持ちに思い当たった。あたしは伯父さまが女として好きだったのだ…以前から。あたしは伯父さまと伯母さまの養子になることを拒んだのだが、なぜ拒んだのか、当時自分でも理由が判らなかった。しかし、今やっと判った。伯父さまと“父娘”(おやこ)になることを恐れたのだ。男と女として愛し合う伯父と姪は稀ではないと思うが、愛し合う父娘というのは稀に違いない。あたしは本能的、反射的に伯父さまと法的に距離を置くことで、伯父さまとの関係の可能性を留保したのだ。 あたしは、自分が「伯父さまが好き」とラブレターを送ったのに返事が来ないのに苛立った。傷ついた。あたしはもう何人かの男性とセックスしたことがあったので、セックスに抵抗はなかった。伯父さまが最初の一歩を踏み出してくれれば、すぐにでも伯父さまを受け入れるつもりだった。しかし、伯父さまは何ら行動を起そうとしない。ひょっとして伯父さまはシャイなのだろうか?紳士的過ぎるのか?あたしがもっと誘わなければいけないのか?手数のかかる伯父さまだこと。 数日後の日曜日、あたしは淡いピンク色のキャミソールに深紅のとっても短いショートパンツで過ごした。道行く人々があたしの顔に目を釘付けにするのには慣れていたが、この赤いショートパンツは男性たちの目をあたしの下半身に釘付けにする。あたしのすらりと伸びた脚、適度に脂が乗った太腿が丸見えだし、ショートパンツが短いのでお尻の一部さえ見えてしまう。あたしはこれを伯父さまで試すことにしたのだ。 普通は伯父さまとあたしが交代で食事を作るのだが、在宅勤務の伯父さまが主に週日で、週末はあたしが担当することが多い。日曜の夕方、食卓で食前酒を飲んでいる伯父さまの前で、あたしは忙しげにステーキを焼く準備をした。冷蔵庫から野菜を取り出す際は、しゃがまないでお尻を突き出して冷蔵庫を覗き込む。下の戸棚からワインを取り出す時も同様である。伯父さまがあたしのショートパンツを見ていれば、太腿が生白いお尻へと丸みを帯びるカーブが見える筈だった。 あたしはお料理に専念しながらも、目の隅で伯父さまの視線を感じ取ろうとした。伯父さまは新聞を広げていたが、それをめくる音は全くしなかった。いつもなら新聞記事を話題にあたしに話しかけて来るのに、終始無言だった。あたしは伯父さまがあたしの下半身に見蕩れていることを実感した。 その夜、あたしは伯父さまが忍んで来ることを期待していた。あたしのショートパンツ姿に欲情し、ステーキによって野獣のような精力をつけた今、伯父さまは夜這いしないではおれないと思うのだが。しかし、何事も起らなかった。 その時、遠くの応接間のカッコー時計が「カッコ、カッコ、カッコ…」と11回鳴くのが聞こえた。 ■ あたしは結論を下した。伯父さまは完璧な親代わり、完全なる紳士なのだ。だが、それは殻であり、その殻を割ればどこにでもいる男性と変わらない中身の筈だ。スケベで女好きの…。伯父さまは自分では殻を割れないから、あたしが割って上げなくてはならないのだ。世話の焼ける伯父さまだこと。 ■ あたしはお布団を撥ね除けそっと部屋を出て、ネグリジェ姿で伯父さまの寝室に向かった。そーっと襖を開け閉めして室内に入る。あたしは灯りのスイッチを入れた。あたしは視覚的要素が男性の欲望をそそることを知っていた。暗闇ではそれを利用出来ない。伯父さまは突然の明かりの洪水につぶったままの目を激しくパチクリさせた。やっと明かりに慣れた伯父さまは(一体、何事が起ったのか?)という表情で周囲をきょろきょろし、やっとネグリジェ姿で突っ立っているあたしに気付いた。 ■「キスして、伯父さま?」あたしは熱い息を伯父さまの口に吐きかけた。伯父さまはおっぱい揉み揉みを続けながら、あたしの口に吸い付き、舌を差し込んで来た。あたしたちは狂ったように互いの舌を舐め合い、絡め合った。伯父さまの一方の手があたしのお尻に伸び、ネグリジェ越しにお尻の丸みを撫で廻した。伯父さまの勃起したペニスがあたしの脇腹を突ついた。あたしの膣はどっと愛液を噴出した。 ■ あたしはネグリジェを裾から捲り上げて脱ぎ捨て、すっぽんぽんになった。夜這いに来るのに、パンティなんか穿いてませんって。伯父さまもパジャマを脱いで全裸になった。あたしはおずおず行動する伯父さまに焦れ、伯父さまの顔の前におまんこが位置するように股がり、上体を屈ませて伯父さまの勃起したペニスに顔を近づけた。伯父さまのペニスの角度を手で調整し、あたしの口に入れた。あたしはフェラチオはあまり上手ではないのだが(無論、好きでもない)、伯父さまを奮起させるには何でもやるしかなかった。あたしは伯父さまのペニスを口ですぽすぽし、舌で亀頭をぺろぺろした。伯父さまがあたしのクリトリスを舐め出した。「ぶぐぶーっ!」ペニスを頬張ったあたしがよがる。 その時、遠くの応接間のカッコー時計が「カッコ!」と一度だけ鳴くのが聞こえた。 伯父さん篇・2 先週の日曜日、私はエラい目にあった。由実が挑発的なスタイルで食事の支度をし、私は目のやり場に困った。新聞は手にしていたが、目は由実の真っ赤なショートパンツの尻を追い、むっちりした太腿、すらりと伸びた脚に見蕩れてしまった。私のペニスが疼いた。罪作りなスタイルだった。しかし、私は由実に「そんな格好はやめてくれ」とは云えなかった。理由その一、そんな風に意見したら、私が興奮し春情を催したことがバレてしまう。理由その二、由実のそんなスタイルをもっと頻繁に見たい気にさせられたからだ。 私は、由実が「伯父さまが好き」と口走ったことと、キャミソール+ショートパンツとの関連性について深く考えたが、まだそれが完全なる招待状であるとは思えなかった。いや、そうであって欲しいとは思ったが、確信が持てなかったのだ。招待状無しでのこのこパーティに出掛け、入場を拒否され叩き出されたりしたら大恥である。とても一か八かやってみる勇気はない。 今日は真っ赤なショートパンツの反対の衝撃がもたらされた。由実の学生時代の友人の葬儀だとかで、由実が喪服を着たのだ。私の妻が亡くなった時に仕立てた黒無地のフォーマル・スーツだ。喪服の女は美しいと云われるが、ただでさえ美しい由実が喪服を着ると、ぞっとするような美女になった。妻の葬儀の時、私は憔悴し落ち込んでいて、由実の喪服姿など気に留めていなかったから、今回初めて気がついたのだった。 なぜ喪服の女が美しく見えるか?もともと女の身体というものは肉感的なものだ。胸や尻による凸凹や柔らかい肌も男心を誘う。女の身体は触っても快いし、セックスすればもっと快い。喪服は、男の性欲に媚びるような身体を黒い布切れで覆い隠し、男の欲望をはね返そうとする。「私は悲しみに暮れており、貴方の性欲のお相手は出来ません」という強い意思表示だ。女生徒のセーラー服もそうだ。「私の身体はアンタッチャブルです。どうか性的行為の対象として見ないで下さい」と訴えている。肉感的な身体を、性行為を拒絶する意思表示で隠す矛盾が見る者に健気さ、清潔さを感じさせる。だが、どんなことをしても女たちの身体が発散するエロチシズムは隠しおおせるものではなく、黒い衣装はお汁粉やあんこに入れる隠し味の塩のように、女の色気を引き立たせる役目を果たすに過ぎない。 喪服に身を包んだ由実は、帰宅しても着替えず、食卓の椅子に座り、食卓に伏せってじっとしていた。亡くなった友人は親友だったわけではなさそうだったが、若い死が由実の心を空虚にしたのだろうか。私は慰めの言葉の代わりに喪服を着た由実の肩にそっと手を置いた。由実はゆっくり立ち上がると、私の胸に顔を寄せてしくしく泣いた。私はそっと由実の身体を抱いた。これは、由実が成長してから初めての抱擁だった。 その夜、私はまた床の中で物思いに耽った。今日、由実は私に身体を寄せて来て、私は由実を抱いたけれども、それは葬儀という外部要因が介在してのことであって、私と由実の二人を結びつけるものではなかった。しかし、由実が私を頼り、心の支えとしているらしいことは証明された。今日、私がこの胸に由実を抱いたようなスキンシップが何度か続けば、ある時ひょっとして大きな一歩を踏み出せるかも知れない。私はトイレに行くような感じで寝室を出て、由実の部屋を窺った。ドアの隙間から明かりが見えた。まだ起きているのだ。 その時、遠くの応接間のカッコー時計が「カッコ、カッコ、カッコ…」と11回鳴くのが聞こえた。 ■「由実?眠れないのか?」私がドア越しに声を掛けた。 ■ 私は由実を抱いてじっとしていた。由実の上品な香水の香りが鼻をくすぐる。由実の柔らかいおっぱいが私の胸で押しつぶされている。由実の胸が規則的に隆起する。私が久し振りに抱いている女体、それは私の養女になるかも知れなかった姪っ子にして芳紀21歳の未婚の娘である。「由実!可愛い由実!」私は由実の背中を擦りながら云った。 その時、遠くの応接間のカッコー時計が「カッコ!」と一度だけ鳴くのが聞こえた。 由実ちゃん篇・2 伯父さまの目にあたしの喪服姿が印象的だったのは確かだ。あたしはその効果を十二分に利用すべく、帰宅してもすぐには着替えず、物思いに耽る風情で出来るだけ着用時間を引き延ばした。私は伯父さまに身を寄せ、伯父さまは私をそっと抱いてくれたが、それだけの話だった。その夜、伯父さまが寝室から出て来た時には(やったぜ!)と思ったのだが、伯父さまの足音はおトイレに消え、また寝室に戻って行ってしまった。 焦れったいったらなかった。伯父さまは理性的過ぎるのだ。こんな堅物の男性が世の中にはいるとは思わなかった。石部金吉金兜とは伯父さまのことを云うのだろう。こんな伯父さま相手に尋常な手段でコトを成就しようとしていたあたしが馬鹿だったのだ。こうなったらもっと直接的な手段を取るしかなかった。 ある夜の夕食後、伯父さまとあたしは食後酒としてイタリア産のサンブーカをちびちび呑んだ。 私は念入りに身体を洗った。あそこの外も中も。あたしはバスタオルで身体を拭き、そのまま身体にバスタオルを身体に巻きつけた。伯父さまの寝室の前で「いらして?伯父さま?」と声をかけて自室に戻り、ドアを開けっ放しにする。あたしは既に敷いてあったお布団の上で伯父さまを待った。伯父さまはパジャマ姿でやって来た。 あたしははらりとバスタオルを落とした。あたしの生涯初めてのストリップ。 あたしは興奮と快感で足がガクガクして立っていられなくなり、お布団の上に仰向けに崩れた。伯父さまがあたしの身体にのしかかって来た。伯父さまはあたしの乳房を絞るように握り締め、揉んだ。そしてあたしの唇に口づけし、舌を滑り込ませて来た。 「由実、やっとキミとセックス出来た。嬉しいよ」腰をへこへこぐりぐりさせながら伯父さまが云った。 「不思議だ。今日に限ってカッコー時計が鳴らんな」ふと伯父さまが云った。 |
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