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4. 覗き一発、文学賞

ある日、ずっと前におばさんの下宿にお世話になっていた田中君が訪ねて来た。田中君は大学を出てから郷里の福岡に戻り、作家として文筆活動に入った。田中君の名は新進作家として時々新聞にも載り、おばさんの鼻を高くさせていた。

「おばしゃん、御無沙汰しちょります。これは博多名物・稚加栄(ちかえ)の辛子明太子ですたい。食べてくんしゃい」
「まあまあ。懐かしいお顔を見せてくれるだけで十分。次は手ぶらで来て下さいね」
「おばしゃん、突然ばってん、今回はちっとお願いがあって来たとですよ。おばしゃんはまだ学生と…やっとーとかいな?」
「え、ええ。続けてますけど?」
「そげんですか。あたき(私)もおばしゃんにはとつけものうお世話になったとです。いまのあたきはおばしゃん抜きでは考えられんごたる」
「そんな。で、頼みとは一体?」

田中君は次回作のテーマにセックスを選んだと説明した。リアルな描写のために、実際のセックスを見る必要がある。しかし、プロのセックス・ショーなどは演技であり、嘘っぽくていけない。どうしても本物のセックスが見たい。そこで思いついたのが昔の下宿というわけだった。

「以前と同じやったら、おばしゃんは日に数回学生のお相手しとんはずたい。そいば、あの押し入れん中から覗かせてほしいとです。えてがってな頼みばってん、許してやんない」
「田中さんとは身体を交えたことがあるわけだし、いまさら恥ずかしいとも云えませんね。あなたの文筆活動のお役に立てるのなら、協力しましょう」
「ああ嬉しか!おばしゃん、さっちむっち御礼ばさせて貰いますけん」
「御礼など要りません。この辛子明太子で十分ですよ」

翌日、おばさんは押し入れの中を整理し、田中君が入れる隙間を作った。端からでは見にくかろうと、「ブスリ!」と襖の中央に鉛筆を突き刺して穴を開けた。

午後、田中君がやって来て自分の靴を下駄箱に隠し、忍び足で上がって来るとおばさんに黙礼して押し入れに入った。おばさんは水の入った水筒を田中君に手渡した。田中君はその思いやりに感謝を込めて頭を下げた。

この日の第一号は杉山君だった。「おばさん、お願いしますう」と部屋の外から声をかける。
「杉山君?なに、部屋代?」
「部屋代は先日もうお払いしましたべさ」
「あ、そうだったわね。じゃ、あれ?」
「ハイ、あれです」
「お入りなさい」

押し入れの中の田中君は思わず微笑んだ。自分もそっくりのやりとりをしたことがある。まるで、過去にタイムスリップしたようだ。自分も学生時代に戻ったような気になってしまう。田中君はおばさんが開けてくれた穴に片目をあて、細かい動きの一つ一つを脳裏に刻むべく二人を凝視した。

おばさんは布団の上に横たわり、いつものように割烹着をまくりあげ、着物の裾を割って股を開いた。杉山君はズボンとブリーフを脱ぎ、おばさんの足元に座ると「お願いします」と一礼した。おばさんは「いらっしゃい」と両手を差し出して杉山君を迎える。杉山君はおばさんの頭の脇に両肘をつき、おばさんにキスした。

おばさんは折角田中君が見学しているのだから、濃厚なセックスになるように心掛けた。杉山君の髪をぐしゃぐしゃにしながら舌を絡ませた。杉山君がおまんこを舐めると、いつもより声高に呻き、身体を苦悶させた。杉山君がペニスを挿入すると「うぐう!」と叫んだ。おばさんの過剰反応は杉山君を興奮させ、一見濃厚なセックスの助けとなるように見えたが、実は逆効果だった。杉山君は興奮しすぎてあっと云う間に果ててしまった。「三こすり半」のたぐいだった。礼儀正しく御礼の言葉を述べて去る杉山君を見送りながら、おばさんは襖の穴に向かって肩をすくめた。

おばさんはしばらく考えていたが、割烹着と着物を脱ぎ長襦袢一枚の姿になった。これなら学生はおばさんの全身を相手にできるし、おっぱいをいじくりやすい。田中君が望むエロティックな絡み合いになるのではないか。

押し入れの中の田中君は(おばしゃん、そいがよか!ええ塩梅たい!)と、心の中で感謝した。

第二号は山本君だった。「おばさん、お願いしまあす!」山本君は予備校に一年通っただけあって、他の学生より大人びていて、落ち着いた雰囲気を漂わせている。

「山本君、いらっしゃい!」
山本君はいつもと違うおばさんの様子に気がついた。長襦袢一枚のしどけない姿。(あれを開けば、全裸?)山本君も全裸になった。おばさんの横に寝そべり、山本君は先ずおばさんの頬に自分の頬を寄せて顔と顔をすり合わせた。犬や猫が主人にすり寄ってくる動作に似ていた。おばさんには山本君がいとおしく思えてくる。山本君はおばさんの首筋、耳たぶ、頬、鼻などにキスした。

(できる学生のごたる!)と押し入れの中の田中君は感心していた。この学生は余裕をもって求愛している。これならおばさんのおまんこはすぐ潤って来ることだろう。

山本君は静かに長襦袢を開いた。おばさんの、目にしみるような白い裸体が曝けだされる。山本君のペニスはぐいーん!と反り返る。

山本君はおばさんの胸に近づいた。おっぱいに手を触れず、山本君は首だけ伸ばして乳首の突端を舌でちろちろとこすった。おばさんにはただ一点の刺激である。否応なく、おばさんの意識はそこに集中する。その繊細な刺激は来る大きな刺激への予告編だった。山本君は、いきなりがばっとおっぱいに食いつく。「あうっ!」おばさんはびっくりするが、山本君が乳暈(にゅううん)と乳首を口に含んだだけと知って安堵する。山本君はもう一方の乳房を愛撫しながら、他方の乳首を噛み、舐め上げる。

押し入れの中の田中君は、久し振りにおばさんの丸裸の肉体を目撃して興奮した。思わずペニスを引っ張り出し、膨張し始めたものをしごく。田中君は目の前の学生に自分の身代わりとしておばさんを攻め、苦悶させて欲しかった。(行きんしゃい!やりんしゃい!おまんこばアタックするがよか!)田中君は心の中で怒鳴った。

田中君の願望に応えるように、山本君はおばさんのお腹を舐め、両脚の付け根へと顔を移した。顔を股の間に埋め、舌と鼻の両方を使って舐め廻す。すでにおばさんのおまんこはびとびとだった。

山本君はおばさんの股の間に座り、ゴムをつけた。山本君はおばさんの両方の太股をかかえておばさんの身体を浮かす。おばさんのおまんこが山本君のペニスに近づく。おばさんは山本君のペニスに手を伸ばし、自分のおまんこに誘導する。山本君は何のためらいもなく、いきなり勃起した全てをおばさんの体内にぶち込む。「ぎゃあああ!」おばさんの驚愕の叫び。何の予告もなく全てを入れられ、しかもお尻を持ち上げられた体位によって最高の接触が得られている。おばさんは山本君の戦略に舌を巻いた。

(おんし、やるくさ!)と田中君は心の中で学生に拍手を贈った。学生の腰の動きにつれ、おばさんの豊かなおっぱいがぶるんぶるんと揺れる。なかなかの眺めだった。

山本君のペニスぐりぐり廻しと絶え間ない突きによって、おばさんの興奮は昂まって来た。おばさんは手のやり場に困り、自分の両のおっぱいを揉む。もう一息だった。

一つだけ問題があった。おばさんは田中君の凝視する目を意識して、セックスに我を忘れて没入することができないのだ。もう一息。しかし、そこから先へ進めない。

山本君の最後が迫って来た。山本君の急な息遣い、おまんこのクイック・テンポ、それらが彼のクライマックス間近であることを示している。おばさんは一世一代の演技力でイク振りをした。(あああ、うぐぐ、あうーん!)山本君を求めるように手を伸ばし、胸をかきむしり、畳に爪を立てた。それを見た山本君は、もうこらえ切れずにどっぴゅーんどっぴゅーんと精液を発射した。(あううう)山本君は余韻を楽しむ呻き声をあげ、おばさんの脚を下ろし、おばさんにのしかかってキスをした。

二人が並んで横たわったのを機に、押し入れの中の田中君も覗きに疲れてへたりこんだ。二人の絶頂に合わせて自分もよほど発射しちゃおうかと思ったほどだったが、おばさんの押し入れを汚し精液の匂いを残すことは憚られた。

「おばさん、ありがとうございました!」とお礼を云って山本君が去った。おばさんは長襦袢を羽織ると、押し入れを開けて田中君を引っ張り出した。

「おばしゃん、一寸待ってくんしゃい。メモしておかんとすったりばい」田中君はポケットから取り出したメモ帳にダダダーっと走り書きをする。その間におばさんがお茶を入れた。

「いやあ、大収穫ですたい、おばしゃん。もう芥川賞間違いなしの傑作が書けるとですよ。ばってん、あの学生もおばしゃんばあそこまで興奮させるたあ、ほんなこつなかなかやるくさ」
「田中さん、あたしイカなかったんです。いえ、イケなかったんです」
「そげな!」
「ほんとです。あたし、田中さんに見られてると思うと、どうしても気になって」
「ばってん、あたきにはそう見えんとやったがねえ。あたきまでばり興奮ばさせられて、もうびんびんに立ってもうたとですよ」
「まあ!」

田中君がおずおずと云った。「おばしゃん、あのう、久し振りにやらして貰うわけにはいかんとですかいな?おばしゃんの裸ば見たら、このまま帰れんごとなったばい」
「田中さん。覚えておいででしょう?あたしがお相手するのは在学生だけです」
「よう覚えとうったい」
「卒業生まで受け入れてたら、廊下に団体の行列ができてしまって、あたし何にもできなくなります」
「あはは。しょんない。くやしいばってん諦めるったい」
「諦めないで、田中さん」
「はあ?」
「あたし、イキそびれて疼いてるの。あたしもこのままじゃいられない。やって!あなたがあたしに頼むんじゃなく、あたしがあなたにお願いするんだから、これはルール違反じゃないわ」
「うわー!嬉しか!これやけんおばしゃん好いとうよ!」

田中君は手早く洋服を脱ぎ捨て、おばさんに飛びかかって行った。




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