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54. 美代の攻略

清蔵の早漏騒動が落着すると、梅太郎が松に不平を云った。久蔵の妻で清蔵の母・美代が来(こ)ねえじゃねえかというのだ。清蔵だけ加わって美代が来ないのでは騙されたようなものだとぶうたれた。松は清蔵を呼んだ。
「清どん」と松。「おめさんのおっ母さまは、久どんがどだい(どんなに)頼んでもおれだぢの仲間に入りたがらねえつう話だ。このまんまだど、おめさんのおっ母さまが多賀屋のあるごどねえごどば世間に云い触らす恐れもある。そうなったら清どん、おめさんを多賀屋に置いでおぐごどは出来ね。越後屋に帰って貰うしかねえ」
「そ、そげな!おれはもっともっと大奥様とも若奥様ともお多代ちゃんともやりてえだ」清蔵が訴える。
「おめさんの気持(きもぢ)は分(わが)る。けんど、多賀屋の体面も大事(でえじ)だでのう」
「どうすればええでがんすか?教えてけらっしゃい!」清蔵は必死である。
「方法はただ一つ。どげな(どんな)方法でもええがら、おめさんのおっ母さまを仲間にすっごどだ」
「…」清蔵は途方に暮れる。
「どげな方法でもええだぞ」と松が謎をかける。

清蔵は思い余っておまんと卓二に相談した。卓二は頭が切れる方だが、あまり突拍子もないことを考えつく質(たち)ではない。そういうことはおまんの独壇場である。

ある日、清蔵はおまんと卓二を伴って越後屋に戻った。三人とも奉公人ではない身分だったので、薮入りでなくても帰宅出来るのである。この日、久蔵は養蚕農家廻りの出張とかで留守だった。清蔵の母でおまんの養母である美代は若者たちを迎えて大喜びし、御馳走を作り出した。おまんも甲斐甲斐しく料理を手伝った。

夕食の膳におまんが酒の徳利を持って現れた。
「おまん!清蔵も卓どんもまぁんだ未成年だぞ。酒なんぞ飛んでもねえ!」と美代。
「お義母(が)さま」とおまん。「こいづは男衆(し)のためではねっす。お義母(が)さまのためでがんす」
「一人で飲んでもおもしくねえ。要らね」
「折角燗つけだんですさげ、せめで一杯(いっぺえ)だげでも…」とおまん。
「ほうが…」仕方なく美代がおちょこを取り上げ、おまんが注いでくれた酒を呑む。
「よし、お母(が)さまの酒の肴におれが歌うべ」そう云って清蔵が民謡『山形おばこ』を歌い出した。卓二とおまんが手拍子を打つ。美代は嬉しそうに息子の歌に囃子を入れ、おまんに注がれた酒を無意識に何杯も飲み干した。
「おれも負げねえぞ」そう云って、卓二も民謡『花笠踊り』を歌い出した。なかなかの美声である。今度は清蔵が手拍子を打つ。美代は卓二の歌声に聞き惚れ、囃子を入れながら更に数杯盃を重ねた。

楽しい食事も済み、洗い物をおまんに任せた美代は風呂に入った。呑み過ぎたせいで、何度も風呂の中でうとうとしてしまった。危ないので早々に風呂を出、おまんが敷いておいてくれた布団に潜り込んだ。

その晩、美代は艷夢を見た。久し振りに感じるおまんこの快感であった。頭のどこかでは「これは夢だ」と覚めて考えている。頭の別のところでは「夢でもいいからずっと続いて欲しい」と願っている。「これは事実だ。誰かが自分のおまんこを舐めているのだ」と囁く声はなかった。しかし、実際には美代の寝室に忍び入ったおまんが、美代の寝間着をはだけ、そのおまんこを舐めているのだった。あまりの快感、夢にしてはあまりにもリアルな感覚に、美代の脳もついに「これは異常だ」と警戒信号を発した。
「誰?誰だ!」美代が暗闇の中で怒鳴った。
「お義母(が)さま、おまんだっす」布団の下の方からくぐもったおまんの声。
「おめ(お前)、何してるだ!やめろ、やめるだっ!血いは繋がってねえども、身内でそげな…」
「今日はお義父(ど)さまいなさらねえさげ、お寂しいべど思いやして」
「おめ(お前)の知ったこってね。早ぐ自分の部屋さ戻れ!」と美代。
「戻らねっす。お義母(が)さま、親孝行させでけらっしゃい!」とおまん。
「親孝行?馬鹿こぐでね。おめ(お前)の世話にはならね!」
「やらせでけらっしゃい。お願(ねげ)えするす」
おまんはもうびとびとに濡れている美代のおまんこに指を突っ込む。親指で陰核を撫で、突っ込んだ中指と薬指を抜き差しする。
「あうーっ!やめろ!おおーっ、おまん!」美代は身をよじってよがる。女の性感帯と最適なタッチを熟知した同性による愛撫なのだから、感じない方がおかしい。
おまんは美代のおまんこへの刺激は継続しながら、掛け布団を撥ね除け、美代の寝間着の紐をほどいた。そして身体を前進させると、美代の乳房に吸い付き、しゃぶり出した。
「あはーん、むぐぐあーんっ!」美代は艷夢よりずっと濃厚で全身がとろけるような快感に痺れる。もう養母と養女でも何でもよかった。もう行き着くところまで行かなくては身体が承知しなかった。
おまんはさらに身体を前進させ、美代の口に接吻した。美代はたまげた。女同士のおまんこへの愛撫だけでも異常だったが、まさか接吻までとは!おまんは大胆に舌を進入させ、美代の舌を舐め廻した。美代にはまだ抵抗があったが、女同士の舌の絡め合いは何と甘美であることか!美代の身体は、与えられる官能の洪水を貪欲に味わっていた。

と、おまんこに突っ込まれていたおまんの指がすっぽ抜けた。
「あーん!」美代が失望の呻きを漏らす。
しかし、おまんの指はすぐ戻って来てぬるっと膣の中に納まった。美代は満足した。ふと、おまんの指が前よりもずっと奥深くに届いている気がした。気のせいに違いない。指がそう伸びたり縮んだりするわけがない。
おまんが乳房の一つを掴んで舐め出し、もう一方の乳房の乳首を刺激し出した。おまんこをいじくられ、両の乳房を弄ばれている。三つの性感帯を攻められて、美代は胸を弾ませてよがる。「三つ?」また美代の脳内で警報の赤ランプがちかちか点滅した。おまんに手が三本あるわけはない。どうして三ヶ所を攻められるのか。美代はおまんこに意識を集中した。指ではない!摩羅だ!男が自分を犯している!
「だ、誰だ、おれに無断でやってるのは!」ぶるぶる震える声で美代が怒鳴った。
「お義母(が)さま、家(うぢ)の人だっす」とおまん。
「ほんて?清蔵ではねえだな?」と美代。
「お義母(が)さま、卓二でがんす。おれにも親孝行させでけらっしゃい」と卓二の声。
「おー、おめえらは勝手な真似しくさって!」
「お義母(が)さま。おれだぢはお義母(が)さまをお慰めしてえ一心なんだっす。気楽に楽しんでけらっしゃい」とおまん。
「駄目だ。おれはまぁんだ女だ。卓どんのぼんぼ(赤ん坊)生むわけにはいがね!」美代がきっぱり云う。
「お義母(が)さま、おれちゃんと避妊具つけでるっす。心配(しんぺえ)ねえでえがんす」と卓二。
「あじゃー。おめら、そごまで気い配ってるのが?」と美代。「呆れだな。んだら、もう犯(や)られてしまったもんはしょうない(仕方がない)がら、卓どんにイがせで貰うが…」
「その調子だっす。卓どん、お許し出だぞ!」とおまん。

「お義母(が)さま、済まねけんど、四つん這いになって貰えねべが?」と卓二。
「おめさん、犬の体位が好きなのが?やれやれ」照れ隠しに億劫な口調をしたものの、美代は素直に四つん這いになった。おまんが美代の胸の下に潜り込み、乳房をしゃぶり出す。
卓二が美代の膣口に亀頭を当て、愛液で先端を濡らしてからずぶずぶと摩羅をぶち込む。
「あへーっ!」美代が叫ぶ。犬の体位に興奮してか、卓二の摩羅は先刻よりずっと太く長くなったようだ。
卓二は摩羅を突っ込んだまま、美代の太股越しに手を廻し陰核を刺激する。
「あああ!」美代が感じる。
卓二は腰を回転させて摩羅で美代の体内を掻き回す。おまんが両の乳首をいじくり廻す。
「おーんっ!」美代がよがる。
卓二は手で美代の腰を押さえ、ずんぶずんぶとおまんこを突き上げる。汗にまみれた二人の身体の接触によってぺたんぺたんという餅搗きのような音が生じる。
「むぐーっ!」美代は快感を堪え切れない。旦那の久蔵が抱いてくれず、久し振りの性交なので、あまりにも刺激が強過ぎるのだ。両腕は身体を支え切れなくなり、ついに美代は下にいるおまんの上に突っ伏した。
卓二は美代がイきかけていることを察し、腰の動きを急速にした。
「あわわわーっ!ひーっ!」美代がイった。
「お母(が)さーんっ!」清蔵の声がし、射精のために激しく美代の尻を打つぺたぺたぺたぺたという音が続いた。

ぜいぜい胸を弾ませていた美代の興奮が冷めた。すると、記憶の底から「お母(が)さーんっ!」という清蔵の声が甦って来た。なぜ卓二の声でなく清蔵なのか?美代はガバッと起き上がり、自分におまんこしていた男を掴まえた。
「おめは誰だ?卓二か清蔵か?」美代の震える手が男の顔を撫で廻し、正体を知ろうとする。
その時、おまんが灯りを点けた。美代は自分の尻の方に膝をついている男を見た。
「清蔵っ!おめ、何てことしてくれただっ!自分のおっ母さんにぺっちょするだなんてっ!」美代は両手で顔を覆い、髪を振り乱して泣き叫んだ。
「お母(が)さま、許してけらっしゃい」清蔵が美代の身体を抱く。
「ちょす(触る)な!人ば獣(けもの)の道に引き摺り込んでっ!おれだぢは地獄行きだぞっ」美代は息子を振り解こうとする。
「お義母(が)さま」とおまん。「多賀屋の大奥様は旦那さまとやってるでがんす」
「なに?お松さんと梅どんが?母子でがっ!」美代は目を見張る。
「それだげではねす」とおまん。「旦那様はお多代様ともやってるっす」
「父娘で?」美代は開いた口が塞がらない。
「みなさん誰も地獄さ墜ちねで楽しんでるでがんす」とおまん。
「お義母(が)さま」控えていた卓二が進み出て、美代の背中を撫でさする。「おれはおまんと約束した仲だげんと、大奥様とも若奥様ともお多代様ともやってるでがんす。それがら、おれのおっ母さんともやってるっす」
「んまあ!おまん、おめはそれでええのがっ?」と美代。
「おれは卓どんだげでねぐ、旦那様とも清どんとも、お義父(と)っつあんともやってるっす」
「家(うぢ)の人ともが!おめの義父(おやじ)だじぇ!」
「お母(が)さま」と清蔵。「多賀屋では家(うぢ)の人も他所(よそ)の人もねえし、親も子も関係ねえだ」
「ひでえ話だ…」と云いつつ、美代は興奮している。

卓二が背後から美代の乳房を揉む。清蔵が母親の口に接吻し、舌を差し込む。おまんが美代のおまんこに指を突っ込み、第二の急所(Gスポット)を探る。
「ぐわ、あぶぶーっ」美代の理性は若者たちを振り解こうとするが、快感を貪ろうとする性本能に邪魔されて動けない。
おまんは美代の体内の恥丘の裏側を二本の指で押して廻る。
「ぶぐわーっ!」美代が身体を硬直させた。おまんは正しい場所にぶち当たったのだ。硬直が解けると、美代の身体はぐにゃぐにゃになってしまった。
清蔵が母親の身体を寝せ、卓二と交代した。卓二は長らく勃起させたまま待機させていた摩羅を未来の義母のおまんこに突っ込む。清蔵が片方の乳房をしゃぶり、もう一方をおまんがしゃぶる。
「ううーあうあうーっ」美代が動物のように呻く。
卓二が快調のテンポで摩羅を出し入れする。あちこちの性感帯を刺激されている美代は、三人がかりの性交に興奮し、瞬く間に燃え上がった。
「あっあっあっむわーっ!」美代が盛大によがる。
卓二が腰を右に廻し左に廻し、陰核を刺激する。
「わおーんっ!」美代がイった。
「むむーっ!」卓二もイった。

清蔵は、卓二にやられてよがっている母親の顔を見ているうちに、また摩羅を勃起させた。卓二が美代の身体から離れる前に、清蔵はまた避妊具(コンドーム)を装着した。やっと美代の呼吸が収まったかに見えた時、美代はまた勃起した摩羅がおまんこに侵入しようとしているのを感じた。
「せ、清蔵!」(やめて!)と云いたかったが、その言葉は出なかった。(もう近親相姦という毒は飲んでしまった。こうなれば皿だって食うのだ)そう思った。美代は息子の身体に両脚を掛け、息子と一体となって動いていた。もう、美代の抵抗は失われた。

これはおまんが書いた筋書きだった。美代を陥落させるには、卓二が美代を誘惑するなどという単純な作戦では駄目だと思った。多賀屋の乱交に美代を引き込むには、美代の道徳心を崩壊させねばならず、それには清蔵との近親相姦が最善だと思われた。それを抵抗なく遂行させるために女同士の同性愛でスタートし、美代の性欲が目覚めて後戻り出来なくなった段階で卓二を引き込み、さらに体位を変えるタイミングで清蔵にバトンタッチし近親相姦の既成事実を作ってしまう。結果は非常に円滑にコトが運んだと云える。清蔵が無理矢理母親を犯すなどという筋書きではこうはいかなかっただろう。息子に強姦された傷心の美代は実家へ帰ってしまい、自閉症になり、果ては親子の縁が切れるというような結果になっただろうと思われる。

「お義母(が)さま」美代が三度目の天国行きから戻って来たのを見届けたおまんが云う。「お願(ねげ)えするす。おれだちの仲間になってけらっしゃい」
「ふーっ!」美代が大きな溜め息をついた。「そういうごどが。それが狙いでこだら芝居ば仕組んだだか?」
「お母(が)さま」と清蔵。「これはお母(が)さまのためだなだ。人生ば楽しまねば!」
「大きなお世話だ。おれは金輪際多賀屋などに行がねえぞ」と美代。
「お父(ど)さまは多賀屋でええ思いしてるだ。お母(が)さまも楽しめばええだ!」と清蔵。
「清蔵」と美代。「おめ、多賀屋引き払って、家(うぢ)さ帰(けえ)って来(こ)」
「えっ?」予期せぬ美代の反撃に清蔵が戸惑う。
「このうづ(家)でおめ(お前)がやってくれればええべ」と美代。「もう獣になってしまったさげ、ごじゃごじゃ云わね。おめがやりでつったらいづでもやらせでやる。おめのお父(とっ)つあんの前でも構わね」
おまんは驚いた。息子との近親相姦が美代を変えたのは筋書き通りだった。いや、予想以上に効いてしまったと云うべきか。
「お母(が)さま」と清蔵。「それは出来(でぎ)ね。おれはお多代ちゃんに惚れでしまっただ。お多代ちゃん抜きで暮らすなんて考えられねこんだ」
「んだら、三日に一遍だけでも帰(けえ)って来てけろ!」と美代。
「お母(が)さま。おれだぢは多賀屋への招待状ばお母(が)さまに届けたっす。それを受けるか受けねが、どっちかしかねっす」清蔵が母親に迫る。
「行がね。ぺっちょして貰いに多賀屋へ行ぐような、そげな情げねえごどは出来ね」

おまんたちの目論見は頓挫した。美代の頑な堤防(道徳観)に穴を開けることは出来た。だが決壊させることは出来なかった。それでも、三人の報告を聞いた松はがっかりしなかった。美代が近親相姦と乱交に身を委ねた以上、もはや美代が多賀屋のことを悪く云うことは出来ない。万一、美代が多賀屋を誹(そし)ることを考えた場合、こちらも美代の近親相姦と乱交という材料をちらつかせて阻止出来るからである。

美代は悶えた。若者たちは自分の身体に火を点けて去った。忘れていた快楽を思い出させて行ってしまった。あの夜の出来事を反芻しながら、美代は自分の身体から「快楽をくれ!もっとくれ!」と責め立てられていた。美代の身体はぶすぶすとくすぶり、もう一度燃え上がることを望んでいた。美代は自分で自分を慰めた。乳首をいじくり、陰核を刺激し、膣に指を入れて抜き差しした。イくことはイける。しかし、何と味気ないことか。卓二や清蔵の摩羅に翻弄される悦びは素晴らしかった。そして、罪深い近親相姦。忌まわしい言葉とは裏腹に、それは他の男が誰も与えてくれないほど甘美なものであった。自分が産み落した息子の摩羅が産道を塞ぎ、産道を擦り、子宮目掛けて射精する。世の母親たちが望んでも口にしない暗い欲望。それが自分の身体に実現した。美代は、あの夜の記憶から抜け出せなかった。




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