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05. 許可

宏君と由美ちゃんは家庭教師を辞めないことにした。子供たちは「もう先生たちを巻き添えにしない」と言明しているのだから、辞める理由は見当たらない。食べられない御馳走を目の前にして涎を垂らす苦痛は堪え難いものの、またいつか子供たちの裸やセックスが見られないものでもない。何も無いよりは、見られるだけでもマシだと二人は考えた。

平穏無事に数週間が過ぎた。

そしてある日。宏君と向かい合ってお勉強していた愛ちゃんが、ぽんと鉛筆を投げ出し、パタンとノートを閉じた。
「どしたの?愛ちゃん。気分でも悪いの?」と宏君。
「先生。あたし自信なくなっちゃった」と愛ちゃん。
「何のこと?」
「あたし、よっぽど魅力のない女の子なんだなって思う」
「何のことか分んないけど、愛ちゃん魅力あるよ。可愛いもの」と宏君。
「口先だけで可愛いって云ったって、先生、あたしのこと可愛がってくれないじゃない」
「可愛がるって…」
「行動で」と愛ちゃん。
「またあ…」

「あたしのおっぱいが膨らんでないから?あたしのあそこに毛が生えてないから?」と愛ちゃん。「それで、先生、あたしのこと嫌いなの?」
「とんでもない!愛ちゃんは今のままでとっても素敵だ。食べちゃいたいぐらい可愛い」と宏君。
「じゃ、食べて」
「駄目」
「やっぱり可愛くないんだ、あたし」
「愛ちゃん、正直に云おう。ぼくはキミに出会うまで10歳以下の女の子になんて関心が無かった。でも今は違う。愛ちゃんを抱きしめたい。愛ちゃんにキスしたい。乳首を舐めたい。可愛い割れ目を舐めたい。おまんこもしたい、…」
「嬉しいっ!先生!」愛ちゃんが飛び上がって喜ぶ。
「でも、駄目なんだ。出来ないんだ」と宏君。
「先生、インポじゃないよね?この間、立ったもん」と愛ちゃん。
「キミ、どうしてそんな言葉知ってるの?」と宏君。「冗談じゃない、ぼくはインポなんかじゃない。一日に三回でも四回でも出来る」
「すごーい!」

「愛ちゃん、キミのパパはね、ぼくを信用して家庭教師に選んでくれたんだ」と宏君。「キミのパパは、まだたった9歳の娘が家庭教師とセックスすることなんか望んでいない。知ったら怒り狂って、ぼくは殺されてしまうかも知れない」
「あたし、パパに話したりしないよ」と愛ちゃん。
「そういうことは、いつかはバレるもんなんだよ、愛ちゃん」
「先生はうちのパパが恐いの?」と愛ちゃん。
「恐い、少しね。でも、キミのパパが知る知らないの問題じゃない。キミのパパが知らなくても、ぼくがキミのパパの信頼を裏切ってしまうことには変わりないからね。ぼくは悩んだ末に病気になってしまうだろう」
「あたしとやりたいけど我慢するわけ?」と愛ちゃん。
「うん」と宏君。
「健康によくないわ」
「仕方ない」
「誰とやろうとあたしの自由なんだから、パパは無関係なの」と愛ちゃん。「先生、考え過ぎよ」
「世の中って、そう簡単なもんじゃないんだよ、愛ちゃん」
「そんな世の中、嫌い」
「ハハハ」宏君は力なく笑った。

その翌週。子供たちが宏君と由美ちゃんに話があると云う。四人は純君の部屋に集まった。
「これ読んで下さい」純君がワープロで打たれた一通の手紙のようなものを宏君に渡す。
宏君は紙の下の方に「大伴 勝」というペン書きの署名があるのに気づいた。宏君は妹のために手紙を朗読した。
「宏君、由美子さん。子供たちから話を聞きました。お二人は私との信頼関係を裏切らないために、子供たちの願いを拒んでおられるとのこと。今更ながら、お二人の立派な態度に感銘を受けた次第です。私の眼鏡に狂いはなかった。あなた方は子供たちの教師としてばかりでなく、人間としても模範足るにふさわしい方々です。そういう方々であるからこそ、私の子供たちもお二人を慕っているのでしょう。どうぞ、子供たちの願いを聞き入れてやって下さい。もちろんどうするか選ぶ権利は、あなた方にあります。うちの子供たちがお気に召さない場合は御放念下さい。そうでなければ、どうぞ思うがままに。いずれの場合も、われわれの関係には影響を及ぼしません。云うまでもありませんが、この件は他言無用に願います。大伴 勝」
由美ちゃんは言葉も無く、凍り付いたように兄の顔を見つめていた。
「追伸がある」と宏君。「当該用件に使われた時間は授業料の範囲外とします。規定の時間に達するまで、授業を延長して下さるようお願いします」

「先生!これで分ったでしょ?パパのことを心配しなくていいの」と純君。
「さ、可愛がって、宏先生!」と愛ちゃんが宏君にすり寄る。
「ちょ、ちょっと待って!ぼくらに相談させて、ね?」と宏君。

宏君と由美ちゃんは、二人だけで愛ちゃんの部屋に移動した。
「どう思う?」と宏君。
「あたし、ラッキー!って思った」と由美ちゃん。
「でも、信用していいのかな?ワープロだし、署名なんか子供にでも真似出来るだろ」
「こんな文章、10歳の子供に書けないわ。『御放念下さい』とか『他言無用』なんて、大人の文よ」
「そうは思うけど、あの子供たち知能犯だから、一杯食わされるかも知れないぜ」と宏君。
「でも、勉強に使われなかった時間分授業を延長しなさいなんて、子供は書かないと思う」と由美ちゃん。
「信じたいけどねえ」

結局、宏君と由美ちゃんは危ない橋は渡らないことに決め、純君の部屋に戻った。
「お待たせ。悪いけど、この手紙は信用出来ない」宏君はそう宣告した。
「疑り深いなあ、先生は」純君はそう云って、携帯電話を取り上げキーの一つを押した。「パパ?ごめんね、邪魔して。先生たち、あの手紙信じないって云うんだ。ぼくが偽造したと思ってるみたいなの。うん、じゃ代わります」純君が宏君に電話を渡す。
「あのー、宏ですが」
「宏君、さすがだね。コンピュータの達人はワープロ文書なんか信じないってわけだ」と勝君の声。「しかし、あれは私が書いた。間違いない。この電話も本物の私だ。信じてくれ」
「では、ほんとに?」と宏君。
「楽しみたまえ。今後、君たち二人は家族同様だ。分ったね?じゃ」電話が切れた。
宏君はしばし呆然としていた。

「兄ちゃん、何だって?」由美ちゃんが苛々している。
「やっていいって」と宏君。
「わーっ!」と由美ちゃん。
「だから、云ったでしょ?」と純君。
「ねーっ」と愛ちゃん。

宏君は愛ちゃんを新妻のように抱きかかえて愛ちゃんの部屋に移って行った。




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