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12. コンドーム戦争

ことの起りは緑さんの妊娠だった。美容整形後モテモテになった緑さんは、下宿の学生たち、茂君、ジミー、叔父さん、浩二君、早苗ちゃんのお父さんらとやりまくっていた。ある日、生理がストップし、数ヶ月後にはお腹が出て来た。緑さんはおばさんに相談し、ことがことなので、いつしかそのニュースは誰もが知るところとなった。

緑さんが「相手は全員コンドームを着用していた」と証言したので、一括購入しているコンドームの大箱が疑われた。不良品ではないかということでメーカーに送り返され、綿密な調査がなされた。メーカーは胸を張って品物の安全性を報告して来た。

となると、男性軍の誰かがタイミングを外してコンドームを着けたと断定された。ペニスから最初に顔を出す一滴(アルカリ液、正式名はカウパー氏腺液)にも精子が何億と含まれているのだが、男性の多くは、この透明な一滴を軽視する。精子は、後ほどどっくんどっくんと出て来る白っぽい液体にしか含まれていないのだろうと思い込んでいる。カウパー氏腺液が女性の膣内に漏れれば、それは射精と全く同じことなのだ。

麗奈ちゃんはおばさん一家の女性(おばさん、幸ちゃん、サブリナ)、叔父さん一家の女性(叔母さんと自分)、下宿している緑さんと百合子ちゃん、および家族同様の早苗ちゃんらを集め、コンドーム完全着用促進運動女性連盟(略称・コン促連)を結成した。緑さんのように妊娠させられてはたまらないので、セックス開始にあたって男性は直ちにコンドームを着用せよというのが要求項目であった。

男性軍は拒否した。おまんこの最初ぐらいは抜き身で女性のひだひだを味わいたいというのが理由だった。男女両軍の主張は物別れとなり、膠着状態が続いた。この間に、緑さんのケースは実は想像妊娠であることが判明し、一同ほっとしたのだが、コン促連は「男性の無理解はいぜんとして重大問題である」とし、男性軍との対決姿勢を変えなかった。コン促連の会合で、麗奈ちゃんは何と一ヶ月のセックス・ストライキという方針を提起した。これは男性軍の好色さを十分知っている麗奈ちゃんが、「一週間も経たずに敵は降伏するだろう」と読んだ末の恫喝的戦略であった。

「ギリシア喜劇に『女の平和』ってのがあるの」と麗奈ちゃんが女性軍に説明した。「男共の野蛮な戦争を止めさせるため、町の女性たちが一斉にセックス・ストライキに入る。男共は気が狂いそうになって、戦争を止めるというお話。ね?この戦略はギリシア時代から折り紙付きなのよ」
「やるからには一糸乱れずやらなあかんな」と叔母さん。「この中の誰かが裏切って男衆とおまんこしたら、こないな作戦、蛙の面にしょんべんや」叔母さんは男性軍を早く屈服させて、奔放なセックス・ライフを再開したいのである。
「男の人たちがサブリナに殺到するという恐れもあるわよ」と幸ちゃん。
「そう。だから、隣りの部屋のジミーと幸ちゃんが入れ換わって、幸ちゃんにサブリナをガードしてほしいわ」と麗奈ちゃん。
「私、お兄ちゃんと一緒の部屋ですから、やられちゃうかも」と百合子ちゃん。
「緑さん、一時的に百合子さんを泊めてあげられる?」と麗奈ちゃん。
「もちろん」と緑さん。
「私もお父さんと二人暮らしなんですけど」と早苗ちゃん。
「早苗、あたしと一緒に寝よう、ジミーの部屋で」と幸ちゃん。
「それで問題はないわね?じゃ、男性軍に通告しましょ」と麗奈ちゃん。

「なんやてー?セックス・ストライキ?」叔父さんが唖然とした。
「一ヶ月だって?」と浩二君。
「もちろん、あなた方がコンドーム完全着用をのめばストなんかしない。今すぐでもやれるのよ」と麗奈ちゃん。
「わいら、抜き身がええねん。なあ、茂君」
「避妊ピルを服むってのは駄目?」と茂君。
「避妊ピルってのはね」と麗奈ちゃん。「毎日服み続けなきゃなんなくて大変なの。副作用も報告されてるし」
「五年間効果のある子宮内避妊具ってのがあるそうだよ。費用も安いらしい」と浩二君。
「それ婦人科で入れて貰うんでしょ?あたし、やだーっ。12歳で避妊具入れて貰いに行くなんて、ねー、早苗?」と幸ちゃん。
「とんでもないわ」と早苗ちゃん。14歳の百合子ちゃんも頷く。

「わいらより、おたくさんらの方が一ヶ月もたんちゃうか?」と叔父さん。
「もし一ヶ月で皆さんがオーケーしない場合は、私たちは無期限ストに突入します」と麗奈ちゃん。
「無理や、無理や。やめとき」と叔父さん。
「あんた!」と叔母さん。「うちらは真剣なんや。軽く見たら承知せえへんで」
「なに云うとるんや、更年期目前のおばんが」
「なんやてーっ!」叔母さんが叔父さんに掴みかかる。一同が割って入る。

「じゃあ、折角決意したわけだから実行して貰いましょうよ」と浩二君。
「せや。わいらは全員ホモになって、もう女っ気なしで済むようになるかも知れん」と叔父さん。
「また、しゃあしゃあと。女無しで一日もおられんくせしよって」と叔母さん。
「小父さんさあ」と茂君。「獣姦ってやったことある?馬か羊一頭仕入れて来て、みんなで可愛がるってのどうかな?」
「そら名案や。もちろん、雌やな?羊の方が手がかからんでよさそやな。ストライキ終わったらジンギスカン鍋で食えるし」
「あんた方ーっ!」と麗奈ちゃんが怒鳴る。「いい加減にしなさいよ!われわれ女性を馬鹿にしてるんじゃない?」
交渉は決裂した。

三日経ち、男女両軍の欲求不満がつのった。女性軍は奥の間でレスビアンごっこを始めた。男性軍は…ああは云ったものの、誰もホモごっこを始めたりしなかった。羊を連れて来る人もいなかった。外へ女性を漁りに行く人もいなかった。ストライキ中の女性たちは、年齢、容貌、体型、性格、まん格、非常にバラエティに富んでいて、とてものことに町の商売女などと較べられるものではなかった。

男性軍は、この数日で「仕方がない。最初からコンドームを着けてもよい」という気になっていた。しかし、女性軍の云いなりになることに抵抗があった。ここで屈服すれば、「一回のおまんこで最低二回は女性をイかせること」とか「最低40分は女性を悦ばせること」などという要求が出て来かねない。だから、何とか一方の云いなりではない両軍の妥協案というところで手を打ちたかった。しかし、こちらから逆提案するいい材料が見当たらなかった。

一週間経った。男性たちの精嚢は溢れかねない状態だった。そこへ救いの女神が現れた。たまたま三浦君のお母さんが上京して来たのだ。三浦君に云わせれば母親は“淫乱”な未亡人で独身女性である。三浦君はお母さんを茂君の勉強部屋に招じ入れ、男性軍に紹介した。すでに山本君とはやったことがあるお母さんだから抵抗はなかったが、何しろ八人を相手というのはちと過酷である。茂君は横町へ駆け出して行き、健ちゃんのお母さんとその13歳の娘の典子ちゃんを連れて来た。男性軍は三人の女性を取り囲んで快哉を叫んだ。

“スト破り”の女性たちのよがり声はコン促連の耳に届いた。一同は激昂したが、何しろ身内の裏切りではなく、事情を知らない外部の女性たちなので吊るし上げることは出来なかった。女性たちの多くは茂君の部屋の性の饗宴を想像し、おっぱいを揉んだり、おまんこを撫でさすっていた。叔母さんは大量に消費されるであろう精液と、それを自分が享受出来ないことに歯ぎしりし、もう気が狂いそうだった。リーダーである麗奈ちゃんにもどうしてよいか分らなかった。

性の饗宴が一段落した頃、三浦君のお母さんがこう云った。「大勢さんにはゴム使って貰いましたけど、息子一人には今日は抜き身でやらして上げました。安全な日だったもんですから」
男性軍は互いに顔を見合わせた。男性軍は三浦君のお母さんから詳しいことを学んだ。「これだ!」

男女両軍は再び団体交渉の場に着いた。男性軍は「コンドーム完全着用に協力する。さりながら、我々の抜き身願望も捨てがたい。よって、女性各個人は銘々の生理サイクルを計算し、安全日には我々を抜き身で受け入れてくれるよう要望する」と通告した。麗奈ちゃん以下女性軍は丸くなってひそひそと相談し、その妥協案をのむことに決定した。

セックス・ストは終わった!男女両軍とも「わーい!」と叫んで抱き合って喜んだ。 「ほな、今日はお祝いの大宴会をやろか?」と叔父さんが云った。 「ジンギスカン鍋がいいわ。羊はどこ?」と麗奈ちゃんが云った。




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