4. “模範家庭”の夜
おばさんに電話が掛かって来た。
「こちら東京都文教厚生課の森田と申します。お宅様が今年度東京都選定模範家庭に選ばれましたのでご通知申し上げます。おめでとうございました」
「模範家庭ですって?」とおばさん。
「はい。これは推薦されたいくつかのご家庭から選り抜かれた、ただ一軒のご家族に与えられる栄誉でございます」と森田氏。
「一体、誰がうちを推薦したんです?」
「それはお教え出来ません」
「しかし、うちは母子家庭ですよ。普通の家庭とは云えません」とおばさん。
「存じ上げております。母子家庭とか父子家庭とかは問題ではなく、いかにご家族が明るく健康に暮らしておられるかが重要です。母子家庭となれば、なおさらご家族が一致団結して生き抜いておられるわけで、それがお宅様が選ばれた理由であろうかと思われます」
「うちが明るく健康なんて、どうして分るんです?」
「候補のご家庭は秘密裏に綿密に調査させて頂きました」
「まあ!」
「つきましては、明日都知事がお宅様に伺いまして、記念の盾を贈らせて頂き祝辞を述べさせて頂くことになっているのですが、よろしいでしょうか?ご家族全員お揃いで都知事との記念写真をお願いしたいのですが?」
「はあ…」おばさんはまだ信じられない。
「記者団やTVカメラも多数お邪魔すると思いますが、よろしくお願いします。では」森田氏は電話を切った。
おばさんはしばし茫然としていた。
「電話、どこから?」と幸ちゃん。
「都から」おばさんは茶の間に戻って、ぺたんと座った。
「悪いニュース?」と茂くん。
「あたしたちが東京都選定模範家庭ですって」
「なにそれ!」と幸ちゃん。
「冗談じゃないの?」と茂くん。
「明日、知事さんが来るんだって」とおばさん。
「ひゃーっ!」と幸ちゃん。
「どうしてこの家族が“模範”なの?東京都民に近親相姦を推奨する政策なのかな?」と茂くん。
「まさか。あたしらのセックスの実態までは知らないのよ」とおばさん。
「バレたら大変ね。東京都の恥さらしだとか云って」と幸ちゃん。
「辞退したら?」と茂くん。
「そうしようか。別に模範家庭にならなくてもいいもんね」とおばさん。
しかし、都の森田氏に電話しても辞退はかなわなかった。もう、マスコミにも明日の知事の予定は周知済みで、変更は出来ないと云う。仕方なく、一家は大掃除を始め、庭や玄関先も綺麗にした。おばさんは美容院に行き、髪をセットした。
ついに知事がやって来た。最近選出されたばかりの女性都知事である。40代の初めという感じで、育ちが良く頭の良さそうな顔をした、エネルギッシュな女性である。知事はずんずん家に入って来ると、家族五人と握手をし、盾をおばさんに渡しながら簡単に祝辞を述べた。おばさんがお茶を入れている間に、家族と知事が会話をする場が設定され、TVニュースのカメラが数台スタンバイした。
「おめでとう。本当におめでとう!」と知事が繰り返した。
おばさん一家は頭を下げた。
「ご一家が明るく暮らせる秘訣というのは、どういうことなんでしょう?」と知事。
「さあ…」とおばさん。
「ぼくたちは何も隠し事をしないんです」と茂くん。「いわば、裸のつきあいですね」
「スキンシップね。なるほど」と知事。
「それと」と幸ちゃん。「家族で悦びを分ち合うこと」
「それから」とおばさん。「お互いに慰めあうことも大事です」
ジミーとサブリナは、ただニコニコしていた。
「さすが模範家庭に選ばれただけあって、皆さんご立派。養子の坊やとお嬢ちゃんの組み合わせも国際的で感動しました」と知事。
TVカメラが後退し、今度は新聞社のカメラが砲列を敷いた。知事との懇談風景、記念写真が撮られると、これで一応公式行事は終了である。
「森田さん」と知事が文教厚生課の森田氏を呼び、「一寸、こちらのご家族と二、三分お話があるの。これはプライベートなことだから、プレスも都の人間にも遠慮してほしいの」と云った。
「かしこまりました」森田さんが報道陣に説明し、知事を除く全員が表へ出て行った。
「お恥ずかしいのですが、私の家庭に問題がありましてね」と知事が切り出す。「一人息子が、不良というわけではないんですが反抗的だし、鬱病というほどではないんですが暗いんです。どうでしょう、一週間ほど伜を預かって頂いて、皆さんのいい影響を与えて頂くということは出来ないでしょうか?」
おばさん一家は顔を見合わせた。南米にいる伯父さんの部屋が空いているから、出来ない相談ではない。
「あのう」とおばさん。「いい影響があるかどうか保証は出来ませんが、どうしても御希望なら…」
「ありがとうございます!では、今晩伜を寄越しますので…」知事は深々と頭を下げた。
というわけで、都知事の息子の芳雄君17歳がやって来た。幸ちゃんの隣りの伯父さんの部屋に入れると、それきり全然出て来ない。幸ちゃんが見に行く。コンコンとドアをノックする。
「芳雄さん!」
「なんだよー!」
「『なんだよ』はないでしょ?隣り部屋のよしみで心配してるのに。入っていい?」
「あんたのうちだろ。勝手に入りゃいいじゃねえか」と芳雄君。
幸ちゃんが入ると、芳雄君はダブルベッドに大の字になって寝っ転がっていた。
「なんにもしてないわけね?」と幸ちゃん。
「模範家庭の一員だからって説教はご免だぜ」と芳雄君。
「あたしたち、模範家庭なんかじゃないわ。説教なんかしません」と幸ちゃん。
「だって、表彰されたんだろ?沢山の中から選ばれて」
「何かの間違いよ。選ばれたからって、あたしたち、生き方を変えるつもりはないわ」
「どういう生き方?」
「あのね、この家は実はフリーセックスの館なの」
「えーっ!うっそーっ!」と芳雄君は思わず身を起す。
「ほんとよ」
「キミ、じゃ下宿生たちみんなとやってるわけ?」芳雄君の声が震える。
「そ」(そればかりじゃないけどね)
「キミ、いくつ?」
「12歳」
「それでフリーセックス?」
「そ」
「じゃ」と芳雄君。「おれもキミとやれるの?」
「お望みならね」と幸ちゃん。
「お望みだよーっ!やらしてっ!」芳雄君は幸ちゃんに迫る。「こうしてもいいんだね?」と芳雄君は幸ちゃんを抱く。「こうしても?」芳雄君は幸ちゃんにキスする。「こうしても?」と幸ちゃんのスカートに手を入れる。芳雄君は幸ちゃんをベッドに引っ張り上げる。
「これ、マスコミに漏らしたりしないだろうね。ママの政治生命が断たれちゃうからね」芳雄君は服を脱ぎながら喋る。
「安心しなさい」と幸ちゃん。こちらも脱ぐ。
二人は裸で抱き合った。幸ちゃんがコンドームの大箱を芳雄君に手渡す。
「さすがフリーセックスの館だけあって、用意がいいねえ」と芳雄君。
前戯を終えて、芳雄君は幸ちゃんのおまんこにずぶりんこんと侵入した。
「あのさあ、こういう時になんだけど、フリーセックスの館だったら、おれ、キミのママともやれるかな?」と芳雄君。
「あなたねえ、一人の女性とやってる時に、他の女性の話するって失礼よ!」と幸ちゃん。
「ごめん」
「あなた、あたしとのセックスに不満なの?」
「そういうわけじゃ…。キミのおまんこ、すごくいい。締まってるし、吸い込まれそうだし、とっても気持いい」
「よろしい」と幸ちゃん。「で、さっきの質問への返事だけど、イエスよ」
「えーっ?キミのママともやれるの?」
「そ」
「こんな風に?」と芳雄君が激しいピストン運動をする。
「いいのよ、あははーん!」幸ちゃんが身をよじる。
「キミのママとこんな風に?」芳雄君が幸ちゃんのおまんこの中をぐりぐりペニスでかき回す。
「いいのっ!うわわあああ!」幸ちゃんがのけ反る。
「キミのママに、こう射精していいの?」芳雄君が幸ちゃんのおまんこを激しく突き上げる。
「あわーん、うぐうーん!」幸ちゃんがイった。
「うむむむーっ!」芳雄君もイった。
幸ちゃんと芳雄君はバスローブを引っ掛けただけで母屋へ移動した。奥の部屋の前で、「お母さん!」と幸ちゃんが声をかける。「お入り」という返事。
襖を開けて二人が入って行くと、おばさんと茂君が裸で布団の上に横たわっていた。丁度一戦が終わったところなのだ。
「こ、こ、これが“模範家庭”?」芳雄君が腰を抜かす。
「だから、何かの間違いだって云ったでしょ?」と幸ちゃん。
「TVで云ってた、“裸のつきあい”ってこれのこと?」と芳雄君。
「それと、“悦びを分ち合う”」と幸ちゃん。
「“互いに慰め合う”もね」とおばさん。
「お母さん、芳雄さんね、お母さんとやりたいって」幸ちゃんが伝える。
「まあ、都知事さんの息子さんとやれるなんて光栄ね。茂、ちょっとどきなさい」とおばさん。
芳雄君はおばさんのそばに座り、おばさんの身体をじっくり見つめた。芳雄君の手がおばさんのおっぱいに伸びた。芳雄君は自分の顔をおばさんのおっぱいで挟み、「ママーっ!」と云った。おばさんは一切を了解した。
芳雄君はママが好きだったのだ。ママとやりたかったのだ。しかし、ママは都知事に選出され、二人の間はどんどん遠ざかった。おまけに、都知事の息子として芳雄君は世間の注目を浴び、品行方正を余儀なくされた。面白くなかった。何もいいことはなかった。それが彼を暗くし、ママに反抗的にしていたのだ。
いま、芳雄君はおばさんをママの代りとして組み伏せ、乳を揉み、ペニスを挿入していた。「ママっ!ママっ!」芳雄君は激しくおばさんの身体を攻めた。
「あうーん!」
「ママーっ!」二人は同時に昇天した。
それ以後、芳雄君はフリーセックスの館を満喫し、性格も変わった。明るく、積極的な青年になった。
「まあ、同じ息子とは思えませんわ。お預けして本当に良かった!」迎えに来た都知事が感謝した。
「ママ、ぼくらも模範家庭を作ろうよ。協力して?」と芳雄君が云った。
「もちろん協力するわ!こちらのようないい家庭にしようね」と知事が云った。
都知事は息子の言葉の本当の意味を理解しないで返事していた。それを知っているおばさんたちは笑いを禁じ得なかったが、それは誰もが模範家庭の明るく健康な笑いと解釈した笑いだった。
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