16. 前戯なき戦い
茂君はやりたかった。ムラムラしていた。幸ちゃんの部屋に行くと、すでに叔父さんが幸ちゃんに乗っかっていた。母親を探すと、すでに早苗ちゃんのお父さんとやっている最中だった。二階に上がって、緑さんの部屋を覗く。浩二君がいて緑さんとやっていた。百合子ちゃんは兄の杉山君とやっていた。山本君の部屋へ行くと、山本君は叔母さんを組み敷いていた。三浦君は早苗ちゃんとやっていた。吉田君の部屋では麗奈ちゃんが吉田君にまたがっていた。おまんこは売り切れだった。
健ちゃんの家に行って健ちゃんのお母さんか典子ちゃんを呼び出そうかと思ったが、この分ではあの家も家族でやっている最中のような気がした。今日は仏滅なのだろう。茂君は勃起したお珍々をかかえて途方に暮れた。こんなことは前代未聞だった。仕方がない。コンピュータに向かいXXX写真でも見てオナニーするしかなかった。
と、茂君の勉強部屋の窓から誰かが室内を覗いていた。黙って門を入って来たのも問題だが、オナニーを見られたのには憤慨した。
「だ、誰だ!」と茂君が怒鳴った。窓に近寄ると、汚いボロボロの服を来て、ぼさぼさの髪にこれまた汚い野球帽をかぶり、垢だらけのように黒い顔をしたホームレスのような男が立っていた。茂君は(行け!行け!)と拳を振り上げて見せた。
「追われてる!助けて!」とホームレスが云った。
「追われてるう?警察に?」と茂君。
ホームレスは首を振った。
「あんたみたいな人を助ける気はない。出てけ!」と茂君は突っ撥ねる。
ホームレスは両手を合せて茂君を拝むようにする。
「助けてくれればやってあげてもいい」とホームレスが云った。
「何を?」と茂君。
浮浪者は人差し指と中指に親指を挿入して見せた。
「ぼくはホモじゃないよ。とっとと出てってくれ!」茂君は窓から離れる。
ホームレスはドンドン!と勉強部屋のドアを叩いた。
「このーっ!」頭に来た茂君はホームレスを追い出そうとバットを手に表へ出た。とたんにめまいがした。そのホームレスは三ヶ月以上風呂に入っていないようで、物凄い悪臭がしたのだ。詰め寄りたいが臭くて近寄れない。闇雲にバットを振り回すが、ホームレスは地べたに這いつくばって動かない。
「追い出されたら悪者に掴まる。追い出さないで!」とホームレスは必死である。
「悪者ってなんだい?」と茂君。
「頼む、風呂に入れてくれ。そしたら訳を話す」
茂君は風呂の支度をした。汚い浮浪者に家族の風呂を貸すのはためらわれたが、浮浪者の真剣な目に打たれたのだ。
「おう、ごめんよ。誰かいたら出て来いや」と玄関で男の声がした。ホームレスはお風呂場の茂君の近くへすっ飛んで来て、盛んに頭を横に振り、口に指を当てた。(自分のことは内緒にして)という仕草だ。茂君が出て行くと、一見してやくざと分る風体の男が立っていた。縦縞のスーツにピンクのネクタイ、長いもみ上げにサングラスというスタイルである。
「おう、坊や。ここにこんなスケが舞い込んでこなかったか、ええ?」と、男は写真を出す。
「そんな女の人見たこともないすよ」と茂君。事実である。
「じゃ、これは?」と男は別な写真を出す。茂君はどきっとした。あのホームレスを遠くから撮った写真だった。(追われているというのは本当だったのだ!)
「誰ですか、この人?乞食じゃないの?」と茂君はとぼける。
「知ってんのか、知らねえのか、どっちなんでえ!」
「し、知りません」
男はふと上がりがまちにある汚いスニーカーに目を止めた。茂君はドキンとした。あのホームレスの靴である。
「この汚ねえ靴、誰んでえ?」とやくざ。
「ぼくのです。これから汲み取りをするとこなんで。いい靴はもったいないから。ヘヘ」と茂君。
「ここら辺、まだ汲み取りなのーっ?衛生局が来るんじゃないの?」とやくざ。
「汲み取りなんですよ。手伝ってくれます?」と茂君。
「冗談じゃねえや。バーロー!」やくざは、もう汲み取りの臭いを嗅いだかのように逃げて行った。
茂君は茶の間でホームレスが風呂から上がって来るのを待っていた。何か盗んで行かれては困るから、監視しなくてはならなかったのだ。
「あー、久し振りでいいお湯だった!」ホームレスがバスタオルを身体に巻いて出て来た。
「エーッ!?」茂君が腰を抜かした。垢を落したホームレスは女だったのだ!それも20代の結構な美人である。「あ、あなた、女のヒトだったの?知らなかったーっ!」茂君は慌てて座布団を勧める。
「私は樹里(じゅり)って云うの。あなたは?」
「ぼ、ぼく、茂です」
「茂君、何か食べさしてくれる?私、野菜が不足してるの」
「じゃ、冷蔵庫見てお好きなのどうぞ」
樹里さんが野菜サラダを作っている間に、茂君は母親のムームーを探し出した。それを樹里さんに着せる。樹里さんがサラダとバナナ、ミルクなどを持って茶の間に戻って来た。
「悪者って、あのやくざのことですね?一体どうしたんです?」と茂君。
「あの男は関東更生会桃組のちんぴらなの」と樹里さん。
「“更生”しそうには見えなかったけどなあ。“桃組”って何か幼稚園風ですね」
「桃組は結構縄張りの大きい組織なのよ。知らないの?」樹里さんはサラダをばくばく食べる。
隣りの部屋から「あうーん、あーん」という女の呻き。おばさんがよがっているのだ。
「誰かご病気なの?」と樹里さん。
「いえ、そうじゃないです」と茂君。「で、どうしてその桃組に追われてるんです?」
「私、桃組の組長の妹なの」と樹里さん。
「エーッ!で、どうして身内に追われるんですか?」と茂君。
「それは長い話なんだけど…」と樹里さんがバナナの皮を剥きながら話し出そうとした矢先、奥の部屋から早苗ちゃんのお父さんが現われ、茂君に挨拶して帰って行き、続いておばさんも出て来た。
「あら、お客さん?どうも、茂の母です」おばさんは膝をついて挨拶する。
「私、樹里です。初めまして」
「まあ、よく似たムームー。あたしのとそっくり」とおばさん。「茂、あたし一寸お風呂入る。汗んなっちゃった」おばさんがお風呂場に去る。ほどなくして「ギャーッ!」という悲鳴。茂君が飛んで行くと、おばさんが倒れている。
「どうしたのさ!しっかりして、お母ちゃん!」茂君が揺さぶる。
「なに、このお風呂。凄い垢だらけ。あたし、気分悪い。横になりたい」茂君に抱えられておばさんは、また奥の部屋に戻って行く。
「やっぱりご病気なのね」と樹里さん。
茂君は仕方なくお風呂の清掃をした。樹里さんにやらせるのが筋だが、どうもあまり繊細な神経を持っていないようだから、自分でやる方が間違いがない。掃除が終わると、茂君は樹里さんを勉強部屋に案内した。
「で、どうして追われてるんですか?」と茂君。
「桃組の組長(私の兄ね)の兄弟分に赤組の組長がいたの。私はその赤組の組長と結婚したんだけど、縄張り争いで夫は兄弟の盃を返して兄と抗争を始めた。ドンパチの結果、夫は桃組から撃たれて死んじゃって、赤組は桃組に吸収され、私は兄の許へ戻ったの。兄はずっと独身だったんだけど、戻って来た私を変な目で見るようになった。ある晩、『ずっとお前が好きだった』って、私を強姦しそうになったの。近親相姦なんてご免だから、私は必死で兄を振りほどいて逃げ出し、以来ずっと家に戻ってないの。兄はあんな風に手下を総動員して私を捜索してるってわけ」と樹里さん。
「だけど、何もあんな垢だらけで真っ黒になることもなかったんじゃないですか?」と茂君。
「キャバレーとかソープで稼げばいいって云いたいんでしょ?駄目よ。関東更生会から人相書きが廻ってるから、すぐ捕まっちゃう」
「お兄さん、『ずっとお前が好きだった』って云ったんでしょ?酔っ払って気まぐれ起したんじゃなく」と茂君。
「素面(しらふ)だったわ」と樹里さん。
「じゃあ、真面目なんだからやってあげればよかったのに」
「ふざけないでよ。兄と妹でやれますかって」
「ちょっと待ってて」と茂君が部屋を出て行く。
「何よ、お兄ちゃん、ぐんぐん引っ張って来て!」と幸ちゃん。「あら、お客さんだ」
「樹里さん、これ妹の幸子。幸、こちら樹里さん」と茂君が紹介する。
女同士ぺこんとお辞儀をする。
「幸、樹里さんは兄妹でセックスしちゃいけないと云うんだ。お前、どう思う?」
「へえ。じゃあ、お兄ちゃんにこう抱きつくのは?」と幸ちゃん。本当に兄にすがりつく。
「そのくらいなら、別に」と樹里さん。
「じゃあ、こうお兄ちゃんにキスしちゃいけない?」と幸ちゃんが兄の唇に吸い付く。
「うーん、きわどいとこね」と樹里さん。
「ほんじゃ、こういうディープ・キスは?」と茂君。兄妹が舌を絡める。
「まあ!」と樹里さんが呆気に取られる。
「では、これは?」茂君が妹のシャツを捲り上げ、乳首をいじる。
「んまあ!」樹里さんの顎が落ちる。
「これはどう?」と幸ちゃんが兄のズボンから勃起したペニスを取り出してしごく。
「そしてこれは?」と茂君が妹のスカートに手を入れ、おまんこをいじくる。
樹里さんは目の前の兄妹の実演に度肝を抜かれ、ぺたんと座ったまま声も出せない。
茂君は妹の身体を床に横たえ、おっぱいを舐め、おまんこに指を出し入れしている。やがて、茂君がズボンを脱ごうとした時、
「止めて!もう分ったわ!」と樹里さんが云った。
「何なら、もう一組兄妹でやってる人たち呼んで来てもいいけど」と茂君。
「もう十分よ」と樹里さん。
「あたし知ってる。樹里さんのあそこ、びとびとなのよ」と幸ちゃん。
「幸ちゃん!」樹里さんが顔を赤くする。
「図星でしょ!あはは。じゃ、お兄ちゃん、あたし忙しい身体だから行くわ。樹里さん、またね!」
幸ちゃんが出て行った。
「樹里さん、お兄さんどうします?」と茂君。
「帰ったら、こんな風にする」と樹里さんは茂君の胸に飛び込んだ。
茂君は樹里さんのおっぱいを揉みながら、「約束覚えてます?」と聞いた。
「え?『助けてくれたらやってあげる』って云ったこと?あなた断ったじゃない」
「だって、男の汚い浮浪者に見えたんだもの」と茂君。
「いいわ。予行演習しましょ。前戯はもう要らない。すぐ入れて!」
「オッケー!あ、でも『よくもおれの妹に手を出したな』とか云ってお兄さんがドス持って来ないでしょうね」と茂君。
「大丈夫よ。逆に兄があなたに感謝すべきだわ。妹とやれるようになった恩人として。さ、やりましょ!」
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