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12. 炎熱地獄

その夜、おまんは浮き浮きと家事をした。夕餉の支度をし、風呂を焚き付けた。

男二人はおつるの葬式のための借金に暗い思いをし、自棄(やけ)酒を呑んでいた。人間は前途が暗くなると性欲が亢進する。多分それは種(しゅ)を残そうという動物的本能なのだろう。実は、萬造も宗治も現在「猿のせんずり」状態だった。「せんずり」とは自慰のことで、千回も摩羅を擦るというのが語源だが、猿が自慰を覚えると、馬鹿だから死ぬまで自慰に耽(ふけ)ってしまうという文句である。二人ともおまんとやり過ぎて、昼間の畑仕事にも差し支えるほどふらふらになっていた。しかし、宗治がおまんこしているのを見れば刺激されて萬造も発情し、萬造がやれば宗治もやりたくなるという悪循環であった。

「おまん!こっちゃ来(こ)!」宗治が云った。
「いま、まま(食事)の用意してるだ」おまんは逆らう。おまんこのために邪魔されたくなかった。
「口答えすんでね。来(こ)うつったら来(こ)!」と宗治。
おまんは仕方なく濡れた手を拭いてから前掛けを外して、土間を後にした。炉端でおまんは着物と半襦袢を脱ぎ、腰巻きを外して全裸になり四つん這いになった。犬のように後ろからやるのが宗治の好みであった。山羊で童貞を失った後遺症なのだろう。
宗治は父が見ているのも構わず着物の前をはだけ、勃起した摩羅を露出させておまんの後ろに立った。やや腰を落とし、おまんの尻に摩羅の狙いを定める。ぐい!と押す。
「そごでね。まっと下だ」おまんが云う。
宗治がぐいぐい押す。
「いっでえ(痛い)!。そごは“けづめど”(尻の穴)だ。まっと下だでば!」おまんが怒鳴る。
「うっせ。今日はおめ(お前)のけづめどに入れるだ」
「えーっ?」おまんは愕然とした。尻の穴に摩羅を突っ込まれたら裂けてしまう。
「宗治!」萬造が口を挟む。「おまんの身体ぶくす(壊す)んでね。てんげに(いい加減に)すろ」
「おれは止めね。ぺっちょ(おまんこ)よりきづい穴だば、どだな味すっか試すだ」宗治はぐいぐいおまんの肛門を押す。
「いっでえ(痛い)!あんつぁ、やめでけろ。父ちゃん、止(と)めでけろ!」おまんが必死に叫ぶ。萬造には性欲を剥き出しにした息子を止める元気はなく、無言でどぶろくを呑んでいる。
「いで(痛い)、いでえよう!」おまんが泣く。まだ宗治の摩羅は肛門に入っていない。12歳の肛門は宗治の摩羅には小さ過ぎた。愛液の出る膣とは違って、肛門には潤滑剤が必要なのだが、宗治にそんな知識はなく、闇雲に押し込もうとしているのだ。

おまんの目の前に囲炉裡がある。身動き出来るなら、庄屋にやったように宗治に灰をぶっ掛けて逃げることも出来る。しかし、しっかり腰を押さえられているので、前進は叶わなかった。
「なして入んねんだ?」独りごちた宗治は、仕方なく自分の唾で摩羅とおまんの肛門を濡らした。どうあってもやる気なのだ。
おまんは必死で考えた。何とか逃げなくてはならない。何をしてでも。どんな方法でも。
「こんだ入(へえ)るべ」宗治は唾で濡らしたおまんの肛門に亀頭をあてがった。
その時、「ぶぶうーっ、ぷーっ!」とおまんがおならをぶっぱなした。毎日大根飯なのだから、屁をひるのは朝飯前である。四つん這いの姿勢のせいで瓦斯(ガス)は全部肛門近くに溜まっていたから、この時の屁は盛大だった。
「ひゃあっ!臭(くっせ)えーっ!」宗治は思わずおまんの身体を放した。
おまんはババッと衣類を引っ掴むと一目散で駆け出した。納屋ではすぐ見つかるから、今度は裏山へ分け入った。裸の身体に着物をまとう。しばらく胸のどきんどきんが止まらなかった。まだ恐かった。しかし、尻を裂かれなくてよかったと思った。

男たちは家の周りでおまんを探し廻ったが見つからなかった。夕食の準備の途中でおまんがいなくなったのだから食事は出来ていない。仕方なく二人はどぶろくをがぶ飲みした。
ふっと萬造が立ち上がると着物の前をはだけ、褌の横から勃起した摩羅を引っ張り出し、宗治の顔の前に突き出した。
「?」宗治には何のことか分らない。
「舐(ね)ぶれ」萬造が云った。
「気が狂ったのか?おれはおまんでね。宗治だど」
「わがってる。舐(ね)ぶれ」
「おれはへな(女)でね。おどご(男)の摩羅なんぞ舐(ね)ぶらね」
「口はおどご(男)もへな(女)も変わんね。おまんがどっかさ消えだのは、おめ(お前)の責任だ。責任取れ」萬造がぐいぐい摩羅を突き出す。
「お父(どう)!おれ、やだ、そっだらごど」
「やんねど、ぶっ叩ぐど!」萬造が脅す。
「んもうっ!」宗治がふてくされる。
「やれ!」と萬造。
「しゃあねえな。やる、やるけどお父(どう)もおれの摩羅舐(ね)ぶってくれっか?」
「おれが?」萬造が呆れる。
「それが平等つうもんだべ」と宗治。
「わがた。やる」
「んだら、やるべ」

宗治にも父親の云う理屈は理解出来た。口に性別はない。男の口と舌で舐めても気持の良さは同じ筈だ。宗治はおまんの最後っ屁に図られて欲求不満のまま取り残されていた。もう山羊とおまんこする気はなかったから、父に舐めて貰えれば最高だった。宗治は父の摩羅を口に入れ、ぺろぺろ舐めたりすぽすぽしたりした。自分の経験で舐められたい場所は分っているから、痒い所に手の届く舐め方である。
「おうおう、おめ(お前)、巧(うめ)えでねが」萬造が誉める。
宗治は摩羅の先端に近い下側の性感帯を舌先でこちょこちょする。
「おーお、ええど、ええど」萬造が喜ぶ。しばらくすると、萬造は宗治に警戒信号を発した。「宗治、行(い)ぐど!」ぴゅぴゅぴゅーん!と父親の精液が息子の口内に飛び散った。
「うげーっ!げほげほっ、げっほげほ!」精液が宗治の喉に引っ掛かったのだ。
「んだがら(だから)、『行(い)ぐど』って云ったべ」萬造が云う。
「うぐぐ、げほげほ!」宗治にはおまんの苦しみがよく分った。

「お父(どう)、こんだ、おれの番だ。やってけろ」しばらくして、着物の前をはだけながら宗治が云った。
「また今度(こんだ)だ。もうくたびっちゃ(疲れた)。寝るだ」萬造は寝床に向おうとする。
「そうは行がね。おれの摩羅も立ってるだ。舐めてけろ」宗治が父の着物を掴んで引き戻す。
「明日やってやる。もう寝ろ」
「お父(どう)、おれを騙したのが?」宗治が気色ばむ。
「しぇば(だったら)どうすっだ?」
「このーっ!」宗治は父を押し倒そうとする。
「何を!」萬造も残る力を振り絞って息子の攻撃を躱す。
二人は取っ組み合い、殴り合い、もつれ合った。しばらくすると、二人とも着物が脱げてしまい、裸の喧嘩になった。相当酒を呑んだ後で、過激に動けば動くほど酔いが廻る。日頃からふらふらしている二人は酔いと疲れで伸びてしまった。二人はそのまま寝入ってしまった。

二人が脱ぎ散らかした着物の一つが囲炉裡の火にかぶさっており、めらめらと燃え上がった。細かい火の粉が飛び散り、天井の藁屋根に燃え移った。火の粉は破れ障子や襖にも燃え移り、火は父子二人の周りを取り囲んだ。もう逃げ道はなかった。

裏山に潜んでいるおまんの鼻にきな臭い匂いが感じられた。おまんはその匂いに誘われるように家の方角に下りて来た。家から白い煙がもうもうと噴き出している。(火事だ!)父親と兄は何をしているのか?逃げたのか?消火にあたっているのか?白い煙に赤い炎がちろちろと混じり出したかと思うと、ゴオーッという音と共に家全体が火に包まれた。家の中から「ぎゃああーっ!」「助けてくれーっ!」という声が聞こえた。おまんには助けることは出来なかったし、助ける気もなかった。自分を虐げ、傷つけ、汚(けが)して来た男たちだ。当然の報いだという気がした。




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