6. 怪人二面相
そのころ、東京の町という町、家という家では、二人以上の人が顔をあわせさえすれば、まるでお天気のあいさつでもするように怪人「二面相」の噂をしていた。「二十面相」ほどの技量を持っていないので、変装のレパートリーは二つの顔だけというちょっと貧弱な怪人だった。この泥棒は現金や宝石、美術品などには目もくれず、“処女”だけを狙っておまんこして去って行くのである。この“処女泥棒”の手際はいつも見事で、警戒にあたった警官隊も機動隊も自衛隊も愚連隊も防ぎようがないという始末だった。
この賊には妙な癖があった。必ず前もって「いついっかに処女を頂戴に参上する」という予告状を送ってくるのだ。大胆不敵・傍若無人の怪盗と云わねばならない。本当の処女は本気で怪人二面相を恐れ、もう処女でない若い女性たちは真実を隠すために怪人二面相を恐れるふりをした。オールドミスは、まだ処女なのに「あたし、男性経験豊富だから」と恐れないふりをした。
その怪人二面相から、こともあろうに幸ちゃん宛に予告状が届いた。さあ、未亡人下宿は大騒ぎ。
「でも、あたし処女じゃないよ?」と幸ちゃん。
「処女じゃなくたって、やられることに変わりないぜ」と茂君。
「あたし、『来るものは拒まず』だから、やられたって別にいいけど」
「駄目よ!」と麗奈ちゃん。「レイプは犯罪よ、女性への冒涜だわ。断じて許せない!」
「けど不思議やなあ」と叔母さん。「麗奈を狙ってもええのに、幸ちゃんとはなあ」
「そうよ、私を無視するなんて許せない!」と麗奈ちゃん。
「どっちも処女じゃないけどね」と茂君。
「そうや。処女じゃない少女を狙うちゅうの、ほんまおかしいがな」と叔父さん。
「これまでも少女ばかり狙ってましたっけ?」とおばさん。
「いや」と叔父さん。「妙齢のお嬢はんばかりのようや」
「『あたし処女じゃないよ』って張り紙しようか?」と幸ちゃん。
「やめてよ!恥さらしだわ!」とおばさん。
予告はその夜の零時だった。幸ちゃんの身を案じた人々が大勢押しかけて来て、下宿の一階は満員だった。
そこへ一人の少年が現れた。
「失礼します。わたし、明智大五郎探偵事務所の助手で大林というものです。先生はいま外国旅行中ですので、わたしが参りました」と少年が云った。
「あの、少年探偵団の?」と茂君。
「ハイ、そうです」大林君は胸のバッジをちらつかせた。
「でも、お願いした覚えはありませんけど?」とおばさん。
「御心配なく。怪人二面相は先生の宿敵なので、経費を請求するようなことはありません」
「けど、あんはん、何か策があるのんか?」と叔父さん。
「少年探偵団の12名がこの家の周囲の物陰に潜んでいます。怪しい者を見つけたら一斉に笛を吹き鳴らします。また、この町内全体に柳生一族が結界を巡らしています。怪人二面相も、この二重の囲みを破って来られるとは思いません」と大林君。
「怪人二面相はマンホールを出入りしたりするけど?」と茂君。
「大丈夫です」と大林君。「すでに強力接着剤で蓋が開かないようにしてあります」
「大分前、マンホールの中に警官隊が入って行ったで!連中、出て来られへんがな」と叔父さん。
「連絡ミスがあったようですね」と大林君は動じない。
「大きい気球で空から来るという手もあるわ」と幸ちゃん。
「屋根の上にも探偵団の一人が待機しています。心配ありません」
「いつの間に昇ったんです?」とおばさん。
「まるで泥棒みたいやな」と叔父さん。
「零時までに、あと一時間。幸子さん、あなたのお部屋へ案内して下さい」と大林君。
「ここで大勢と一緒の方がええんちゃうか?満座の中でレイプして逃げることは出来へんで」と叔父さん。
「しかし、こう賑やかではわたしの五感を働かすことが出来ません。さあ、幸子さん」
二人は二階の幸ちゃんの部屋に移動した。
「恐いですか、幸子さん?」と大林君が聞いた。
「なんとなく。大林さん、幸ちゃんと呼んでいいのよ」
「じゃあ、幸ちゃん。恐かったらぼくのそばにいらっしゃい」
二人は寄り添って床に座った。
「大丈夫です。ぼくがいる限り、キミは安全です」大林君が頼もしく断言した。
零時に30分前となった。一階の大勢の話し声も途絶えて、シーンとなった。それに反応して幸ちゃんも落ち着かなくなる。幸ちゃんは大林君にすがりつく。大林君は優しく幸ちゃんの背中を撫でていたが、
「そうだ!名案が浮かんだ」と云った。「幸ちゃん、キミ、ぼくのこと嫌い?」
「いいえ」と幸ちゃん。
「じゃ、二人でおまんこしましょう。もうやっちゃってるところへ二面相が来たって、手遅れというものです。もうふさがっているわけですから。ワハハハ」大林君はそのアイデアを自画自賛した。
幸ちゃんは怪人二面相とやるよりは少年探偵団の団長とやる方が好ましかった。
大林君が幸ちゃんを強く抱き締め、幸ちゃんの首筋を舐め、耳たぶを噛んだ。
「あうううう!」幸ちゃんが声を漏らす。
大林君は幸ちゃんの耳の穴に舌を入れ、周辺を舐め回す。幸ちゃんの耳に「ゴボゴボべちゃべちゃガバゴボ」という溺れる時のような音が轟く。
「あわわーん!」幸ちゃんが叫ぶ。
大林君は幸ちゃんのブラウスと下着を捲り上げ、胸を剥き出しにする。スカートを捲り上げ、パンティを引き下ろす。大林君の指は幸ちゃんのおまんこを撫で、やがて愛液の滴りを感じ取る。大林君は息を弾ませ、もどかしそうにズボンとブリーフを太股まで下ろして、幸ちゃんの両脚の間にいざり寄った。幸ちゃんが黙って傍らのコンドームの大箱を指差す。大林君は素直にゴムを装着したが、大箱がそこに存在する意味を考えることはしなかった。頭は幸ちゃんのおまんこへの突入で一杯だったのだ。
大林君は時計を見上げた。零時に10分前だ。満足の笑みを浮かべながら、大林君は幸ちゃんのおまんこに狙いを定めた。大林君がグイッとペニスを突っ込む。
「アウーッ!」幸ちゃんが叫ぶ。
大林君はしばしその状態を味わうように静止し、やがて小刻みにおまんこを開始した。
「あうあうん、あははん!」異常な状況下のセックスに、幸ちゃんの身体は早くも昂ぶって行く。
大林君のテンポが上がり、彼の腰の一突き、一突きは幸ちゃんの身体を押し上げた。
と、見よ!幸ちゃんの部屋の窓の外に、一人の男の首がぶら下がった!大林君はおまんこしながらそれを見て、幸ちゃんへの攻撃にラストスパートをかけた。腰の動きを継続しながら、片手で幸ちゃんのクリトリスを撫でる。もう一方の手は幸ちゃんの乳首を撫でる。この三方からの攻撃に幸ちゃんはたまらず、
「あわわわ、あぐぐ、あおーん!」と呻いてイってしまった。
大林君は可愛い少女のクライマックスに興奮し、自分もずばこんずばこんと精液を発射した。
ちょうどその時、階下のボンボン時計が12時を打ち始めた。大勢の安堵の声が湧き起る。
「二面相、来なかったわね、大林さん」と幸ちゃん。
「いや、彼は来て望みを遂げたのです」大林君はズボンを上げながら云った。彼は窓を開けて、外にぶら下がったロープに飛びつき、「私が二面相なのだ。わはははは!幸ちゃん、キミの処女は私が頂いたのだ、約束通りの時間に」大林君の身体は次第に上昇し、窓から消えかかる。
幸ちゃんは窓に駆け寄り、「でも、あたし処女じゃなかったのよーっ!」と叫んだ。
「エーッ!」怪人二面相は驚きの声をあげた。さっき窓から首が見えた男が、屋根の上に二面相を引っ張り上げている。その背後にはゴンドラ付きの巨大な気球が浮かんでいた。
「屋根の上は大丈夫って云ったくせに。嘘つき!」と幸ちゃん。
「泥棒の云うことを信じちゃ駄目よ」と二面相。彼は「おい、幸ちゃんは処女じゃなかったそうだ。お前のデータベースどうなってんだ?」と助手をなじった。
「ウイルスのせいでやすかね?困ったもんだ」と助手。
「困ったもんだはてめえだよ!」二面相は助手を突き飛ばすと、一人でゴンドラに乗り込み、気球を屋根に止めていたロープをといた。
気球は夜空にぽっかりと浮かんで、いつしか東の空へと消えて行った。
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