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23. 鉄道員(しゅっぽや)パート1

「♪汽車汽車 ぽっぽぽっぽ、しゅっぽしゅっぽ しゅっぽっぽ、ぼくらを乗せて しゅっぽしゅっぽ しゅっぽっぽ」
年末の日の朝九時、北海道・幌冠(ほろかっぷ)線・花咲内(はなさかない)駅の雪降り積もるホームで、童謡が響き渡った。子供の歌声ではない。太い男の声だ。この駅は廃線が囁かれて久しいことで分るように、大人はおろか子供の乗降客もめったにない。昔、炭坑の町として栄えた花咲内も、今や老人たちがひっそりと住む過疎の町に変わり果てていた。
「♪スピードスピード窓の外、畑も飛ぶ飛ぶ家も飛ぶ、走れ走れ走れ、鉄橋だ鉄橋だ 楽しいな」
寒さを堪えて足踏みしながら歌っているのは、定年間近の駅長・加藤音松さん。制服制帽に黒いお仕着せの外套をまとっている。今朝も電車を待つ乗客はゼロ。だから、待合室にもホームにも人っ子一人おらず、誰憚ることなく愛唱歌を歌えるのだった。音松さんは蒸気機関車の缶(カマ)焚きを振り出しに、その後機関士となり、数十年前にやっとこの駅の駅長となった。父親の代からの“しゅっぽや”としては、たとえ乗降客が少ない駅でも駅長に任ぜられるのは誉れであった。音松さんは、毎日朝夕一回ずつの電車の送り迎えをくそ真面目に続けていた。

音松さんの住居は待合室に続く数部屋の和室である。官舎と呼ばれているが、駅で寝泊まりしているのと変わりはなく、職住近接どころか職住一体であった。音松さんは数年前に病弱だった妻を亡くした。それまでは狭いながらも楽しい我が家だったが、今は独り身である。16年前に女の子を授かったものの、一歳の誕生日を迎える前に風邪をこじらせて死んでしまった。駅を空けられない音松さんは、幌冠線の始発駅の町の病院で亡くなった娘の死に目にも、妻が息を引き取る際にも傍に居てやれなかった。

汽笛が鳴り、オレンジ色のキハ40-764の姿が遠くに見えた。(今日は何人乗っているだろう?)音松さんは祈るように思った。(一人でも二人でもいい。乗っていてほしい)キハ40が近づいて来て、ホームに停止した。音松さんが敬礼して迎える。乗客は行商人らしい二人の中年の男女のみだった。
「六分遅れました。すぐ折り返します」顔なじみの運転士が云った。
「んだな。したっけ、熱いコーヒー飲んでけばいっしょや」音松さんが先に立って駅舎に向かう。
「ごっそさんすっ!」運転士が顔をほころばせて音松さんに従う。
冬場は待合室のだるまストーブの上の鍋の湯で缶コーヒーを温めておき、運転士に振る舞うのが音松さんの流儀だった。音松さんは、軍手をはめた手で鍋から一本の缶コーヒーを摘まみ上げて運転士に渡した。
「ありあたっす!」運転士が軽く頭を下げて、パチンと缶を開け、ごくごく飲んだ。
「まだ廃線の話は聞いてねえか?」音松さんが云う。
「んー、ねえっす」運転士が首を横に振る。「あれば、真っ先に駅長に連絡来るっしょ」
「うむ」音松さんがストーブの中の石炭を掻き回す。
「ごっそさんした。んなら、これで」運転士が会釈して出て行く。
「そーか」と音松さん。

音松さんは転轍機を操作し、ポイントを入れ替える。さっきは電車の最後尾だった車両が今度は先頭になる。運転士が乗り込む。
音松さんが電車の先頭の横に立つ。「出発進行!」音松さんが毅然とした声で云った。キハ40-764が静かに動き出す。電車がホームを離れる。「後部良し」音松さんが指差確認喚呼する。電車が分岐点を過ぎる。「信号良し」音松さんは電車が見えなくなるまで見送った。

午後五時にも同じ儀式が繰り返された。今度は乗降客はゼロだった。

音松さんが風呂に入り、夕食をしたため、パジャマ姿で布団を敷いた段になって、突如駅の戸がドンドン!と叩かれた。
(誰だべ、こんな時間に?)音松さんは町のほとんどの人間を知っているが、夜分に訪ねて来るような深い付き合いの人間はいなかった。音松さんがサンダルを突っかけて土間に下り、待合室を抜ける。ガラス戸の向こうに見えたのは、高校生ぐらいの女の子であった。見掛けない顔である。
「何だべさ、今頃?」音松さんが当惑した。電車はないし、冬の最中に女の子が出歩く時間でもなかった。
「あの〜、あたし、あの〜」ガラス越しに女の子が口から白い息を吐きながら云う。見るからに寒そうである。
「ま、入んなさい」音松さんが掛け金を外し、女の子を入れる。
「あの〜、駅長さんですか?」女の子が内地の標準語で聞いた。音松さんは制服制帽姿ではないのだから、もっともな質問であった。
「んだ。ここの駅長だ」と音松さん。
「う〜さぶ」赤いオーバーコートに赤いマフラー、黒いスラックス、白い毛糸の手袋をした女の子がガタガタ震える。
「よし!石炭くべてやっから、じきにあったかくなるべさ」音松さんが小さなシャベルで、だるまストーブに石炭を放り込む。

「駅長さん、ありがと」女の子がストーブに近寄る。よく見ると、女の子は可愛い顔立ちで、黒く長い髪が印象的だった。
「ねーちゃん、どこの娘(こ)だ?見たことねーけど」音松さんが聞く。
「え?あたし?」女の子がちょっとどぎまぎする。「当ててみて?」女の子が目をくりくりさせる。
「さあ?一本松の宮坂さんとこのお孫さんかい?」
「はずれ〜」女の子が笑う。
「じゃ、蓮正寺の東京さ嫁に行った二番目の娘さんの子供?」
「そんなとこ。あ、あったかくなって来た!」女の子が頬っぺたを赤くしながら云う。
「あんた、こんな夜に何で駅に用事あるのさ?」音松さんが疑問を口にする。

「あたし、電車の時間聞きに来たんです。朝一番の…」と女の子。
「朝一番もなんも、最近は朝9時5分と夕方5時5分の二本しかねーんだ」音松さんが寂しそうに云う。「この辺の人ならみんな知ってるべさ。朝9時のに乗るんかい?」
「いえ。あの〜、9時5分の電車は何時何分に到着するんですか?」女の子が聞く。
「9時丁度の入構だ。あ、したら誰かの出迎えかい?」
「いえ、そういうわけじゃ…」女の子が口を濁す。
「…」音松さんが不思議そうに女の子の顔をじろじろ見る。
「暑くなって来た」女の子が赤いオーバーを脱ぐ。その下は高校の制服だった。
「おい、あんた?」音松さんが女の子の顔を真正面から見据える。「おれの駅汚すなよな」
「え?ど、どういうこと?」女の子が戸惑う。

「乗るんでねえ、出迎えでもねえ。あんた、飛び込む気だろ?」音松さんが追及する。
「え?あたし、そんな…」女の子がへどもどする。
「冗談でねえぞ。おれはこの駅を一生懸命綺麗に大事にしてんだ。元旦早々駅を血だらけにされてたまるか!」音松さんが声を荒げる。
「…」女の子が沈黙する。
「知らねえだろ?電車にバーンっ!と撥ねられたら、あんたのそのめんこい顔はひしゃげて、目玉は飛び出し、顎はつぶれ、その後車輪で轢断されて手足はバラバラになっちまう。そこらじゅう血の海だ」
「うえーっ!」おぞましい話に、女の子が口をへの字に歪める。
「死んじまうあんたはいいだろうが、後始末させられんのはこの俺だ。冗談でねえ!駄目だ!絶対駄目!」音松さんが怒鳴る。

「駅長さん、一人で暮らしてんの?」話題を変えようと、女の子が見回しながら聞いた。
「ああ…。そうだ、あったかいお茶でも飲むかい?」音松さんが云う。
「うん。ありがと」女の子が首を縦に振る。
「じゃ、上がんな」音松さんが女の子を招じ入れて、台所に立つ。「お茶でも飲みながら、どんな事情があるのか話してみねえか?」
「…」女の子は黙っている。
「話してくれれば、年の功で小父さんが相談に乗れっかも知んねべさ」と、やかんで湯を沸かしながら音松さん。
「小父さん、お酒ない?お茶じゃなく、お酒呑まして?」と女の子。
「なにい?」音松さんがぶったまげる。「高校生のくせに、なに云ってんだ!はんかくさい(馬鹿な)こと云うもんでね!」
「呑ませてくれれば、飛び込むの考え直す。どう?」女の子が上目づかいに云う。
「駅長が駅舎で女高生に酒呑ませたなんて知れたら、懲戒免職だべさ。出来ね相談だ!」音松さんが突っぱねる。
「飛び込み自殺を未然に防いだって、人命救助で表彰されるんじゃない?懲戒免職の正反対よ」女の子が真顔で云う。
「えー?」音松さんが呆気に取られる。

「ねえ、ちょっとでいいから呑まして?お願い!」女の子が懇願する。
「ねーちゃん、呑ませたらほんとに飛び込むのやめっか?」駅を汚されたくない一心の音松さんが確かめる。
「約束する。指切りしてもいいわ」と女の子。
「よし。一杯だけだぞ。んじゃ、おれも付き合うべさ」音松さんが酒を徳利に注ぎ、湧かしかけたやかんに入れて燗をつける。

「熱燗だ。火傷すんな」音松さんがぐい飲みに酒を注ぐ。
「あたし、お酌する」女の子が音松さんのぐい飲みに酒を注ぐ。
「おし。そんなら、これは飛び込みはなしって固めの盃だ。いいな、ねーちゃん?」と音松さん。
「うん。飛び込みはなし」そう云って、女の子がぐびぐびと一気に酒を呑む。
音松さんもぐいっと一気に呑んだ。
「注いだげる」女の子が云って、徳利に手を伸ばす。それを音松さんのぐい飲みに注ぐのかと思いきや、女の子は徳利を口につけ、がぶっと酒を呑んだ。
「あっ!こらっ!何てことをっ!」音松さんが止めようとして女の子に近寄る。
接近した音松さんに、女の子が急接近し、音松さんに接吻した。
「!」驚く音松さん。音松さんの口に、女の子が口移しでどくどくと酒を流し込む。「ががが、ぐぶ!」音松さんの喉に多量の酒が流れ込んだ。 女の子は口内に酒が無くなっても接吻をやめず、自分の舌で音松さんの舌を舐め廻す。二人の舌が絡まる。

音松さんは驚くと同時に興奮していた。十数年前に妻を亡くしてから、女とは縁がなかった。仕事一途の生活であった。相手が見知らぬ女高生とは云え、久し振りの女とのディープ・キスによって音松さんの性欲にぽっと火が点いた。
女の子は接吻したまま音松さんの身体を押し倒し、音松さんの手を取ると自分の胸に導いた。音松さんの手が柔らかいものに触れる。
「お、おい!止めろ、ねーちゃんっ!」音松さんがあたふたする。「あんた、酔っぱらったんだべ!」
「ねーちゃん、ねーちゃんってやめてよ!ちゃんと名前あるんだから」女の子が抗議する。
「お、悪かった」女の子にのしかかられながら、音松さんが素直に謝る。「したら、何て名前だ?」
「あたし、麻紀。植物の麻に紀伊国屋の紀」
「麻紀ちゃんか。あんた酔っぱらってる。さ、どいてくれ」音松さんが麻紀ちゃんを押し退けて起き上がろうとする。
「酔ってないもん」麻紀ちゃんが云って、またもや徳利の酒を口に含むと、音松さんに接吻してどくどくと酒を流し込んだ。
「ぐぶ、ぶぐぐ」音松さんが強制的に酒を呑まされる。
麻紀ちゃんは今度も接吻をやめず、音松さんと舌を交えた。おまけに、音松さんの手を制服の下に潜り込ませ、ブラジャー越しに柔らかい乳房を揉ませた。

音松さんは動けなかった。女高生にのしかかられ、キスされ、おっぱいを揉まされている。蒸気機関車の缶(かま)焚きで鍛えた頑健な音松さんだから、一気に麻紀ちゃんを撥ね飛ばすことも可能な筈であった。しかし、出来なかった。香(かぐわ)しい麻紀ちゃんの口。ぬるぬると蛇のように絡まって来る舌。そして、若々しく張り切った乳房。音松さんの脳髄は痺れ、思考は停止し、久し振りの性感の洪水に溺れていた。いつの間にか、麻紀ちゃんの手が音松さんの股間に伸びた。しなやかな手が音松さんのペニスを見つけ出し、その形をなぞった。
「むぐぐ…」音松さんが目をまん丸に見開き、もがいた。勃起し始めたペニスを女の子に気取られるのが恥ずかしかったからだ。しかし、麻紀ちゃんの擦り方が激しくなるに連れ、ペニスはぐんぐん固さを増し、太く長くなった。音松さんは女高生に犯されている気がした。「ま、麻紀ちゃん?あんた処女じゃないね?」
「処女がこんなことするわけないでしょ、馬鹿ね」麻紀ちゃんは音松さんのパジャマとブリーフの下に手を滑り込ませた。モロに熱く硬直したペニスに触れる。
「あああ」音松さんが呻く。女の繊細な手がペニスを撫で廻している。えも云われぬ快感。(やめさせなければ…。しかし、やめさせたくない…)
音松さんがもはや抵抗しないと見定めた麻紀ちゃんは、身体をずり下げ、音松さんの股間にうずくまった。音松さんのパジャマとブリーフを押し下げ、天井を向いておっ立っているペニスを口に含む。
「むむむーっ!」女高生にフェラチオされた音松さんが、快感に苦悶する。
麻紀ちゃんは、音松さんのペニスを両手で持ち、亀頭周辺をぺろぺろしたり、ペニス全体をすぽすぽしたりする。
「ああああーっ!」音松さんが呻く。

「小父さん?」フェラチオを中断して、麻紀ちゃんが云う。
「ん?」音松さんが首を上げる。興奮で顔が赤い。
「あたしとやって!おまんこして!」と麻紀ちゃん。
「お、おれもやりてえ。けど、コンドーム買ってねーんだ」妻の死後、売春婦とさえ交わったことのない音松さんであった。
「あたし、いま安全日だから、だいじょぶ」麻紀ちゃんが制服とスカートを脱ぎ、シュミーズも取り去る。
「ほんとにいいのかい?」音松さんは、ごくりと唾を飲み込む。性の欲望の虜(とりこ)となった音松さんは、降って湧いたおまんこのチャンスを逃せなくなっていた。
麻紀ちゃんがブラジャーを外し、パンティも取り去って、布団の上に仰向けに寝た。まっしろい女体。小振りだがまろやかな両の乳房。もっこりした恥丘に薄く生えた陰毛。膨れた尻。
音松さんは麻紀ちゃんの裸体を見ながら、手をわなわな震わせながらパジャマのボタンを外す。音松さんも全裸になり、麻紀ちゃんの裸の身体に寄り添い、麻紀ちゃんを抱いた。音松さんが麻紀ちゃんにキスする。麻紀ちゃんの舌が迎えに出て、二人は熱いディープ・キスを交わす。音松さんの手が、麻紀ちゃんの身体を撫で廻す。乳房、肩、腹、腰、尻、太腿。そして音松さんの手が麻紀ちゃんの陰部に忍び込み、割れ目をなぞる。 「ぶぶぐーっ!」口を塞がれている麻紀ちゃんが呻いた。

音松さんの指先が麻紀ちゃんのクリトリスを刺激する。
「あっはーんっ!」もはやキスどころでない麻紀ちゃんが、身をのけ反らしてよがる。
音松さんは麻紀ちゃんの脚を広げさせ、その間に身体を滑り込ませた。勃起したペニスを手に持ち、ペニスで麻紀ちゃんのクリトリスを擦る。
「おおお!」男の熱いペニスでクリトリスを刺激された麻紀ちゃんがよがる。
音松さんはペニスで麻紀ちゃんの割れ目全体、蟻の門渡り、肛門などを突つき回す。
「うわはーんっ!」麻紀ちゃんが興奮する。
音松さんのペニスの先端に麻紀ちゃんの愛液が感じられた。音松さんは亀頭に愛液をなすり付け、麻紀ちゃんの膣口に狙いを定める。
麻紀ちゃんがうっすらと目を開け、性交開始の一瞬を待ち受ける。
音松さんがぐぐっと腰を押す。ペニスがぬるぬるとおまんこにめり込む。
「むっぐーんっ!」太く固く長いものを体内にぶち込まれた麻紀ちゃんが呻く。

音松さんは久し振りの性器の交わりに胸が張り裂けそうだった。こんないいものを忘れていた。しかも、想像もしなかった女高生とのセックス。(死んでもいいぜ)音松さんはいい冥途への土産が出来たと思った。自分があの世へ逝った時、亡妻が浮気を責めるかも知れないが、その時は素直に謝ればいい。女高生とやれるなんて滅多にない幸運なんだから。音松さんは腰を右旋・左旋させて麻紀ちゃんのクリトリスを刺激した。 「あうーっ、あうあうーっ!」麻紀ちゃんが身体をひくつかせてよがる。
音松さんは両手で麻紀ちゃんの乳房を揉み、乳首を刺激した。腰を滅茶苦茶に動かし、麻紀ちゃんの膣内を掻き回す。
「うわーんっ!」麻紀ちゃんが叫ぶ。
音松さんはぐーっと腰を引き、どばーん!と突き上げる。
「うっぎゃーっ!」Gスポットを擦られ、子宮口を突つかれた麻紀ちゃんが喚く。
もうじき麻紀ちゃんをイかせられると予感した音松さんが、腰の動きをピストン運動にする。蒸気機関車の缶焚きだから、ピストンのリズムとテンポは身体に滲み着いている。ガッタンゴットン、ガッタンゴットン。音松さんは一方の手で麻紀ちゃんのお尻を撫で廻し、他方の指先で麻紀ちゃんのクリトリスを刺激する。
「あは、あは、あは、あははん」麻紀ちゃんが天国行き特急に飛び乗る。
音松さんがピストン運動を早める。ガタコンガタコン。「♪汽車汽車 ぽっぽぽっぽ、しゅっぽしゅっぽ しゅっぽっぽ」突如、音松さんが歌い出す。歌いながら腰を激しく動かす。
「あっぎゃーんっ!」麻紀ちゃんがイった。
「おーっ、おおおーっ!」吠えるように叫んで、どばこんどばどばーんっ!と音松さんが射精した。

二人はぜいぜい云いながら横になっていた。
「小父さん、凄〜い!」麻紀ちゃんが音松さん胸毛を弄りながら、音松さんの性能力を賛嘆した。
「なんもなんも。それほどでもねーべさ」音松さんが照れる。「ところで、麻紀ちゃん、いくつんなる?」
「あたし?16」と麻紀ちゃん。
「ふーん?」音松さんがふっと感慨にふける。
「なに?小父さんにもあたしぐらいの娘でもいるの?」麻紀ちゃんが上体を起こし、音松さんを見つめながら云う。
「丁度、16年前だ。可愛い女の子が生まれたんだ。麻由美って名付けてめんこがってたのに、一歳の誕生前に死んじまった」音松さんが暗い表情で云う。
「ふーん?生きてれば、あたしと同じ歳なんだ…」
二人はしばらく沈黙した。
「ね、ね?明日の晩もまた来ていい?」麻紀ちゃんが音松さんを元気づけるように云う。
「おお、来てくれっかい?こっちから頼もうかと思ってたっけさや」音松さんの顔が明るくなる。
「オッケー!じゃ、また明日ね?」麻紀ちゃんが下着を身につけ、また元の制服姿に戻る。

「あ、おれ、麻紀ちゃんの家まで送ってく」音松さんが羽毛服をまとおうとする。
「いい、いい。すぐ近くだから、心配しないで!」麻紀ちゃんがマフラーを首にかけ、赤いオーバーコートを着る。
「したっけ、蓮正寺はそう近くじゃねーぞ」音松さんが訝る。
「蓮正寺のずっと手前なの。じゃね、バーイ!」麻紀ちゃんはガラス戸を開けると、滑るように出て、消えて行った。

翌日、音松さんはそわそわ落ち着かず、列車の運転士との会話も上の空だった。麻紀ちゃんとの昨夜のセックスは、時間が経つにつれ美化され、麻紀ちゃんの若いおまんこのきつさや、麻紀ちゃんの喘ぎ声、クライマックスの叫びなどが生々しく蘇り、それをもう一度繰り返したいという渇望となっていた。音松さんは精をつけるため昼も夜も肉を食べ、風呂に入り、布団を敷いて麻紀ちゃんを待ち受けた。




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