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8. 仔豚の如き君なりき

おばさんの兄さんが南米へ去って後、未亡人下宿に様々な変化があった。

おばさんの兄さんは実は大変な金持ちだったらしく、下宿の裏の空き地を地主の言い値で買ってしまった。それだけではない。空き地を地ならししたところへ700万もする小型のモービル・ホームを購入して設置し、周囲には塀まで張り巡らした。帰る前に忙しく出歩いていたのはこれらの手配のためだったのだ。そのモービル・ホームは、半分は幸ちゃんの勉強部屋として提供され、半分はおばさんの兄さんが日本に来た時に滞在するためのスペースだという。

幸ちゃんは大学生たちと離れて住むことに抵抗があったが、綺麗な部屋の主になるという誘惑に勝てず、ついにモービル・ホームに引っ越した。すると、下宿人の部屋が一つ空くことになった。おばさんは近くの大学に「空室あり」の情報を入れた。

すぐ応募の学生がやって来た。おばさんが面接し、学習意欲や家庭環境について尋ねた。問題なかった。その学生がすぐ引っ越して来たが、それはこの下宿始まって以来の未曾有の出来事だった。何故なら、それは女子学生(!)だったからだ。すでに下宿していた学生一同にはショックだった。もう一つショックだったのは、その女子学生がひどいブスだったことだ。さらにひどいのは、その女子学生はいまどき珍しい正調茨城(えばらぎ)訛りで話すことだった。

しかし、おばさんはその学生を断ることは出来なかった。性差別は好ましいことではないから、「この下宿は女子禁制です」とは云えない。同様に、「あなたのようなブスは入居させられない」とも云えないし、「茨城弁は駄目」とも云えない。というわけで、その女子学生・緑さんが幸ちゃんの出た後の部屋を引き継ぐことになった。

とんとんとんと階段を上がって、茂君が緑さんの部屋のドアを開けた。
「ワッ!」と室内で着替え中の緑さんが驚いた。実は茂君の頭には、まだこの部屋にいるのは妹であると刷り込まれていて、切り替えが出来ていなかったのだ。だから、今も「妹とやりたい」と思ってずんずん入ってしまったというわけだ。
「あーっ!すいません。ご免なさい!失礼!」茂君は廻れ右して部屋を出かかる。
「茂さん!行がねで!ちっと話すっぺよ」と緑さんが云った。
「はあ?」茂君がストップモーションになる。
緑さんは、ばばっとワンピースをかぶると、
「オッケー、もうこっち向いでいいがら」と云った。

茂君は緑さんと向き合って座った。緑さんはころころっとした体型で、顔立ちは悪くないのだが、真ん中に鎮座ましましている鼻がいけなかった。二つの穴が正面を向いていて、まるで仔豚なのだ。いくら好き者の茂君でも、この豚さんとやる気にはならなかった。
「茂さん。あだし、偶然この下宿に来たんでねんだよ。ずっと時期さ待ってたんだ。それも茂さんが目当てでよ」
「えーっ?」意外な緑さんの言葉に、茂君は驚いた。
「ほれ、茂さん、モナミの塔のメンバーだっぺ?実はあだしもそうなんだわ。そんで、茂さんさ知ってんのさ」
「ぼく、緑さんのこと覚えてませんけど?」
「そらそうだっぺよ。茂さんは人気ナンバー1で、あだしは誰からもお呼びがかからね最低のメンバーだがんね」

茂君は慰めの言葉も出なかった。
「あだしね」と緑さんが続ける。「見ての通り豚みでな鼻で、二人の弟と一緒に『三匹の仔豚』って云われで育ったんだ。ブスであるごどは認めっぺ。でも」と云いつつ、緑さんはバッとワンピースを捲り上げた。素っ裸だった。可愛い丸々したおっぱいが誇らしくそそり立っている。緑さんは服を下ろしながら「わだしの身体は悪(わり)ぐねし、おまんこだって上物だと云ってくれる人もいんだ。問題は、あだしと寝た男は二度とあだしとやりたがらねってことなんだわ」
「へえ?そりゃまたどうして?」と茂君。
「あだしのよがり声が聞ぐに耐えねえんだって」
「ふーん?」

「あだし、人気ナンバー1の茂さんなら何とかあだしの悩み解決してくれんでねえべが思って、それでこの下宿に来たがったのよー。茂さんとやった人も、茂さんのごどみんな誉めてっからよ」と緑さん。そうまで云われれば茂君も悪い気はしない。セックスで人助け出来るのなら本望である。もちろん、さっきチラッと見せられた緑さんの肉体が目に焼き付いているからでもある。問題の顔だが、しっかり抱き合っちゃうか、背後からやるんなら顔は問題ではない。茂君はその気になった。
「オッケー。じゃ、やっぺ」茂君に茨城弁が伝染した。
「うわーっ!嬉しいべー。ナンバー1とやれるなんて、夢じゃながっぺか!」

茂君と緑さんは素っ裸で抱き合った。茂君は目をつぶって緑さんにキスした。両手は早くも緑さんのおっぱいを揉み上げている。形も重さも弾力も、なかなかの逸物である。顔さえ良ければもてもてになるはずだ。茂君は緑さんを横たえ、69の体勢になった。
「あだしとやる人、みなこうしたがるんだわ。よっぽど、あだしの顔見だぐねんだね」と緑さん。茂君は図星を指されて、いささか済まない気になる。その埋め合わせのように、茂君は丁寧に緑さんのおまんこをしゃぶり出した。クリトリスを舐め、ひだひだに吸い付く。
「ふぐー!」と緑さんがよがる。
茂君は緑さんの身体を引っ繰り返して、お尻を持ち上げ、後から緑さんのおまんこを攻める。
「みんな、これなんだよねー」と緑さん。
しかし、緑さんの鼻を見たら立っているものも萎みかねないわけだから、いくら文句を云われても仕方がない。誰だってこうするだろう。茂君は緑さんが『おまんこは上物』と云っていたのは正しいと思った。頻繁に男性にやって貰えないせいか、年齢の割りに緑さんのおまんこはタイトで、茂君のペニスに吸い付いて来る感触がたまらなかった。(このおまんこ、掘り出し物だ!)

茂君がピストン運動に拍車をかけたその時、
「ふがーっ!ぶきゅーん!ふがふがふがっ!ふんぐーっ」緑さんが喚き始めた。まるで豚小屋である。茂君は男共が緑さんと二度とやりたがらない原因を悟った。しかし、行き着くところまで行かなければならないので、茂君はおまんこを続行した。
「ふんが!ふんが!ふがふが、ぶぶーっ!」緑さんが昇天した。

数日後、茂君はテープレコーダーをセットして緑さんとおまんこした。一戦後、茂君が録音を再生すると、
「やめでーっ!聞きだぐね、やめでーっ!」と緑さんが耳を押さえて哀願した。
「緑さん」と茂君が云った。「全ては鼻に原因があると思う。鼻にかける発声をやめたら、多少はよくなるかも知れない」
その後、二人は近くの墓地に出向き、舞台俳優がやるような発声練習を始めた。数週間で緑さんの普段の話し声は鼻にかからず、澄んだ声音が出るようになった。しかし、セックスする段になると、「ふんが!ふがふが、ぶぶーっ!」が復活してしまう。

「緑さん」と茂君。「やはり、根本的に鼻の治療をする必要があるようです。ついでに美容整形で形も直したらどうですか?」
「あだしね、嘘つきだぐねんだよ。そら、整形すっごどは何度も考えたっぺよ。でも、結婚して子供出来て、その子があだしみでな鼻だったら旦那に嘘ついたことがバレて、苦しい思いすっぺ。それが嫌で整形しねんだ」
「でも」と茂君。「その鼻のままだったら、結婚も出来ず、まして子供が出来ることもないんじゃないでしょうか?整形して結婚して、もし鼻に問題ある子が出来たら、その子も整形すりゃいいじゃないですか。その鼻では何も始まりませんよ」
「あんだ、随分はっきり云うねえ。うーん。そうが。このままじゃ何も始まらねえが…」

緑さんの鼻の治療はそう簡単ではなかった。ニ週間ほどかかった。美容整形は一日で済み、形が整うまで一週間だった。

全てが終わった緑さんは見違えるように魅力的になった。それまで緑さんに見向きもしなかった下宿の学生たちが、一斉に緑さんにちやほやし出した。茂君は学生たちを差し置き、いの一番に緑さんversion 2.0とおまんこする権利を有していた。
「あおーん、あはあは、おおーっ!」緑さんのよがり声も変わった。もう鼻も声も豚とは縁切りである。

その後、緑さんはアナウンサーの教室に通い、茨城弁から標準語へ移行する特訓に励んでいる。緑さんが茂君と並ぶモナミの塔人気度ナンバー1になるのも、そう遠い日ではあるまい。




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