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15. おまんの機転

「んだば、おれだぢは警察さ行くのが?」おまんが着物をつけながら和尚に聞いた。
「すぐではねえ。わしはおめ(お前)のぺっちょが気に入った。一回(いっけえ)だけで帰(けえ)すのは勿体ねえ」和尚はおまんを卓二と背中合わせに柱に縛りつけて出て行った。

おまんと卓二はしばらく何も云わなかった。
「卓二さあ」ついにおまんが口を切った。
「ん?」と卓二。
「もうおれのごど嫌えになったべな?」
「え?」
「知らねえ男にあだな(あんな)ごどされで、その上よがってしまって…」おまんが口惜しさで泣く。
「ほげなす(馬鹿)。犬に噛まれたと思うだ。犬に噛まれだ嫁を離縁する亭主あんめ」
「んだば、卓二さあ、おれば許してくれんのが?」おまんの心に希望の灯がともる。
「許すも許さねもねえべ。村にいだっておめ(お前)は庄屋に犯(や)られるわげだし、同しこんだべ」
「んだ」そう云えばそうだった。おまんには男たちから犯られないで済む運命はないのかも知れない。「んでも、よがってしまったごどは?」おまんは全てをすっきりさせたい。
「おめ(お前)があの和尚に惚れだら、おれはおめ(お前)を許さね。けんど、おめ(お前)はまぁんだおれば好きだべ」
「当たり前(めえ)だ。おれは卓二さあ以外の男は好きになんね」おまんが断言する。
「んだら問題ねえ。おめ(お前)の身体は無理矢理気持(きもぢ)よくされでしまっただ。止められるもんでね」
「んだ。おれはあのくそ坊主が憎ぐで憎ぐで仕方(すかだ)ねえのに、身体が勝手に感じでしまっただ」おまんが回想する。
「くそ坊主か!ははは」
「おれの心と身体は別もんてわげが。恐ろしもんだな」
「そういうこった。けんど、このまま村さ帰(けえ)されるのは惨めだな。一生みんなに云われっど」と卓二。
「おれ、何とか逃げる方法考えるだ。男衆(し)は皆おれば狙って来る。おれが何とかせねば…」おまんが云い、二人はそれから沈黙した。

数時間経った頃、部屋に小坊主が入って来た。小坊主とは云っても17歳か18歳だろうか。間抜けた顔で坊主頭、白い衣を来ている。
「あ、小僧さあ、助けてけろ。縄を解いてけろ!」おまんが頼む。
「おれは小僧なんぞでねえ。掃除やまま(めし)の支度ばり(ばかり)でねぐ、おっさま(和尚さん)の代わりに檀家参りも出来っだ。ちゃんと珍念という名前もある」
「そらえらい悪がった」卓二が云う。「珍念さあ、どうが助けでけろ。おらだぢ何も悪いごどしてねんだ」
「おめだ(お前たち)は餓鬼の癖に駆け落ちした奴等だ。村さ帰(けえ)されで百叩きにされればええだ」
「そっだらごと云わねで逃がしてけろ。お願えだ!」とおまん。
「冗談でねえ。おめだ(お前たち)を逃がしたら、寺ば追ん出される」
「珍念さあ!」おまんが必死で云う。「おれだぢを逃がしてくれればええごどしてやるす」
「何だ?ぺっちょが?」と珍念。
「そげなもんでね。いまっと(もっと)ええもんだ」
「ぺっちょよりええもんなど、あんめ?」
「あんだ。おれ、男の“だんべ”(摩羅)舐めるの巧いだ。なあ、あんつぁ?」おまんが卓二に振る。
「ん、んだ」卓二が慌てて云う。「こいつ舐めるの巧えし、ぺっちょなんかよりずっとええだ」卓二には見当もつかなかったが、おまんが自分に振ったということは何か目論みがあるに違いなかった。
「へな(女)が“だんべ”舐めるなんて聞いだごどねえぞ」と珍念。
「珍念さあはぺっちょしたことねえのが?」と卓二。
「馬鹿にすんな。何度もあらあ!」
「ぺっちょの中にべろ(舌)みでえに動くものあったらどげだっす?」
「そ、そら気持(きもぢ)えがべな」と珍念。
「んだべ。舐めで貰うっつうのはそれなんだっす」卓二が駄目を押す。

珍念はしばらく考えていたが、次第に女に摩羅を舐めさせるという妄想が膨らんで来て止まらなくなった。
「んだら、やってみれ」珍念は衣の前をはだけて摩羅を出す。
「逃がしてくんねばやんねっす」とおまん。
「わがた。逃がすべ」と珍念。
「珍念さあ、さっきおれだぢを逃がしたら寺追ん出されるつったでねがっす。そんでも逃がしてくれんのがっす?」おまんが念を押す。
「しょうーない(仕方ない)。早ぐ舐(ね)ぶれ!」
「ずぼ(嘘)でねべな?」
「ずぼ(嘘)でね」
「んだら、いまっと(もっと)前さ来て貰いでっす。ほご(そこ)じゃ舐めらんねっす」
「こうが?」珍念が一歩前に出て腰を落とし、おまんの口の前に摩羅を突き出す。それはまだ半勃起状態で固くなかった。
おまんは舌と唇を使って珍念の摩羅を舐め廻す。
「ほんてんだ。こらあ気持(きもぢ)ええもんだな」珍念が快感を味わい出す。
おまんはこれまでの経験を総動員し、珍念の摩羅を立たせようとする。珍念はおまんの口を出たり入ったりする自分の摩羅を見た。女に排泄器官を舐めさせるのは自尊心をくすぐることだった。その女が子供とは云え可愛い顔をしているのだから、なおさらだ。珍念の興奮は高まり、摩羅はにょきにょきと完全勃起した。おまんはなおも舐め続け、一寸やそっとでは勃起は納まらないいうところまで到達した。おまんは珍念の摩羅にぐいっと歯を立て、かなり食い込ませた。
「いででっ!何すんだ!いでえ(痛い)、噛むな!」
卓二はおまんの作戦を了解した。「珍念さん、おれの縄を解げ!でねえとにさ(あんた)の摩羅は胴体とおさらばだど」
「そげなごど出来っか!」珍念が拒む。おまんはもっと歯を食い込ませる。「いでででで。やめろ、噛まねでけろ!」
「縄を解け!ちゃっちゃど(早く)!」
「出来ね!」と珍念。
「しゃーね(仕方ない)。おまん、珍念さんのだんべ(摩羅)を食い千切れ!」卓二が命ずる。
「や、やめでけろ!な、縄ば外す!」珍念は手を伸ばして、卓二の縄を解く。
卓二は外された縄で逆に珍念を縛ってしまった。摩羅を噛み切られる恐怖によって、珍念の一物は萎び始めていた。もう少し時間が経っていたら、おまんの作戦はうまく行かないところだった。

卓二は、珍念の腰にぶら下がっていた手拭いで珍念に猿ぐつわをかませた。これで助けは呼べず、時間が稼げる。その後でやっとおまんの縄を解いた。二人は本堂へ戻り出したが、台所に差しかかった時、卓二が立ち止まった。
「おまん、先に本堂へ、んげ(行け)。おれもすぐえぐ(行く)」
「何すっだ?」おまんが聞く。
「いいがら、早ぐんげ(行け)!」
おまんは本堂の入り口に脱ぎ捨てたままだった履物を履き、じりじりしながら卓二を待った。ややあって、卓二が出て来た。二人は大急ぎで遁走した。

二人は街道を避け、山の中を移動した。和尚が駐在所に連絡していれば大勢の人が道路を見張っているに違いない。ひょっとしたら山狩りが行なわれる恐れもある。一刻も早く村境を越えるべきだった。二人は疲れて動けなくなるまで歩き、ついに竹やぶの中でへたりこんだ。
心臓はどきどきし、呼吸は乱れ、足がつった。しばらく話も出来なかった。
「おまん?」と卓二。
「何だ、卓二さあ?」
「おめ(お前)、やるもんだな。あの小僧の“だんべ”(摩羅)にかぶづぐ(噛み付く)なんて」
「ねっづぐ(一生懸命)考えただ。あのくそ坊主にやるべと思ってただけんとよ、小僧でもええど思って」
「偉(えれ)え。よぐ考えたな」卓二が誉める。
「卓二さあ?」
「ん?」
「卓二さあが浮気したら、卓二さあの“だんべ”噛み切るど。ええが?」とおまん。
「恐っそろしい!えれえへなこ(女の子)と云い交わしちまったな、こら」卓二が笑う。
「んだがら(だから)、浮気すねでけろ。卓二さあ」
「おめ(お前)はどうなんだ?おめ(お前)が浮気したら、おれはどご噛み切ればいい?」卓二が笑う。
「おれは浮気なんぞしねえ。たとえ身体は汚されでも、心は卓二さあ一人のもんだ。死ぬまで」

卓二はおまんの素直な誓いを聞いて涙が出そうになった。(おれもこの女を一生愛するのだ)そう思った。卓二はむっくり起き上がるとズボンを脱ぎ始めた。
「何しった(何してるの)、卓二さあ?」おまんが不審がる。
「ぺっちょすっだ。おめ(お前)の身体にあの和尚の“ずろ”(精液)が残(のご)ってるの、気に食わね。おれのずろでぼん出して(追い出して)やる!」卓二は勃起した摩羅をしごいた。
「頭(あだま)ええ!おれも嫌(や)だっただ。おれの身体、きしぇ(綺麗)にしてけろ」おまんも着物の前をはだけ腰巻きを開く。
卓二はすぐさまおまんの膣に指を入れた。そこはまだ和尚の精液でぬるぬるしていた。(クソ!)卓二は以前やったように親指の腹でおまんの陰核を撫で廻し、中指で膣を出し入れした。
「あああ!」おまんが感じる。「やって、卓二さあ!」
卓二はおまんに覆いかぶさり、摩羅をずぶずぶとおまんの身体に埋め込んだ。
「うおお!」おまんが呻く。
卓二は和尚がおまんをイかした技巧を盗んでいた。普通、他人の性交を見るという機会は少ないし、あっても目と鼻の先のような場所から見られるものではない。しかし、和尚は目の前で年季の入った技を披露して見せたのだ。卓二は盗んだ技をおまんの身体で試したかった。
「うぐぐ」おまんも卓二の変貌に気づいた。以前の卓二よりもずっと巧みにおまんに快楽をもたらしてくれている。あの憎らしいくそ坊主に犯られた時と同じような快感が身体を駆け巡る。「あーっ!」
卓二は満足だった。こんなにも早くおまんをよがらせられるとは!卓二はおまんの太股を抱え、腰を右に廻し、左に廻し、ぐりぐりさせ、摩羅を抜き差しした。
「ひー!死ぬーっ!」おまんに絶頂が迫る。
卓二は身を屈めておまんの口に吸い付き、同時に腰の運動を急速にした。
「ぶぐぐぐ、ぶぎゃーっ!」おまんがイった。
「おおおーっ!」卓二もどばどばどばーっと射精した。

疲れも取れ、性欲も満足させると食欲が頭をもたげて来る。
「腹減った」おまんが呟いた。
卓二は風呂敷包みを解き、中から二つのおにぎりを取り出した。おまんは手品でも見たように目を白黒させた。
「なに、ほいづ(何よ、それ?)?」
「寺の台所に飯櫃(こめびつ)があったもんで、大急ぎで作っただ。形は悪いけど我慢すっだ」
「んまあ、卓二さあは凄い人だ。尊敬すっだ」とおまん。
「今までは尊敬してねがっただな?」卓二が突っ込む。
「そうではねえけんとね」おまんが笑って、おにぎりにかぶりつく。
「半分残(のご)しとげ。こんだ、いつけ(食え)るか分(わが)んねがら」
「うん」




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