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12. じょんがら・まんこ

「千夜通うても会われぬときは 御門とびらにそりゃ文(ふみ)を書く
御門とびらに文書くときは すずり水やらそりゃ涙やら
ござれ語りましょう小松のかげに 松の葉よりもそりゃこまやかに」
玄関先で三味の音と歌声が響いた。おばさんと茂君が飛び出して行くと、いまは幻となりかけている瞽女(ごぜ)さんの姿があった。

瞽女というのは、幼くして盲目になった少女たちが瞽女の親方の養女となり、三味線や唄を厳しく叩き込まれ、越後から関東、東北まで一行五人ぐらいの集団で旅し、各地の大地主の家に泊めて貰いながら芸を披露して生計を立てていた旅芸人たちである。手拭いの上に菅笠、脚半に草鞋(わらじ)という遍路装束で、風呂敷包みを背に、“手引き”と呼ばれる弱視の先導者の背中に手を当て一列になって旅していた。しかし、もう瞽女たちを泊めてくれる大地主もなくなり、TVなどの娯楽が普及したため、もはや瞽女は絶滅しかけていた。

瞽女さんは門付け唄を終え、三味線の演奏に切り換えた。この瞽女さんはたった一人だった。おばさんと茂君は顔を見合わせた。昔は農村では唄の御礼にお米などを上げたそうだが、もうそんな時代ではない。やはりお金だろう。おばさんが家の中へお財布を取りに戻ろうとした時、ピカピカ!ゴロゴロ!と轟いたかと思うと、いきなり土砂降りになった。おばさんと茂君は玄関から飛び出し、瞽女さんの手を引いて中へ導いた。
「ありがとさん」瞽女さんは上がりがまちに腰掛け、笠を取り、ちょっぴり濡れた三味線や剥き出しの腕を手拭いで拭いた。お婆さんかと思った瞽女さんはまだ30歳ぐらいであった。
「お若いんですねえ」とおばさん。
「驚きなんしたかいね」と瞽女さん。「確かに、はあ、正統の瞽女はもう高齢で老人ホームさ入っとらす。おら、異端の離れ瞽女なんだ」
「異端って、どういうことですか?」と茂君。
「いろいろあるけどね。一つはおらは津軽三味線に近い弾き方するもんで、伝統的瞽女唄じゃねえと鼻つまみでねえ。本当は瞽女が東北さ行って津軽三味線の源流さなったわけだから、親戚みてなもんなんだけんどね」

雨は止まなかった。いつしか昼食時になった。おばさんは瞽女さんに食事を振る舞うことにした。瞽女さんはやや遠慮したが、どうせ雨で出て行けないのだからと、おばさんの好意に甘えることにした。瞽女さんは草鞋を脱ぎ、茂君に手を引かれて茶の間に入った。今日は幸ちゃんは早苗ちゃんとプロのバレエを見に行っていたし、二階の学生たちも出払っていて空っぽだった。

瞽女さんはお蓮(れん)と名乗った。おばさんがあり合わせのもので三人分の食事の支度をする。その間に茂君が食器などを揃えながら、お蓮さんの話を聞いた。台所のおばさんも調理しながら話に耳を澄ましている。
「どうして一人で廻ってるんですか?大変でしょう?」と茂君。
「あんちゃん。あんた、いくつになんなさる?」とお蓮さん。
「15です」
「そんじゃあ、まだあんたには話せねなあ。いろいろあんだわ」
「いくつで瞽女さんに?」と茂君。
「7歳。それまでは目つぶれてねくて、赤い花や紫の花、夕焼けだの虹だの、お星様だの、なんでも見えたもんね」とお蓮さん。
「じゃあ、生まれた時から見えないよりずっといいね!」
「はえ(=はい)」とお蓮さん。
お蓮さんは笠と手拭いによって日焼けを防いでいるせいか、色白だった。化粧っ気がないので、印象としては十人並みに見える容貌だったが、瓜実顔で目鼻立ちは整っていた。
「雪国を草鞋で歩くのって辛いでしょう」と茂君。
「はえ。けど、馴れればなんでもねす」

「何もありませんけど…」とおばさんがお皿に盛ったお菜や味噌汁を運んで来た。
「一つのお皿に色々乗せてあります。その方が取るのに楽だろうと思って」そう云いながら、おばさんはお菜の品目を説明した。
「ありがとさんです。何から何まで」お蓮さんが云い、両手を合わせて深々とお辞儀した。しばらくはみな無言で食事をした。

食事が終わっても、まだ雨は降り止まない。おばさんはお茶とお茶菓子を用意した。お蓮さんは背後に置いた三味線を取り、しばらくピンピンと調弦し、やおら三味線を膝に乗せて構えた。
「奥様、どうも御馳走様でござりました。御礼に一曲弾きますけ、聞いとんなえ」とお蓮さん。
ビュイン、ビュイン!ベンベン!と演奏が始まった。それは次第にテンポアップし、おばさんや茂君がどこかで聞いた津軽三味線のリズムを形成し出す。津軽三味線は太棹で、音色も太く男性的である。お蓮さんのは普通の三味線なので、腹の底へ響くような音色ではない。しかし、それでもお蓮さんが情熱的な弾(はじ)き方をすると、かなりの迫力があった。

お蓮さんの三味の音がうねり高まる。それは津軽の過酷な冬に立ち向かう北国の人々の頑固な意志のようでもあり、不幸な運命を背負って生きているお蓮さんの怨み節のようでもあった。おばさんは背筋がぞくぞくし、茂君に寄り添った。茂君は母親の肩を抱いた。お蓮さんは没入するように三味線を奏でている。茂君はお蓮さんの人生を思い、母親や自分の人生を思った。茂君は母親の着物の脇の下から手を差し入れ、母親の乳を揉んだ。お蓮さんには見えないから出来ることだった。おばさんは首をひねって息子の顔に唇を近づける。二人はねちっこく舌を絡め合った。お蓮さんの情熱的な三味線が二人を発情させていた。おばさんは横になって着物の裾を開いた。茂君はズボンを半分下ろして、ソーッとコンドームをつける。茂君が指を触れると、母親のおまんこはびしょ濡れだった。二人は折り重なり、お蓮さんに気取られないように静かにおまんこを始めた。

お蓮さんは一心不乱に三味線を弾く。時に高く短く、時に低く長く、緩急のリズムが刻まれる。母子のおまんこが津軽三味線に同期しているようでもあり、三味線が二人の動きに同期しているようでもあった。おばさんは声を押し殺すのに必死だった。着物の袖を噛み、呻き声を抑える。それは苦しかった。拷問のようだった。三味線がビビャンビビェン、ガッガッガガガガとかき鳴らされ、おばさんは無言のままイった。茂君はそれを感じて、ドドドピューンとイった。

まるで二人のおまんこに合わせたようにお蓮さんが演奏を終えた。おばさんと茂君は身仕舞いを直す時間もなく、パチパチ!と拍手した。母子はまだ呼吸を整えなくてはならず、普通に話せない。
「お、お蓮さん、ぼく感動して、言葉も出ない!」と茂君がハアハアしながら云う。
「あたしも…」とおばさん。
「ありがとうございます。お茶を頂きます」とお蓮さんが湯のみに手を伸ばす。
「それは冷えちゃったでしょう。入れ替えましょう」おばさんが裾を合わせながら台所に立つ。

「えがったですかいね?」三人がまた揃った時、お蓮さんが云った。
「え、何が?」と茂君。
「おら、目は悪いが耳はええすけ、周りの気配はよく分るもんだもんねえ、はえ」とお蓮さん。
「まあ!じゃあ?」とおばさん。
「あんちゃん。あんた、お母ちゃん、大事にな」
「は、はい!」と茂君。
「奥様、いい息子さんがおらして幸せでやすな」
「ええ…。お蓮さん、結婚は?」おばさんが赤くなって急に矛先を変える。
「瞽女と結婚しよなんて酔狂な男おらんでしょう。犯されたり孕まされたり、ほいて堕ろしたり、ひでえ思い出ばかりで、なあんもええごとなかったねえ」とお蓮さん。

「好きになってくれる人もいなかったの?」と茂君。
「全然。おら、女の悦びまだ知んねんだ」とお蓮さん。
「そりゃひどい。ね、お蓮さん、ぼくで試してみない?」
「あたしも手伝うわ」とおばさん。
「とんでもね。もうおらを孕ませねで!」とお蓮さん。
「ホラ、これをかぶせるから大丈夫!」茂君がお蓮さんにコンドームの新品を触らせる。
「でも、おら…」
「いいから、まかせなさいって」と茂君。

おばさんはお蓮さんを裸にした。お蓮さんは雪国に育ち海水浴などもしないせいで、肌が真っ白だった。おっぱいは形よく柔らかく実っていて、臀部もふっくらとしていた。おばさんと茂君も裸になった。先ず、おばさんがお蓮さんと抱き合い、素肌と素肌の接触をした。しばらくすると、おばさんはお蓮さんの背中に廻って、背後からお蓮さんのおっぱいを揉む。茂君がお蓮さんの口や首にキスし、片手でお蓮さんのお尻や太股を撫でる。
「ああ、ええー、ええ気持!」とお蓮さん。
おばさんは後からお蓮さんの耳たぶを舐めたり、耳の穴に舌を入れたりする。
「ひーっ!んんん!」お蓮さんが身悶えする。
茂君はお蓮さんの身体を横たえ、膝を曲げさせ、お蓮さんのおまんこをぺろぺろ舐め回す。前に廻ったおばさんがお蓮さんのおっぱいを吸ったり噛んだりする。
「うおーっ!あうーん!んんぐぐぐう、あああーん!」お蓮さんはあまりの快感に圧倒されて、両目から涙を流してよがる。このような快楽は初めてなのだ。
茂君はコンドームをつけ、お蓮さんにのしかかる。おばさんは今度はお蓮さんとフレンチ・キスを始める。「うぐぶぶ」
茂君は先ほど聴き、まだ耳に残っている津軽三味線のリズムを模倣しながら腰を使う。ある時は腰を沈めてお蓮さんのGスポットを突く。
「ぶぐうううぐぐ!」お蓮さんが呻く。
茂君は、ある時はお蓮さんのクリトリスにタッチするように自分の恥丘をお蓮さんに押しつけ、ぐりぐりと撫で廻す。
「ふぐーっ!ぶごーっ!むぶぶぶ」おばさんはお蓮さんのおっぱいを揉む。お蓮さんもおばさんにしがみつき、おばさんの乳房を揉む。お蓮さんは天国への階段を昇り始める。

茂君はさっき自分たちのクライマックスでかき鳴らされた三味線のテンポを呼び起す。あの速さを真似るのは容易ではない。しかし、茂君は汗だくになって小刻みな出し入れと、乱暴とも云える出し入れを織り交ぜる。お蓮さんは自分のおまんこにそんなにも快感の源があるとは知らなかった。いま、その全てが刺激され、あたかも百挺の津軽三味線の合奏を聞くようなうねりが身体中に湧き起っていた。
「あおっ!あおっ!あうあうおおお、ひーっ!おっかさーんっ!」身体を弓なりにしてお蓮さんがイった。
茂君は同じテンポで腰を使っていたが、使命達成の安堵感と共にお蓮さんの体内にどどどぴゅーん!と精液を放った。

「おら、この家に住まわせて貰いてえ」とお蓮さんが云った。
「え?」おばさんと茂君が同時に云った。
「あはは。冗談だ。奥様、お兄ちゃん、何と御礼云っていいが」
「御礼なんて」とおばさん。
「お蓮さん、また来て。いつでも」と茂君。
「はえ。次は来年だね。奥様、そん時ゃ三味線に負けねぐらい大声出して息子さんとやりなされ」お蓮さんが朗らかに笑った。

丁度、雨も上がったところだった。




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