[banner]

29. 御奉公

梅太郎が娘・多代とやりだしたため、母親・松への“親孝行”の頻度が減った。母親との性交は脳には興奮材料だったが、56歳のおまんこは梅太郎の摩羅に快いものとは云えなかった。いきおい多代とのおまんこが増える。欲求不満になった松はおまんのフィスト・ファッキングを求めるようになり、志乃の相手もしなければならないおまんは多忙を極めた。

ある日、おまんは松への“奉仕”を終えてから、松に何事か囁いた。
「そ、それはほんてんが?」松が目を見開いた。
「ほんてんだっす」とおまん。
「口は堅(かて)えが?」
「間違(まぢげ)えねえでがんす」
「わがた」

次の夜、松は卓二を寝室に呼んだ。
「おめ、若(わげ)えのにぺっちょ巧(うめ)えんだそうでねが?」松が聞いた。
「そげなごど、誰が云ったんでがっす?」卓二が面食らう。
「誰でもええ。んで、おめは年くった女でもちゃーんとよがらすっつう話だ」
「…」
「婆さんもイがすっつうのはほんてんが?」
「…」
「卓どん。おれはごしゃぐ(怒る)つもりでねんだ。話がほんてんなら、おれもやって貰いでえだ」
「大奥様!もったいねえっす。おれは奉公人ですさげ、大奥様にそげな…」
「おめは口も堅(かて)えど聞いでる。誰さも云うな」
「へ、へえ」
「なんでおめは年増が好きなんだ?」と松。
「あ、あのう、おれ母ちゃんが恋しぐで」と卓二。
「おっ母さんとやりでのが?」
「やれだらええべど思ってるだげでがんす」
「んだら、おれをおめのおっ母さんて思うだ」松が寝間着を脱いで裸になる。
「大奥様!」と卓二。
「おっ母さんと呼べ」と松。
「おっ母さん!」卓二が松に飛びかかった。

ある日、おまんが志乃に頼まれた用を足して多賀屋に戻って来ると、娘の多代が店の前にいた。その傍らに、誰が乗って来たのか馬が一頭繋がれていた。おまんにはその馬に見覚えがあるような気がしたが、どこで見たのか思い出せなかった。
「おまん、見てみろ。でけえなあ!」多代が馬を指差す。
「何がでがんす?」とおまん。
「これだよ、これ!」多代が馬に近寄って巨大な摩羅を指差す。
「お多代様、危ねえっす。下がってけらっしゃい!」おまんが制止する。
「なあに、大人(おどな)しい馬でねが。大丈夫(でえじょぶ)だ」
「蹴られだらえらいごど(大変)だっす」おまんが多代の袖を引っ張る。
「こだいでげえ(大きい)もの入れだら身体壊れるな、あはは」多代は下がらない。それどころか、もっと近寄って馬の一物に触ろうとする。
「お多代様っ!」おまんが止める前に、多代の手が馬の性器に触れた。
「ひひーんっ!」馬が前脚で立ち、おまんと多代を蹴ろうとする。
「危ねえっ!」おまんは多代を地面に倒し、多代に覆いかぶさって多代の身体を庇う。
「ひえーっ!」と多代。
馬は何度も空振りしたが、数回おまんの背中と尻を蹴った。おまんは気を失った。気配で店の番頭や丁稚たちが飛び出して来て馬を抑える。通行人たちが集まっておまんと多代を囲んだ。
「おまん、おまんっ!」多代がおまんの身体を揺さぶる。
「なに、おまん?」人垣の中から声がして、大男が人をかき分けて出て来た。それは執拗におまんを探し求めている“庄屋”と呼ばれている地主であった。商談のため山中村から酒田へやって来て、多賀屋を訪れている最中だったのだ。

おまんは布団に寝かされ、医者の手当を受けた。骨に異常はなく、数日経てば腫れも引くであろうという話だった。大奥様の松、主人・梅太郎、若奥様・志乃、そしておまんに怪我させた張本人の多代が、おまんの枕元に座っていた。
「んま(馬)の摩羅にちょす(触る)べなんて、飛んでもねえはなす(話)だ」梅太郎が顔を真っ赤にして怒る。
「噂になったら、婿など貰えねぐなるべした」志乃が愚痴る。
「本来なれば、おめが蹴られるどごだったんだ。打ち所が悪ければ死ぬがも知んね」と松。
「多代」と志乃。「おまんはおめの命の恩人だ。大事にすねどな?」
「…」多代は顔を上げられない。

「おまんの家の地主が怒鳴り込んで来ただ。おまんば村さ帰(けえ)せって」と梅太郎。
「駄目だっす!おまんはもう家(うち)の大事(でえず)な奉公人なんだがら!」と志乃。
「その地主は、別におまんを養女にしたわげでねえだべ?」と松。「ちゃーんと縁組みした養女だら帰(けえ)さんなんねども、ただの奉公人なら帰(けえ)す必要ねえ」
「んだ。奉公人が奉公先変えるのはよくあるこんだ」と志乃。

「おまんはええとしても、卓二は帰(けえ)さねばなんめ。村には卓二の母親がいで、寂しがってるつう話だ」と梅太郎。
「がらがら(急いで)卓二のおっ母さんに米送(おぐ)れ!五俵も送って、あと二年奉公させるって云うだ!」と松。卓二の夜伽がなくなったら大変だから、必死である。
「卓二は帰(けえ)さねでけろ!」多代も口を出した。「卓二ば帰(けえ)すなら、おれも家出る」
「何云ってるんだ、ほげなす(馬鹿)っ!」梅太郎が一喝する。
「どういうこんだ、多代?」志乃が訝る。
「家出るなんて物騒なごど云うでねえ。何なんだ、一体(いってえ)?」と松。
「おれ、卓どんが好きなんだず」多代が思い切って云う。
「馬鹿もん!奉公人に惚れてどうすっだ?」と梅太郎。
「おめは婿取って多賀屋を継がねばなんね。奉公人は婿に出来ね!」と松。
「卓どんは駄目だ!」と志乃。
「駄目だ」と松。志乃も松も自分たちが交わっている卓二を多代の婿になど出来るわけがなかった。

あれほど我が儘で傍若無人だった多代が、夜っぴておまんの看病をした。
「ううーん!」おまんが呻いた。
「おまん!大丈夫(でえじょぶ)が?おまん!」多代がおまんに呼びかける。
「お多代様ーっ」おまんが弱々しく云う。「お多代様は大丈夫(でえじょぶ)でがんすか?」
「おれは大丈夫(でえじょぶ)だ。おまん、しっかりしろ!良ぐなってけろ」
「勿体ねえっす。お多代様御無事でえがったあ!」とおまん。
「おまん、おめえうわ言(ごと)で卓どんの名前呼んでたぞ。おめ(お前)、卓どんが好きなのが?」
「…」
「おめ(お前)はおれの命の恩人だ。誰さも云わね。どうなんだ?」と多代。
「おれと卓どんは夫婦(めおと)になると誓った仲だっす」とおまん。
「えーっ?14と12でが?」
「歳は関係ねえっす」
「んでも、おめ、おれと卓二がやってるごど知ってるべ?」
「へえ」とおまん。
「おめ、おれを怨んでるべな?」と多代。
「へえ」
「そんでもおれを助けてくれだのが?」多代は信じられない。
「お多代様はおれの主人だ。当然のごどだっす」とおまん。
「おまん!」多代が泣き崩れた。




前頁目次次頁


Copyright © 2012 Satyl.net
E-mail: webmaster@satyl.net