16. 努力しないで性交する方法
「なんやて?茂君、本を執筆しとるやて?」と叔父さん。下宿の茶の間でおばさん、茂君、幸ちゃん、叔父さん夫婦が話している。
「凄ーい!お兄ちゃん、作家になったわけ?」と幸ちゃん。
「どないな内容やねん?」と叔母さん。
「『努力しないで性交する方法』っていうの。“せいこう”はサクセスじゃなくてセックスね」と茂君。
「呆れてものも云えない」とおばさん。
「茂君も若いに似ず女蕩しやから、材料は仰山あるわけや」と叔父さん。
「ね、ね、あたしとかお母さんとかも出て来る?」と幸ちゃん。
「当然、出て来る」と茂君。
「いやな予感がするわね」とおばさん。
「茂君、ちぃとかいつまんで中身を紹介したり」と叔父さん。
「聞きたい?」と茂君。
「聞きたい!」と幸ちゃん。
「よし。じゃ、スニーク・プリビューってやつね。コホン!第一章。ぼくは努力することが嫌いである。特にセックスに関して努力するなんて真っ平だ。何日も、何ヶ月もかけて女性を口説くなんて、気が遠くなる。セックスはやりたい時にやるのが一番。もし、やりたい特定の女性がいたら、頭脳と積極的行動でモノにする。それも、急転直下女性をその気にさせるのが望ましい。それには、ある程度鍛えたペニスとそれを自信を持って誇示できるタフな心理が不可欠である」
「なかなかええ出だしやないか」と叔父さん。
「そうでしょうか?」とおばさん。おばさんは息子が努力を軽視するのが快くない。
「実例をあげよう。ぼくの担任教師は南ありす(仮名)という女性である。南先生は女子大生のような顔に、歩くと揺れるおっぱい、ぷくんと盛り上がったお尻という魅力的な身体の持ち主だ。ぼくが毎日学校に通うのは、ただ南先生を見るためだけと云ってもよい。
ある日、下校途中で忘れ物をしたことに気付いたぼくは、廻れ右して学校に取って返した。教室に入ると、南先生が試験の答案を採点しているところだった。周りには誰もいない。絶好のチャンス!
『先生、大変ですね。手伝いましょうか?』ぼくが冗談を云った。
『ほんと、手伝ってほしいくらいよ』と先生。
『お疲れでしょう。肩を揉んであげる』ぼくは座っている先生の後に廻って、肩を揉み出す。何でもいいから、女性の身体に触ってしまうのが突破口である。身体的接触はお互いの緊張を取り除き、次のステップを容易にする。
先生は最初生徒のぼくに触られるのが落ち着かないようだったが、ぼくの揉み方が気に入ったようで、『おおお、うむむ!』と唸る。ぼくは指圧にマッサージを加えるような感じで、背中をさする動きを混ぜ、次第に範囲を広げる。背中は性感帯ではないが、憧れの先生におさわりしていることに変わりはない。肩から腕へ、背中から脇腹へ。次第に性感帯に接近する。
『ちょ、一寸、茂君、もういいわ。ありがと』と南先生。警戒されたみたい。
ぼくはすっと両手を先生のおっぱいに廻し、その豊かな盛り上がりを押さえた。
『キ、キミーっ!』先生が叫ぶ。
先生は立ち上がった。先生は背が高いので、ぼくは先生を見上げなくてはならない。先生は両手をぼくの脇の下にあてがい、ぼくの身体を持ち上げた。凄い力だ。先生の顔がぼくの顔に迫る。(キスしてくれるのか?)と思ったらそうではなく、先生はいきなり膝でぼくのキンタマを蹴り上げた。
『ギャーっ!』先生がぼくを床に下ろす。ぼくはキンタマを押さえて七転八倒した。
『またあんなことしたら、校長先生に云うわよ』先生は答案用紙をまとめて、教室から出て行った。
ぼくはキンタマの痛みが引くと、妙な歩き方で家に帰り、母親とおまんこした」
「そらあかん!近親相姦バラしよったら、近所から白い目で見られるで!」と叔父さん。
「そうよ、買い物にも行けなくなってしまう」とおばさん。
「じゃ、最後の一行、削除」と茂君。
「でも、それだと“性交”してないことになるね」と幸ちゃん。
「最初ぐらいええやろ。段々よくなる法華の太鼓や」と叔父さん。
「なにそれ?」と幸ちゃん。
「第二章。下校途中、歩いているぼくのそばへスーッと車が近寄って来た。運転しているのは大きなツバの黒い帽子にベールをかぶった、貴婦人のような女性だった。
『坊ちゃん、一緒にお茶でも飲まない?』と女性が云った。こういう誘いは、大体セックスへと繋がる予告篇と決まっている。
『いいですね』とぼくは浮き浮きした。
『じゃ、後ろに乗んなさい』と女性が云い、ぼくが乗り込むと同時に車が走り出し、近くの洋館の門をくぐった。
女性はぼくを家の中へ招じ入れ、応接間で帽子とベールを取った。それはすげー婆あだった!
『ひひひ。驚いた?私は吉永小百合(仮名)86歳。仲良くしようね』と婆さんが云った。
ぼくのこれまでのセックス相手の最高齢は80歳だった。86は新記録だ。
『お茶飲む?それとも、すぐやる?』と小百合さんは云った。
『お、お茶はどうでも…』とぼくが云い、二人で小百合さんの寝室へ向かった。
小百合さんが洋服を脱いだ。お乳は垂れて萎びていて、お尻も同様だった。その無残な姿にぼくのペニスも萎びかけたが、しかし、ここにやりたがっている一人の女性がいるのは間違いないし、ぼくの記録を更新するためにも奮起しなければならない。ふにゃふにゃの小百合さんの身体はあまり触り甲斐がなかった。キスをすると、小百合さんの伸びた髭がチクチクした。小百合さんのおまんこに指を入れる。ガバガバである。
『小百合さん、お子さん、何人?』と聞いた。
『9人。子供たちで野球チームが出来たわ。ひひひ』
ぼくは何とか小百合さんをイかせたが、このガバガバまんこではぼくがイけない。止むを得ず、86歳の女性の口にペニスを突っ込み、彼女の唇をすぼませてやっと射精した。帰宅すると、あまりにもさっぱりしないセックスの口直しとして、ぼくは12歳の妹とおまんこしたのだった」
「またや!近親出したらあかんちゅうてるやろが!」と叔父さん。
「あたしが登場するって、あれだけ?」幸ちゃんはがっかりする。
「老婆とセックスしたがる若者って、そうおらんやろ?売れんがな、こんな本」と叔母さん。
「第三章。下校途中、歩いているぼくのそばへスーッと車が近寄って来た」
「さっきと同じじゃない!」と幸ちゃん。
「同じ状況なんだよ」と茂君。
「変化つけんと、読者に厭きられるがな」と叔父さん。
「第三章。登校途中、歩いているぼくのそばへスーッと車が近寄って来た」
「変わらへんて」と叔母さん。
「日曜日か何かにしたら?」とおばさん。
「第三章。ある日曜日、散歩していると、ぼくのそばへスーッと車が近寄って来た」
「ましや」と叔母さん。
「運転していたのは目の覚めるような美人だった。胸も大きく盛り上がっている。ぼくのペニスも盛り上がった。
『坊や、私といいことしない?』と美人が云った。ぼくはぐずぐずせず、黙って自動車に乗り込んだ。
『私、浅丘ルリ子(仮名)って云うの』美人が云った。
車は5分ほどのところにあるラブ・ホテルに入った。
部屋に落ち着くと、ぼくたちは先ず熱烈なキスをした。ぼくはルリ子さんの長い睫毛に魅了された。ぼくたちは着ているものを脱いだ。ルリ子さんがドレスを床に落す。パンティを脱ぐ。と、ルリ子さんの股間には巨大なペニスがそそり立っていた。オカマだったのだ。
『ギャーっ!』ぼくは裸のまま服を抱えて部屋から飛び出した。オカマは裸では出て来れない。狭い路地で衣類を身に着け、ぼくは一目散に逃げ出し、家に帰り…」
「今度は誰や?」と叔父さん。
「親戚の小母さんと…」と茂君。
「駄目や!」叔父さんがぴしゃりと云った。
「お断りや」と叔母さん。
「大体、“努力しないで性交”したのは86歳の婆あだけやないか!あほらし」と叔父さん。
「第四章…」と茂君。
「もう、よろし。聞かんでも分ってる」と叔母さんが帰り支度する。
「車がスーッとやろ?」叔父さんも立ち上がる。
「じゃ、飛ばして第九章!」と茂君。
「どうせ、ろくでもない女に引っ掛かって…」とおばさんも台所へ立つ。
「あたしたちの誰かとやるだけなのよね」幸ちゃんも自分の部屋へ向かう。
そして誰もいなくなった。
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