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5. 光り輝く少女

コンピュータ・モニタの中でビデオが再生されている。

海岸である。十人ほどの制服姿の男女中学生が砂浜を一斉に駆け出す。カメラが彼らを追う。なぜか、一人だけ駆け出さずに立ち尽くしている少女がいる。カメラは大勢を追うのをやめ、少女を捉える。ズーム・アップし、少女の顔が画面一杯になる。美少女ではない。おかっぱで、丸顔で、団子に目鼻という感じの少女だ。しかし、彼女の表情には何か特別のものがあった。彼女の体内から溢れ出るエネルギーが周りを照射しているという煌めき。自足している幸福感。なにものも恐れない若さ。微笑むような、泣き出しそうな、微妙な混合を見せる瞳。カメラは彼女から目をそらすことが出来ず、ずっと凝視し続けていた。

茂君は演劇部の連中が短編映画を作るというのを手伝った。伯父さんが置いて行ったデジタル・カムコーダーと三脚があったので、カメラマンとして演劇部の連中につきあったのだ。今見ているビデオはその時の一齣で、ラストシーンになる予定で撮られたものだ。シナリオでは全員が駆け出し、カメラはどこまでも彼らを追いかけることになっていたから、上のカットはNGである。当然、彼らは撮り直しをした。上のカットは本編には入れられず、消去される運命にあった。しかし、茂君はそのカットを消し去ることが出来なかった。

その女の子の名は大井広子と云った。演劇部でも目立つ方ではなく、茂君もずっと彼女の存在など認識していなかった。しかし、今や茂君は広子ちゃんを憧れの目で見ていた。恋ではない。友情でもない。彼女が発散する、パワフルな青春の息吹といったものへの純粋な憧れだ。茂君は、誰の目にも触れずにいつか消える運命にあるカットを広子ちゃんに見せたかった。ある日、それは実現した。広子ちゃんが茂君の部屋にビデオを見に来たのだ。

茂君は広子ちゃんの海を見つめるアップでストップ・モーションにして、広子ちゃんに尋ねた。
「どう思う?」
「なんか、恥ずかしい。みんなに悪いことしたし…」と広子ちゃん。
「どうして一緒に走らなかったの?」と茂君。
「わたし、あの時、何か感じたの。海の向こうに“永遠”が見えるみたいな」
「永遠?」
「よく分らない。なんかそんな感じ」と広子ちゃん。
「それでモナリザみたいな表情してるのか」茂君はビデオを振り返った。
「茂君、どうしてこれを見せてくれたの?」
「ぼくの云うこと、変に取らないでよ。お世辞でもなんでもなく、キミは美しいって思った」
「ウッソーっ!」と広子ちゃん。
「ほんとだよ。君がピュアな存在だってことがわかったし、ぼくが汚らしい存在だってことがよく分った」

「茂君、汚らしくなんかないわ。わたし、んーと、んーと…」広子ちゃんが云い淀む。
「なに?」と茂君。
「わたし、茂君ずっと好きだったの。でも、茂君、わたしのことなんか見てもくれなかった」
「ウッソーっ!」と今度は茂君。
「ほんとよー!」
「不思議だなあ。こんなこともあるんだね」
「わたし、自分が美しいなんて思わないし、ピュアだとも思わない。でも、たとえビデオでも茂君がわたしのこと見つめてくれて嬉しい」と広子ちゃん。

いつもの茂君ならこの辺で広子ちゃんににじり寄り、身体的接触を図るところである。しかし、茂君は広子ちゃんに対しては性的感情は抱いていなかった。広子ちゃんは“青春の形見”としてずっととっておきたい宝物のようなものだった。

いつの間にか広子ちゃんの肩が震えていた。
「どうしたの、広子ちゃん?」と茂君。
「わたし、悲しくて…」と広子ちゃん。
「一体どうして?」
「わたし、もうすぐ転校するの。父の転勤で」
「えーっ?」
「折角、茂君とこうしてお話できるようになったのに、お別れなの」広子ちゃんは泣き出した。
泣いている女性を放ってはおけないので、茂君は優しく広子ちゃんの肩に手を廻した。
「そう。がっかりだね」と茂君。
「茂君。わーん!」広子ちゃんは茂君の胸に飛び込んだ。
茂君はそっと広子ちゃんを抱擁する。広子ちゃんの髪の甘い香りが胸に浸み入る。

身体的接触は茂君をジキル博士からハイド氏に変えてしまう。女性の柔らかい肉体の感触が、男性の性本能を目覚めさせたのだ。純粋だった茂君の精神と獰猛な肉欲が茂君の内部で組んずほぐれつの闘いを始める。茂君の腕に少しずつ力が加わり、広子ちゃんをどんどん自分の身体に引き寄せる。
「く、苦しい!」と広子ちゃん。
「ごめん!」茂君が広子ちゃんを離す。
「いや。離さないで。抱いてて。優しく」と広子ちゃん。
茂君は今度は優しく広子ちゃんを抱く。

茂君の脳の中でジキル博士とハイド氏が激論する。
ハイド氏「やっちゃえ、やっちゃえ!転校したら、もう二度と会えないんだぞ!」
ジキル博士「でも、この子はそっとしておきたいんだよ」
ハイド氏「いいかっこしやがって、このー。やれる時は恥も外聞もなくやるのがお前さんの本性だろうが」
ジキル博士「おれだってプラトニック・ラブもするんだい!」
ハイド氏「お前に抱かれて目をつむってる娘は、本当はやられたがってるとしたら、どうだ?」
ジキル博士「この子はそういうタイプじゃないよ」
ハイド氏「やってみなきゃ分らんだろうが?」
ジキル博士「いま、ぼくたちはいい関係なんだから、壊したくないの」
ハイド氏「この子のおまんこがお前に期待してびとびとだったら、どうする?」
ジキル博士「そんな筈ないよ。考えられない」
ハイド氏「触ってみろよ。そうすりゃ分る」
ジキル博士「彼女に嫌われるよ」
ハイド氏「もうこの子はすぐいなくなっちゃうんだ。嫌われたって問題ないよ」
ジキル博士「彼女を傷つけたくない」
ハイド氏「もう処女じゃないかも知れない」
ジキル博士「絶対処女だよ」
ハイド氏「そうだとしても、いつかこの子もやられちゃうんだぜ、どっかの野郎に」
ジキル博士「許せない。やるんならおれだ」
ハイド氏「そう!やれ!やるんだ!」

「茂君どうしたの?何か恐い顔してぶつぶつ云って」と広子ちゃん。
「え?何か聞こえた?」茂君が慌てる。
「なんか“処女”とか何とか云ってたみたい」
「えーっ?」茂君は顔を赤くする。
「ねえ、こういう時、男の人って女の子にキスしたり身体に触ったりするもんなんじゃないの?」と広子ちゃん。
「そ、そうなんだけど、ぼく、広子ちゃんに嫌われたくないから遠慮してるんだ」と茂君。
「なあんだ。わたし、わたしって全然魅力ないんだなあってがっかりしてたの」
「そんなことない。キスしたり触ったりしていいの?」
「わたし、小学生の頃から茂君好きだったの。わたしの初恋。このまま別れたくないわ」
茂君はガビーン!となった。そんな昔からの恋を告白されたのは初めてだ。やはり、広子ちゃんは茂君にとって特別の女の子なのだった。

茂君は感動しながら広子ちゃんに長い長いキスをした。それはフレンチ・キスではなかった。古典的なドライなキスだった。広子ちゃんは息が詰まる思いをしながら唇を突き出して茂君のキスに応えた。茂君はセーラー服の下から手を入れ、下着の上から広子ちゃんの胸をまさぐった。15歳だからまだ完全な乳房にはなっていないが、既に適度に丸く隆起している。おっぱいに触れば、もうフレンチ・キスしかなかった。二人は積極的に舌を絡ませた。
茂君の本能はここで下半身に手を伸ばすことを示唆していた。しかし、茂君はためらった。
「茂君。全部上げる」と広子ちゃんが云った。
「え、ほんと?」茂君は信じられなかった。
「あの子は」と広子ちゃんは、まだコンピュータ・モニタの中でストップ・モーションになっている自分を指差した。「何年も茂君が好きだったの。卒業証書を上げてもいいんじゃない?」
「でも、ぼく、あの子にあの輝くような表情を失ってほしくないんだ」と茂君。
「あの子は、いつかは誰かと結婚して主婦になって子供を産み、あの表情を失うと思うわ。悲しいけど」
ハイド氏の云う通りだ。青春はいまだけなのだ。

茂君は着ているものを脱ぎ、広子ちゃんを全裸にし、ベッドの上に引っ張り上げた。広子ちゃんは楽しそうな笑い声をあげ、茂君の裸に見入った。男性の勃起したペニスを見る目は、紛れもなくこれが初体験であることを物語っていた。
「触っていいよ」と茂君が云った。
広子ちゃんは生物の授業のように、見馴れぬ物体を観察し、恐る恐る手を伸ばした。
「これが入るの?わたしに?」と広子ちゃん。「大きいわ」
「大丈夫」と茂君。「赤ちゃんが出て来るところなんだから」
「そう云われればそうね」
「恐い?」と茂君。
「恐い。でも、いいわ。決心したんだから」と広子ちゃん。
茂君は広子ちゃんの健気さに打たれた。茂君に惚れ抜いてくれている広子ちゃんが愛しかった。自分が20代なら結婚を申し込みかねないほど感動した。

「あああっ!」広子ちゃんは処女を失った。茂君はコンドームを着けたペニスを静かに入れたつもりだが、いずれにしても一瞬の痛みは避けられなかった。茂君は広子ちゃんのおまんこの中にペニスを安置し、彼女の痛みが引くのを待った。(自分は広子ちゃんをシンボルとする青春そのものとおまんこしているのだ)と思った。(彼女の云う通り、あと数年で自分たちの青春は過去のものになる。おれたちは二人で想い出を作っているのだ)と思った。

「茂君。セックスってこういうもんなの?」と広子ちゃん。
「違うよ。セックスって気持のいいものなんだ。ぼくたち、まだ何もしてないんだよ」と茂君。
「じゃ、気持よくして。お願い」と広子ちゃんが云った。




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