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10. 姉おつる

長女・おつる(16歳)が戻って来た。盆休みで帰郷したわけではない。肺病を病み、働けなくなって製糸工場をお払い箱になったのだ。おつるは、妹の丸ぽちゃの顔とは反対に瓜実顔で、もともと色白であったが病気のせいで透き通るような顔色になり、ぞっとするような美しさだった。

萬造と宗治はもうおつるの稼ぎが当てに出来なくなり、ますます家計が苦しくなる予感に絶望的になった。宗治は「穀潰しがもう一人増えた」と声高に嫌味を云った。おつるの手前か、男たちは家の中でおまんを犯すことは控え、納屋におまんを引き摺り込んでおまんこした。

ある夜、男二人は炉端でどぶろくを飲んでいた。
「おまんば温泉女郎に売り飛ばすべか?」と宗治が云った。当時、口減らしのため女郎に売られる娘は少なくなかった。特に凶作の年などは大勢が売り飛ばされた。しかし、12歳ではいかにも幼過ぎるので、16歳ぐらいになるまで下働きをさせられ、それから客の相手をさせられることになる。
「12じゃ高く売れねど」と萬造。
「けんど、穀潰し二人は飼っておげねべ」宗治が冷酷に云い放った。部屋の隅で臥せっているおつるに聞こえることなど気にしていない。
「おまんがいねぐなったら、おれだぢが困るべ」萬造は指で卑猥な性交の形を作って宗治に見せる。
「代わりがいるでねが」宗治はおつるの方を顎でしゃくる。おつるを性の道具にすれば困らないという意味だ。 萬造は驚いた。今の今までおつるまで性のはけ口にしようなどと考えたことはなかった。しかし、次女とやっているなら長女とやって悪い理由はない。萬造は布団にくるまっているおつるを見やった。美しい横顔が見える。萬造の心に欲望の火が灯った。
「ええ考(かんげ)えだべ」萬造の心を見透かしたように、宗治が得意そうな顔をした。
二人はどぶろくを注ぎ合って呑み続けた。

その夜、おまんは誰にも犯されず安らかに眠っていた。しかし、地震のような揺れで目を覚ました。ふと炉端を見て驚いた。信じられないような光景が展開していた。父・萬造が全裸にしたおつるとおまんこしていた。兄・宗治はおつるの豊かなおっぱいをしゃぶっていた。彼らは早くもおまんを温泉女郎に売り飛ばした後、おつるで性欲を処理出来るかどうか試していたのだ。宗治は山羊との獣姦以外はおまんとしか性の経験はなかった。彼にとって妹・おつるの豊かなおっぱいは初めて見るものであった。彼はおつるのおっぱいを揉み、乳首をいたぶり、乳首を舐めた。長男のその行為を見ながら、萬造は長女のおまんこに摩羅をぶち込み、せっせと前進後退運動を繰り返していた。

「やめでーっ!」おまんが叫んだ。「姉ちゃんは病気だ。へづげだな(そんなひどい)ごどしちゃなんね!」おまんは父親の胸をド突き、兄の頭を叩いた。
「おまん」おつるが静かに云った。「ええんだ。おれは何されでもええ。静がにしてろ」
「だって姉ちゃん!」おまんは呆れた。父と兄の無思慮にも愛想が尽きたが、諦め切ったような姉の態度も不可解だった。こんなことをされたら治る病気も治らないではないか。
おっぱいをいじくることに満足した宗治は、勃起した摩羅をおつるの口に突っ込もうとした。
「駄目だ、兄(あん)つぁ!」おまんが怒鳴った。姉にそんなことが出来る元気はない。
宗治はおまんの制止も聞かず、ぐぐっと摩羅を妹の口に突っ込んだ。
「舐(ね)ぶれ!」宗治が命じた。
未経験なおつるには何のことか分らなかったが、兄の命令通り舌で摩羅を舐め始めた。
美しい女が勃起した男根をしゃぶる枕絵のような姿は、二人の男を興奮させた。宗治はおつるの舐め方が物足りず、自分の腰を動かして妹の口を犯した。萬造はいたぶられている娘の姿を見ながら腰の動きを最高にした。
二人の男がイこうとした矢先、「うががが」おつるが喉を詰まらせるような音を立てたかと思うと、「げぼーっ!」と口から鮮血をほとばしらせた。血は宗治の腰から下を真っ赤に染めた。
「何だ、こらあっ!」宗治が驚愕した。
萬造も腰を動きを止め、凍り付いた。山奥に住み教育もない萬造と宗治に、肺病についての知識など無かった。だからこんな乱暴狼藉をして恥じなかったわけだし、ろくに薬も与えられていないおつるに死期が迫っていることなど知る由もなかったのだ。

おつるの血反吐を見て、二人の男は初めて事態の深刻さを悟った。ただし、おつるを介護しようというのでなく、おつるの病気の伝染を恐れて彼女を納屋に隔離することにした。

おつるは死にかけた家畜のように納屋に見捨てられた。おまんは水の入ったやかんと湯のみを納屋に運んだ。父と兄の姉に対するひどい仕打ちに胸が痛み、涙が後から後から溢れた。
「泣ぐでね、おまん」おつるが云った。「おれはもう長くね。んだがら(だから)、何されでもええ。おめ(お前)だげはあいづらの餌食になるなよ。気ぃつけろ」
「もう遅(おせ)えだ」おまんは、父と兄に日夜犯されていることを告白した。
「何だど!たった12のおぼご(子供)のおめ(お前)に?あいづらは犬畜生より劣(おど)るやづらだな」おつるは歯ぎしりした。
「つる姉ちゃん、おれおぼご(子供)出来(でぎ)っぺが?おれはそれが恐(こえ)えだ」おまんが真剣に聞く。
「おめ(お前)、もう月のもんあんのが?」とおつる。
「月のもんて何だ?」
「毎月あそこから“つ”(血)出るだ。そうなると妊娠してもおがしぐね」
「んー、毎月つ(血)なんぞまぁんだ出ねえ」
「んだら大丈夫(でえじょぶ)だ。まぁんだ心配(しんぺえ)ねえ」
「そうが、よがった!」おまんが胸を撫で下ろす。
「逃げろ、おまん」おつるがおまんの襟を掴んで云う。
「え?」おまんがびっくりする。
「あいづらに犯られ続げだら、いづかは妊娠する。おめ(お前)の人生は終りだ」
「…」おまんは何と云っていいか分らない。
「あいづらはおめ(お前)を温泉女郎に売り飛ばす相談もしてただ」
「おれを女郎にが?」驚いた。
「んだ。逃げろ!おまん!」
「逃げるって、どごさ?」おまんには想像もつかない。
「とりあえず酒田さ行げ。女中奉公でも何でもしろ。こごさ(ここに)いるよりずっとええ」
「酒田?」酒田は川を下って海と交わるところにある港町である。この辺りでは最も栄えている大きな町であった。

「おまん。おめ(お前)にこればやる」おつるは力を振り絞って着物の襟元を引きちぎると、折り畳んだ数枚の百円札を取り出した。「これだげあれば、船賃にも宿代にもなるべ。いい奉公先探せ」
「つる姉ちゃん!」
「あいづらに金見せんでねど。早ぐ逃げろ、おまん!」
「おれ、姉ちゃん見捨てで逃げらんね。駄目だ」
「ほげなす(馬鹿)!」おつるが怒鳴りながらげほげほと咳き込み、また喉から鮮血を迸(ほとばし)らせた。

数日後、おつるは亡くなった。葬儀は質素だったが、それでも萬造は庄屋から借金せねばならなかった。




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