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16. 巫女の親切

二人は一昼夜歩き、もう大丈夫だろうと見極め、街道に戻った。村々を通り抜けながら、ところどころで畑の作物を盗んで飢えをしのいだ。いくつか寺を見掛けたが、また好色な坊主に出会うといけないので、素通りした。

神社があった。地面に箒の目が通っている。そっと入って行くと、遠く朝靄の中で社務所の前を箒で掃いている、白い衣に赤い袴の巫女(みこ)の姿が見えた。卓二とおまんは、巫女さんに見つからぬよう神社の裏手に廻った。本殿の裏はこんもりとした森があり、その中に塀で囲われた小さな神殿があった。二人は履物を脱いで階段を数段上がり、神殿の縁側に横になって身体を休めた。

「何だ、おめだ(お前さんたち)?」女の声がした。
うっすらと目を開けた卓二の目に巫女姿の女が覆いかぶさっていた。遠目に見た時には20代の女に見えた巫女は、実は皺だらけの50過ぎの老女であった。卓二は(なんでいつもこうすぐ見つかってしまうのだろう)と思った。まだ横になって数分も経っていないのだ。
「なして?」目覚めたおまんが聞いた。卓二と同じ疑問を持ったのだ。
「おれがきしぇ(綺麗)に掃き清めた地面がすぐ踏みにじられてれば、跡をつけるのは当然だべ?」巫女は云った。卓二は不注意を悔やんだ。「おめだ(お前さんたち)、どごさ行ぐだ?」巫女が聞いた。
「酒田さ行ぐとごだっす」卓二が答える。例の病気の母親の話をする。
「酒田まで歩いでが?」老巫女が聞いた。
「次の船着き場までだっす。そごがら舟に乗りでど思ってるっす」と卓二。
「次の船着き場に着く頃には、もう舟は出とる。少し、休んでげ」と巫女が云った。
「あのー」卓二が恐る恐る云う。「警察とが消防団とが、おれだぢ探してねでがっすか?」
「なに?おめだ(お前さんたち)、何か悪いごどして来たのが?」
「いえ、そうではねども(そうじゃないけど)」
「んだら、うっちゃ(家に)入(へえ)れ。まま(飯)食わしてやる」

おまんと卓二は「まま食わしてやる」に懲りていた。あのくそ坊主もそう云って、おまんを手篭めにしたのだ。しかし、この老巫女は大丈夫なような気がした。いざとなれば、卓二でもこの老女を突き飛ばしたり縛ったり出来そうだったからだ。巫女が用意してくれた朝飯は、鯵の干物に沢庵、味噌汁という質素なものだったが、大根飯(めし)しか食べていなかったおまんには、それは山海の珍味に思えた。がつがつ食べた。

卓二は、お茶を注いでくれる巫女の顔をしげしげと見た。自分の母親と同じ、52ぐらいの年齢に思えた。顔に皺は寄っているが、丸顔で人の良さそうな老女である。あのくそ坊主のように、自分たちを警察に突き出す人間には思えなかった。

「おめだ(お前さんたち)、長く湯(風呂)さ入(へえ)ってねえみでだな。こんにゃ(今夜)は泊まって湯さ入(へえ)れ。明日出掛けても遅ぐねえべ」
「巫女さあ、御馳走(ごっそ)様でした。湯なんてとんでもねえっす」卓二が云った。
「遠慮すんでね。おれの親切受げでけろ」
卓二とおまんは顔を見合わせた。今度は謀(はかりごと)がありそうではない。おまんが大きく頷く。
「巫女さあ。おれだぢに何かさせでけらっしゃい。雑巾掛けとか薪割りとか何でもやるっす」卓二が云った。
「なえだて(何でも)やってくれっか?ほんて(本当)?」巫女が念を押す。
「なえだて(何でも)やるす」卓二が請け合う。
「んだば、先ずそっちゃのへなこ(女の子)には神殿の雑巾掛け頼むだ。おめ(お前)は薪割ってけろ」
「わがったっす」

二人は一生懸命働いた。巫女は昼ご飯も御馳走してくれた。
「神主さあ、いねのげ?」卓二が巫女に尋ねた。
「もう死んで長(なげ)えだ。息子だぢの誰がが継いでくれると思っとんだが」
「息子さあ、どしただ?」
「正一と善夫、二人とも戦争に行って帰(けえ)って来ねえだ。生きてりゃ、今頃は28と26だが…」
「死んだのげ?」とおまん。
「死ぬもんか!かなぁなず(必ず)帰(けえ)って来る。行方不明なだげだ」巫女さんはきっぱりと云った。
「んだとええなあ」おまんが云った。
「長女は酒田の米問屋に嫁に行ってな。幸せに暮らしてるだ」
「酒田にが!」卓二が驚く。
「んだ。おめだ(お前さんたち)も酒田さ行ぐんだったな?」と巫女。
「んだっす」

巫女は、午後には畑の手入れを頼んだ。いつしか日は暮れていた。夕食が振る舞われた。美味しい鍋料理だった。巫女は自分が先に風呂に入り、おまんと卓二にも入るように云った。12歳の女の子が14歳の男の子と一緒に風呂に入るわけにもいかず、二人は別々に入った。風呂を出ると、自分たちの汚れた衣類は見当たらず、子供用の浴衣が二枚用意されていた。二人は仕方なくそれを身につけた。

「おう。おめだ(お前さんたち)、きしぇ(綺麗)になったが?もう汗臭くねえべな?」巫女さんが云った。「寝所はこっちだ」
巫女さんについて行くと、大きな寝所に三組の布団が敷いてあった。
「おめ(お前)はわしの隣りに寝ろ。“へなこ”(女の子)はあっちゃだ」巫女が指図した。
三人は布団に潜り込んだ。よく働いたので卓二もおまんもすぐ寝入ってしまった。

夜更け。むっくり起き上がった巫女さんは、寝間着を脱いで全裸になった。50過ぎとは云え、乳房はまだ垂れておらず、陰毛にも白髪はない。肉付きのよい身体は月明かりでは大年増に見えなくもなかった。巫女さんは隣りの卓二の布団に潜り込むと、卓二の浴衣をまくって卓二の摩羅を舐め始めた。

卓二は艷夢を見ていた。相手はおまんなのか他の誰かか分らない。とにかくどんどん興奮させられ、もう性交するしかないところまで追い込まれた。そこで目が覚めた。気持がいい筈だった。誰かが自分の摩羅を舐めている!おまんか?卓二は手を伸ばして相手の顔を探った。すべすべの肌のおまんではなかった。皺の多い巫女さんだった!卓二は困った。おまんに浮気はしないと誓ってある。浮気したら摩羅を噛み切られてしまう。しかし、卓二には巫女の行動を止めることは出来なかった。気持が良くて、とても止められない。卓二の摩羅はぐんぐん大きくなった。

卓二の摩羅が勃起すると、巫女は身体をずり上げて卓二の腰の上に跨がった。卓二の一物を自分のおまんこにあてがう。三人の子を産んだおまんこに14歳の男根がすぽんと納まった。巫女は邪魔な掛け布団を払いのけ、腰を上下させ、ぐりぐり廻す。おまんのおまんこに慣れていた卓二にとって、老いた巫女の緩い膣はさほど快いものではなかった。しかし、巫女にはおまんにないものがあった。乳房である。卓二は硝子窓から差し込む月明かりで、巫女の大きな乳房が目の前でぶらんぶらん揺れるのを見た。思えば、巫女の年齢は卓二の母親の年齢に近かった。卓二の両手が巫女の両の乳房を掴む。揉む。乳首をいじくる。
「あうう」巫女が低く呻く。
巫女は上体を前傾させて乳房が卓二の顔の上に来るようにした。卓二は一方の乳房を掴み、口に含んだ。ぺろぺろ舐める。乳首を噛む。
「おおお、正一!善夫!」巫女が口走った。
卓二は巫女の息子たちの代わりなのだ。この性交は息子のどれかを呼び戻すための儀式なのかも知れない。卓二は巫女の興奮に巻き込まれ、下から腰を突き上げた。
「あうあうあうあう!」巫女が連続してよがる。

巫女の呻きがおまんを目覚めさせた。最初、おまんは卓二が病気になったのかと思った。
「卓二さあ、卓二さあ!大丈夫(でえじょぶ)が?どしただ?」おまんは暗闇の中で怒鳴った。
「何でもね。寝でろ!」巫女の声がした。
おまんは驚いた。では、聞いたのは巫女の呻きだったのだ。おまんはじっと隣りの布団の方に目を凝らす。白壁を背景に、卓二に覆いかぶさっている巫女の姿が月明かりに浮かんだ。巫女は卓二と交わっているのだ!おまんは衝撃を受け、二人の姿から目を離せなくなった。

おまんの声が巫女の動きを停止させ、そのせいで卓二の興奮を少し冷ました。卓二は巫女を抱きかかえながら身体を廻し、巫女の身体を床に横たえた。卓二は巫女の股を開き、勃起した摩羅を巫女の身体にぶち込んだ。
「あぐわっ!」巫女が歓喜の声を挙げる。
卓二は巫女のふにゃふにゃの乳を揉みながら、腰を動かす。くそ坊主から盗み、おまんをよがらせた技を使う。股の付け根を擦り合わせて巫女の陰核を刺激する。腰を深く落して、巫女の膣を上向きに突く。
「うぐぐ、正一!」巫女が喚く。
「母ちゃん!」卓二が巫女の息子に成り代わっておまんこする。
「わうわうわう、善夫っ!」と巫女。
「母ちゃんっ!」と卓二。
卓二は暗くて巫女の顔がよく見えないせいもあったが、自分の母親と性交しているような錯覚にとらわれていた。卓二は狂ったように摩羅で巫女の体内を掻き回す。
「うがが、正一っ!」巫女は戦場から戻った息子との交わりに喜悦し、身体をのけ反らして快楽に苦悶する。 「母ちゃんっ!」卓二が切羽詰まった声を出す。
「ぐぎゃあああ!」巫女がイった。
「むううーんっ!」卓二もイった。
おまんは身体を硬直させて、二人の絶頂を目撃していた。




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