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38. 梅太郎の改心

土蔵から出され、普通に食事出来るようになった多代は血色も良くなり、それと共に好色な多代の性欲も甦って来た。しかし、卓二も父も土蔵に入れられて相手になっては貰えない。授業の日でもないのに男先生のところへ行くのはためらわれた。多代は自室におまんを呼び、以前試した女同士の絡み合いをしようと持ちかけた。
「駄目だ。大奥様に、ごしゃがられる(叱られる)っす。お多代様もおれも…」とおまん。
「ええんだってば」と多代。「おばっちゃまは奉公人と交わってはいげねつっただ。ぺっちょとぺっちょだば、交わるごどなど出来ね相談だ。んだべ?」
「そらまそだけんど、おれ、蔵に入れられで絶食なんぞしたぐねっす」
「大丈夫(でえじょぶ)だって。おもやみ(心配)すんでね。やるべ、な?」多代がおまんの帯を解き始める。
「んでも、おれおっかねっす」おまんは身体を強ばらせている。
「悪(わり)いようにはすねがら」おまんを裸にした多代は自分も着物を脱ぐと、おまんを抱いて布団の上に重なり合った。

多代はおまんに接吻し、舌をおまんの口中に差し込む。二人は舌を絡め合い、湧いて来るお互いの唾液を吸い合った。おまんは多代の膨らみかけた乳首を弄くり、突端を親指の腹で刺激する。多代はおまんの股に手を伸ばし、おまんの割れ目を撫でる。おまんも片手を多代の股に伸ばし、多代の陰核を弄った。多代も負けじとおまんの陰核を刺激し、やがて愛液が滲み出て来ると指をおまんの膣に突っ込み、上向きに出し入れした。その何回かはおまんの急所(今で云うGスポット)に触れ、おまんを狂喜させた。おまんも多代の膣に指を挿入し、多代の体内を掻き回す。
「ひーっ!」と多代。
「あわはーんっ!」とおまん。
二人はお互いの陰部を刺激し合ってイこうとしていた。女にだけ出来る繊細さで陰核を優しく撫で、激しく膣内を掻き回す。
「あうーあううう!」と多代。
「ううう、あわーん!」とおまん。

突如ガラッと襖が開き、松が入って来た。
「あめーら、土蔵行きだっ!」と松。
「ひえーっ!」とおまん。
「おばっちゃまあっ!」多代が叫ぶ。
「早ぐ着物着ろ!」と松。
「待ってけらっしゃい。イぐまで待ってけらっしゃい!」多代が懇願する。
「ししょないなあ(しょうがないなあ)!イったら、おれのとごさ来(こ)!」松が消える。女同士、松もイきそびれて苛々する気分を知っていたから寛大であった。
おまんと多代は絶望的な気分に陥ったが、イかないことには話にならない。二人は全てを忘れてまた絡み合った。今度は69の体勢でお互いのおまんこを舐め合う。指で陰核や蟻の門渡りを刺激し合う。
「ぶぶうう」
「あばばば」
しばらく豚小屋のような呻き声が続く。次第に二人の興奮が高まり、二人の舌や指の動きが急速になる。
「ぶぶぶがが」
「べべべぶぶぶ」
ついに二人は狂ったようにお互いのおまんこに指を抜き差しする。
「がばばあーっ!」多代がイった。
「ぶぶぶわーっ!おまんもイった。

「おばっちゃま」おまんと二人、松の部屋に正座した多代が口を切る。「おれ、おまんと交わってねっす。女同士では交われっこねっす」多代が祖母をやりこめようと、鼻を蠢かして云う。
「嘘こぐでね。おめらは交わってただ。主人の娘と奉公人にはあるまじきこんだ」
「何も交えてねっす!」多代が云い張る。「おらだぢにはだんべ(摩羅)ねえですさげ」
「べろ(舌)ば交えてだでねえか、ほげなす(馬鹿もん)!」松が一喝した。
おまんが多代を怨めしそうに見る。多代はおまんを見てべそをかく。
「おまん、済まねえ!」と多代。
松は二人の小娘を、志乃が入っている土蔵に引っ立てて行った。そして…誰もいなくなった。家族全員と信頼出来ると思っていた奉公人・おまんと卓二らはみな土蔵に入ってしまい、松は話し相手も、一緒に食事する家族もいなくなってしまったのだ。こんな馬鹿げた話はない。松はこの窮状を何とか打開しなくてはならなかった。

翌早朝、松はいつものように二つの土蔵の尿瓶や便器を替えに行った。男の土蔵では、あわや卓二が梅太郎からお釜を掘られるところであった。松が尿瓶を振りかざして、梅太郎に容赦なくぶっかけるぞと脅して収まった。女の土蔵でも、もう少しでおまんを前にして志乃と多代の母娘の絡み合いが始まりかねない様相であった。多賀屋の“色に至る病い”はもう手がつけられないところに到達していた。松が結着をつけるべき時が来ていた。

松は一人前の朝食の膳を抱えて女の土蔵へ入った。献立は鯵の開き、玉子焼き、納豆、漬け物、それに御飯と味噌汁である。焼き魚と玉子焼きのいい香りがぷーんと土蔵内に漂う。松は一人お膳に向かい、軽く合掌したあと、食事を始めた。最も空腹な志乃を始め、育ち盛りでお腹を空かしているおまんと多代が唖然として松を見守る。松は鯵の骨を外して、身をほぐしながら突つき、玉子焼きを食べる。味噌汁をずるずる飲み、御飯をむしゃむしゃ、漬け物をぽりぽり齧る。志乃と多代とおまんの三人は松の傍ににじり寄って、松の箸使いと口の動きに見蕩れ、唾を飲み込む。
「おっ義母(か)さまっ!あんます(あんまり)だっ!」ついに志乃が怒鳴る。
「残酷だっす!」多代も抗議する。
「腹がぐうぐう鳴ってるっす!」とおまん。
「おれの云いつけ守らねがった罰だ」松は平然と食事を続ける。
志乃と多代とおまんの三人のお腹がぐるるぐるる云う唸り声と、三人が唾を飲むごくりごくりという音の三重唱が鳴り渡った。
「もう駄目!おっ母さまっ、許してけらっしゃい!」と志乃。
「おばっちゃま、まま(御飯)かしぇで(食わせて)けらっしゃい!」と多代。
「大奥様っ、お願(ねげ)えするすっ!」とおまん。

昼食時、松は男の土蔵にすき焼き鍋と御飯の膳を持って現れた。醤油のいい香りが梅太郎と卓二の鼻を襲う。煮えた牛肉と野菜の香りも交じっている。空腹の男二人は涎をだらだら流してすき焼き鍋に見入る。松はぴちゃぴちゃもぐもぐくちゃくちゃと食べ始め、時折湯気の出る味噌汁を美味そうにごくごく飲む。
「おっ母さん、こら何の真似だ!いづたげてんのがっ(意地悪してんのかっ)?」と梅太郎。
「んだ」澄まして松が云い、また食事を続ける。
「大奥様、ひでえでがんすっ!」卓二も抗議する。
「それでも生みの親が、おっ母さん!絶食させで食いもん見せづげてっ!」と梅太郎。
「くくくくっ」卓二が泣く。
「食いでえが、梅?」と松。
「食いでえなんてもんでねえ。もう死にてえ!」と梅太郎。
「んだら、死ね!」
「え?」梅太郎が驚く。
「こんだのごどは何もかも、おめ(お前)が商売に精出さねえがら始まったことだなだ」と松。「おめ(お前)のために、家族みんな土蔵に入ってしまって…」松が泣く。
「志乃も多代もが?なして?」梅太郎がぽかんとする。
「ほだなごどはどうでもええだ。梅!死んだ気になって働(はたら)いでけろ。おれももう長ぐはねえ。おめ(お前)だげが頼りだなだ」
「…」
「商いさえちゃーんとやってくれれば色の道も許すだ」と松。
「おっ母さん!それはほんてんが」梅太郎の顔色がパッと明るくなる。
「ああ、ほんてんだ」
「おまんともが?」梅太郎が声を潜めて云う。
「おまんと卓二が許せば、な」松が請け合う。
「多代ともが?」
「志乃が許せば」
「おっ母さんともが?」と梅太郎。
「ああ。おめがその気なら」と松。
「うひょーっ!」梅太郎は空腹も忘れ、天に舞い上がらんばかり。

「喜ぶのはまぁんだ早(はえ)え!おめだげ、ええ思い出来(でぎ)るもんではねんだ」と松。
「?」
「志乃も多代も卓二とやりだがってる。これば許さんなね」
「多代はええげんと、志乃が卓二のぼんぼ(赤ん坊)身籠ったらどうすっだ?奉公人の種だぞ!」
「奉公人でねば文句ねえだべ。卓二ばおれの養子にすっだ。おめの兄弟(きょうでえ)になるだ」
「えええーっ?」梅太郎にとっては驚天動地。
「ええーっ?」卓二にとっても降って湧いたような話である。
「多代にもしものことがあったら、んまぐない(困る)さげ、もう一人おぼごが要るだげのこんだ。多賀屋にとっては、おめの種でも卓二の種でも構わね」
「そげな!」
「ずぶん(自分)の種でおぼご作りでえなら、毎晩志乃ば可愛がればええ!」
「…」と梅太郎。
「卓二」と松。「おめは正直者(もん)だ。忠義者(もん)だし、よぐかしぇぐ(働く)し、口も固(かて)え。いまどき珍しい若え衆(し)だ。おめ(お前)、ゆくゆくは梅太郎の番頭、その先は多代の婿さんの番頭さも勤めでくんねが?おめ(お前)とおまんを夫婦にもしてやるさげ」
「大奥様っ!」と卓二。
「どげだ?」と松。
「勿体(もってえ)ねえ話で…」卓二が嬉し泣きする。
「おっ母さん、卓二はおっ母さんともやんのが?」と梅太郎。
「卓二は郷里(さと)のおっ母さんが恋しいだ。けんど、そうちょくちょく会えるもんでもね。んだがら、おれが母親代わりすっだ」
「…」梅太郎が唖然とする。14歳の卓二が何もかも自分と同等になるわけだ。
「卓二が義弟(おとうと)になんのがやんだら(嫌なら)、断食続けるだな」と松。
「冗談でねえ!商いと色の道、どっちゃも精出すだ!多賀屋ば日本一の米問屋にすっだ!」
それを聞いた松は、この上なく幸せな顔で惚れ惚れと息子を見上げたのだった。

志乃は松から夫・梅太郎の近親相姦の話を打ち明けられた。娘と、そして実母とまで交わっているとは!そんなことを聞けば普通は「郷里(さと)へ帰らせて頂きます」となって、果ては離婚となるところだが、志乃はそうしなかった。夫に気兼ねせず卓二と公然とやれるという交換条件の方が、ずっと魅力的だったからだ。志乃は淫乱になりつつあった。




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