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9. 家族ゲーム

「みなはん、集まってくれておおきに」と叔父さんが云った。下宿の茶の間におばさん一家と叔父さん一家が丸くなっている。
「わいらの孫二人を紹介しますよって、わいら同様につきあって貰いとうおます。先ず、パリにいてる長男の家から来た浩二、21歳。それから、アメリカの次男の家から来た麗奈、20歳や。もう御存知かとは思うが、ぶっちゃけて云えばわいと麗奈、うちの家内と浩二、そして浩二と麗奈は好きな時に好きなように愛しあっとる。あんはんらと同じや」
浩二君は背が高く、紳士服のモデルも勤まりそうな二枚目。麗奈ちゃんは目鼻立ちの整った美人で、アメリカナイズされたハキハキした物腰が感じられる。

「浩二と麗奈もあんはんらの家庭事情はよう知っとる。この七人の間には隠すことはなんもあらへん。二人もあんはんらと親しくなりたい云うてる。二人を加えて大きな家族として、これからも仲良うお願いしたいのや」
「こちらこそ、よろしくお願いします。遠慮なく、何でも云って下さい」とおばさんが答礼する。

「浩二はあんはんにも興味持っとるし、幸ちゃんにも関心持っとるねん。なあ、浩二」
おばさんと幸ちゃんは赤くなった。二枚目の青年に指名されて悪い気はしない。
「おばさん、幸ちゃん、よろしく!」と浩二君が云った。
「麗奈は」と叔父さんが云った。「茂君に会うのを心待ちにしとった。そやな、麗奈?」
「そうよ、お祖父ちゃん。茂君、よろしくね?」と麗奈ちゃんが云った。茂君はぼーっとなって、口がきけない。
「フランスかてアメリカかて、未成年とのセックスは御法度や。だから、二人とも関心はあってもなんもできへんかった。日本でも御法度は同じやが、この家は城や。この中で近親が仲良うする分には、なんも問題あらへん。お互い、納得してやるこっちゃしな」と叔父さん。

「小父さん!」と幸ちゃんが手を上げた。「浩二さんと麗奈さん、どうして関西弁じゃないの?」
「不思議に思うやろ。実は、長男も次男も東京の大学で知りあった関東の女性と結婚したんや。子供はいつも傍にいてる母親の言葉を覚えるもんや。わいらはおおきに不満なんやけどな。あはは」

「ご免くださーい!お待ちどうさまあ!」と玄関で声がした。
「ま、何でしょ?」とおばさんが立つ。
「寿司や。わいが出前頼んだんや。今日は両家のめでたい顔合わせや。大盛りを仰山頼んだ。学生はんらの分もあるで」と叔父さん。
「まあ、学生さんら、大喜びするでしょう」おばさんがニコニコした。

しばらくして、叔父さん、叔母さん、浩二君は引き上げることになったが、麗奈ちゃんは「茂君の勉強部屋、見たい」と留まった。

茂君と麗奈ちゃんはしばし勉強部屋の中央で、二人とも微笑みながら立っていた。
「不思議ね」と麗奈ちゃんが云った。「今日初めて会ったのに、そういう気がしないの。茂君とはもうずっと前から親しかったような気がする」
「麗奈さん、ぼくもそう。おかしいぐらい緊張してないの」と茂君。
「あなたが遠い親戚であることと、私のお祖母ちゃんとしょっちゅうやってるってことが、私たちの距離を近づけてるんでしょうね、きっと」

「麗奈さん、お願いがあるんだけど」
「なあに?云ってごらんなさい」
「麗奈って名前、とても好きなんだけど、麗奈さんのこと『お姉ちゃん』って呼んでいいでしょうか?」
「素敵!私、弟いないから、かわいい弟ができて嬉しいわ!茂君、じゃあ『いいでしょうか』なんて他人行儀もやめましょ。姉と弟でそんな風に云わないでしょ」
「そうだね、お姉ちゃん!」

「おいで、茂君。抱いてあげる」
茂君は静かに麗奈ちゃんに歩み寄った。麗奈ちゃんは両手を広げて茂君を懐に入れ、やさしく抱き締めた。茂君の顔はちょうど麗奈ちゃんの胸の谷間に埋まった。
「茂君、なに嬉しそうな顔してるの?」
「あのさ、他人同士だったら当然こんなことしないし、姉と弟だってこんな風に姉さんのおっぱいに顔埋めたりできないでしょ。でも、ぼくらはできる。今日初めて会ったのにこんなことができる。その気になればセックスだってできる。口説いたり、作戦を考えたりしなくていい。ぼくは幸せだなあって思ったの」
「そうよ。作戦なんか要らない。茂君、いまやりたい?」

茂君は麗奈ちゃんの手をとらえ、自分の股ぐらへ誘導した。
「びんびんね!」と麗奈ちゃんは微笑んだ。
「でもね、お姉ちゃん。自分でも不思議なんだけど、今日はやりたくないの」
「どうして?」
「だって、こうして美人のお姉ちゃんと抱き合ってるだけで幸せ一杯なんだ。御馳走は少しずつ食べたいじゃん?メイン・メニューは次回にとっておいた方がいいかなと思って」
「なるほどねえ。茂君もただのアニマルじゃないってわけね?」
「なんだい、意地悪!」

「じゃあ、残りは次回?」
「うーん、一つだけ予告編ってことで…」
「なに?」
「キスしよ」
「オッケー。じゃあ、ベッドへ行こう」

麗奈ちゃんはベッドに横たわった。茂君が横から麗奈ちゃんの顔の上に近づく。二人はしばし、顔を見合わせた。麗奈ちゃんの目に、ポツンと欲情の炎が灯る。茂君の目にも麗奈ちゃんを女として見る、雄(おす)の激情が灯る。茂君は麗奈ちゃんに唇を近づける。二人はじゃれあう子犬同士のように、唇を触れ合った。茂君は舌を出して、麗奈ちゃんの唇を舐めた。閉じた麗奈ちゃんの唇に舌を挿入し、ついに二人の舌が触れ合った。茂君の脳内がショートし、あちこちで火花が明滅する。

茂君は自分の幸運を再確認するため、キスを中断し麗奈ちゃんの顔を見つめる。美しい麗奈ちゃんがゆっくり目を開ける。「綺麗だね、お姉ちゃん!」麗奈ちゃんは満足の笑みを浮かべて茂君を強く抱く。

茂君は麗奈ちゃんの頬にキスし、額にキスし、目にキスし、顎にキスした。首筋と耳は後日のためにに残しておく。今度は情熱的に麗奈ちゃんの口を攻める。「あうーん」と麗奈ちゃんが呻く。
「いけね!」と茂君が叫んだ。
「なに、どうしたの?」と麗奈ちゃん。
「お姉ちゃんのおっぱいに触っちゃった。とっとくはずだったのに。女の人とこういう体勢になると、自然におっぱいに手が出ちゃう。くせだね。困ったもんだ」
「あははは。オッケー。じゃ、今日はここまでにする?」
「そうだね」

麗奈ちゃんはベッドを下り、衣服の皺を伸ばす。「じゃあ、本気でやりたくなったら連絡して?」
「お姉ちゃんもやりたくなったら、電話してよ」
「わかった。じゃ」麗奈ちゃんは茂君の唇に別れのキスをし、アメリカ風に振り返りもしないで去って行った。

普通なら、こういう場合、茂君はオナニーするか、母親か妹のところへ行きたくなるのだが、いまはそういう気が全くしなかった。麗奈ちゃんとのこれからの悦楽を思うと、それだけで幸せだった。




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