1. おれが妹で妹がおれで
ある晩、幸ちゃんが学生の一人とおまんこし、茂君が緑さんとおまんこした後、兄妹はたまたま階段で一緒になった。あと数段で下り切るという時、幸ちゃんが足を滑らせ、二人は折り重なってドーン!と床に倒れた。その瞬間、二人の身体が入れ換わってしまった。幸ちゃんの身体に茂君が入り込み、茂君の身体に幸ちゃんが入ってしまったのだ。
二人はその事実に気付かぬまま、それぞれの部屋に戻って寝る準備を始めた。幸ちゃんは歯を磨こうとして洗面台に向かい、鏡に映る兄の顔にぶったまげた。茂君はおしっこをしようとして、パンツから引っ張り出すものが無いのに愕然とした。
「ドンドン!」とドアがノックされて、幸ちゃんの顔と身体の茂君が、茂君の顔と身体をした幸ちゃんの部屋にずかずかと入って来た。
「おい!」と幸ちゃんの顔と身体の茂君が云った。
「お兄ちゃん、一体どうなってるの、これ!」と茂君の顔と身体をした幸ちゃんが云った。
「おれとお前、入れ換わっちゃったみたいだな。どうしよう」
「こういうの映画にあったけど、本当に起るんだね。困ったわ」
「もう遅いから、あした相談しよう。いいな?」
「うん。お休み。ちゃんと歯磨いてよ。あたしの身体だからね」
翌朝、茂君の顔と身体をした幸ちゃんは、幸ちゃんの顔と身体の茂君にセーラー服を着せた。
「スカートってスースーして落ち着かないな」と茂君。
「風が吹いたら、ちゃんとスカート押さえるのよ?いい?」と幸ちゃん。
その日の午後、二人は茶の間でお互いの学校での出来事を報告しあった。
「お前の授業なんて、てんでチョロいんでやんの。眠くなっちゃったよ」と茂君。
「そりゃあ、三年前に教わったことの復習はチョロいでしょうよ」と幸ちゃん。「あたしなんか習ったこともない英作文やらされそうになってパニくったわ」
「お前、おれに恥かかせなかったろうな?おれ、英語力では一目おかれてるんだぞ」
「あたしね、『先生、ぼく熱っぽくて頭がガンガンするんです』って誤魔化した。で、保健室へ行って横になってた」
「上出来」
「お兄ちゃん、今日体育あったでしょ?」
「それだよ。目の前で女子がみんな脱ぎ始めてさあ、もうウハウハでやんの。色とりどりのパンティは見られるわ、ブラしてない子の胸はみられるわ」
「よだれ垂らさなかったでしょうね。女が女の着替え見て興奮したら変態だわよ」
「でもさ、お前が急にバスケットうまくなったんで、先生びっくりしてた。点数上げてやったからな」
「そうか、あたしの身体汗かいたんだ。お兄ちゃん、お風呂入ろ!あたしの身体洗わなくちゃ」
茂君の身体をした幸ちゃんは、いまや茂君に占領されている自分の身体を丁寧に洗った。
「あ、なんか変!」と幸ちゃんが叫ぶ。幸ちゃんが占領している茂君の身体に変化が起きた。ペニスが勃起し始めたのだ。
「お前、自分の身体見て興奮してやがる」と茂君。
「そ。あたし、“自分の”おまんこ見たら、こうなっちゃった。変なの!」
「待てよ。おれ、“自分の”お珍々にフェラチオ出来るわけだ。そうだよ!」茂君はその発見に浮き浮きした。いまは自分が占領している幸ちゃんの口を“自分の”ペニスに近づけ、“自分に”フェラチオを開始した。“自分の”ものだから、どこを舐めれば気持いいかは知り尽くしている。
「おおおお!」ペニスを舐められている幸ちゃんが呻く。
茂君は“自分の”お尻を抱えるようにして、喉元深く“自分の”ペニスを頬張った。口をすぼめ、舌も連動させて激しく動かす。
「あっ!あっ!ああああ、もう駄目!」幸ちゃんが叫び、“自分の”頭を押さえて“自分の”口にどぴゅーんどぴゅーんと射精した。茂君は“自分の”精液を漏れなく受け止め、むせながらもごくごく飲み込んだ。
「ああいうものなのね、男がイくのって」と幸ちゃん。
「フェラチオって結構大変なんだな。知らなかった」
二人は茶の間で初めての体験を反芻していた。
「おい、映画ではどうやって二人が元に戻ったんだっけ?」と茂君。
「確か、自転車がぶつかって二人で転がった瞬間に戻ったような…」と幸ちゃん。
「よし、おれたちもやってみよう!」
二人は階段に行き、昨日のように三段目ぐらいから抱き合って転げ落ちた。何も変化はない。もう一度やってみた。駄目。身体をかばいながら落ちても効き目はないのかも知れなかった。
「なにしてるの?」大きな音と振動に不審に思ったおばさんが出て来た。
茂君と幸ちゃんが事情を話したが、当然おばさんは信じない。
「また、あたしをかつごうとして」とおばさん。
「本当なんだって!ぼくは幸じゃなくぼくで、これはぼくじゃなくて幸なの」
「じゃあ、あたしは幸とおまんこして、茂とレスビアンするわけね。あははは」おばさんは相手にせずに行ってしまった。
二人は意気消沈した。ずっとこのままだったらどうなるのか。茂君は女として、幸ちゃんは男として生きて行かねばならない。セックスが生き甲斐なのは共通しているが、性転換など望んだことは一度もなかった。二人とも自分の性に満足し、十分に楽しんでいる毎日だった。
絶望的精神状態のまま、二人はそれぞれの部屋に行き、ベッドに入った。眠れない。
茂君の部屋に幸ちゃんがやって来た。
「お兄ちゃん、またお兄ちゃんのお珍々立っちゃった」と幸ちゃん。
「なんだい、こんな悲惨な状況下なのに無神経な珍々だな」と茂君。
「ほんとよ。無神経だわ、こんな時にやりたがるなんて」
「で、お前、やりたいわけ?」
「お兄ちゃんがやりたいんでしょ?あたしじゃないわ」
「でも、お前がやりに来たんだぜ」
「そうなのよ。このお珍々がおまんこを求めて悶えてるの。男の生理ってこういうものだったのね」
「突撃したくなる気持が分っただろ。それにひきかえ、今のおれは完全に受け身だね。お前がやりたければやってもいい」
「あたし、あたしのおまんことやりたいわ」
「はっは。変な云い方だな」
いずれにしても、二人はやり始めた。
「おーっと!」と茂君。「そうすぐ入れようとしちゃ困るな。おれ、まだ濡れてないぜ。ちゃんと前戯をしてくれなきゃ」
「なんだ。結構面倒なのね」と幸ちゃん。
「おれはその面倒なことを毎回やってるんだ。感謝してほしいね」
幸ちゃんは“自分の”身体を愛撫した。自分の性感帯は熟知しているわけだから、自分を燃え上がらせるのはたやすかった。
「あはん、あははん!」と茂君。
「お兄ちゃん、あたしの真似しないでよ」
「真似じゃないよ。自然に女っぽくなっちゃうんだ。おれ、いま女なんだからな」
「そっか。あたしは男なんだ。よーし、おい兄貴。今、でかいのをぶち込んでやるからな。待ってろ、ひひひ」
「ばーか」
幸ちゃんがやおら突撃しようとすると、茂君がコンドームの箱を手渡した。
「おい、おれを妊娠させたりしないでくれよ。やだよ、この歳で育児なんて」と茂君。
「ごめん。不注意でした」と幸ちゃん。
ゴムをつけた幸ちゃんは“自分の”おまんこに兄のペニスをぶち込んだ。何故か、侵入するペニスの快感と、ペニスを受け入れる襞々の快感を同時に味わった。普通は異性の性感は想像も出来ないものだが、二人はいまや男女両方の感覚を味わえるようになっていた。幸ちゃんは、日頃男性にこうあってほしいというリズムとテンポ、アクションを完璧に実行した。“自分の”おまんこの攻めてほしい部分をことごとく攻めた。
「あぐぐぐ、あおおおお!」幸ちゃんの身体をした茂君が悶える。快感に身体を弓なりにしている。
“自分の”身体の反応は幸ちゃんの興奮を高めた。幸ちゃんは兄のペニスをこれでもか、これでもかと“自分の”身体に突き立てた。破局が迫る。
「あぐわあ、あごごーん!」茂君が入り込んでいる幸ちゃんの身体がイった。
「お兄ちゃーん!」幸ちゃんが入り込んでいる茂君のペニスがぴゅぴゅどぴゅーん!と射精した。
その瞬間、ベッドの端にいた二人は絡まったままベッドから転落した。
二人はまた自分の身体に戻り、この異常な現象はその後二度と起らなかった。めでたしめでたし。
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