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06. 性欲

翌日。
「兄ちゃん。どうして、兄ちゃんに好きな女の人が出来るまで待てないの?」と由美ちゃん。
「待つって、ナニのことか?」と宏君。
「ナニって何?」
「ナニってえばアレだよ」
「アレ?」
「分んねえやつだな。お前、セックスのこと云ってんだろ?」と宏君。
「うん」と由美ちゃん。
「ナニもアレもセックスのことだよ」
「そうなの?知らなかった」
「そんなことも知らないお前が口出すことじゃないの。すっこんでな」
「すっこまないもん」と由美ちゃん。

「で、何だっけ、お前の質問?」と宏君。
「結婚するとか、好きな女の人が出来るまでナニとかアレしないで待てないのか?ってこと」と由美ちゃん。
「お前ね、男の身体って14歳ぐらいから30歳ぐらいまでは、毎日毎日ひっきりなしに精液を生産するんだ。大昔はその年齢で結婚する奴もいたからよかったけど、今はそうはいかない。勉強、勉強で、社会人になるのが24歳、結婚出来るのが30ちょい前だろ?10年以上もおれたち男は生理に振り回される犠牲者なんだよ」
「よくわかんない」と由美ちゃん。

「あのな。お珍々の奥に精液を溜めるタンクがある。そこが一杯になるとだな、男の生理は『早く出せ、早く出せ』と催促すんだ。その頃は一寸した刺激にも敏感になって勃起しちゃう。おれが何もエッチなこと考えてなくても、身体が勝手に反応しちゃうんだ」
由美ちゃんは顔を赤くしてうつむいていた。この間見た兄の勃起したペニスを思い出したからだ。それは兄の摩擦によって茹で蛸のように赤黒かった。
「だから?」由美ちゃんがか細い声で聞く。
「だから、理性も何も吹っ飛んで、精液を放出しないといられなくなる。女とやりたくなるし、それが不可能ならオナニーしたくなる。毎日、こうなんだ。おれが結婚出来るまで、少なくともあと六、七年はある。順調にいい仕事につけた場合のことだけどな。おれ、あと六、七年も精液溜め続けてらんないよ。お前の云うことは現実的じゃないぜ」と宏君。

「じゃあね、仮定の話で恐縮ですけど」と由美ちゃん。
「なんだい?」と宏君。
「もしよ、もしお兄ちゃん無人島に漂着してたとしたら、どう?餓死しないで生きてるとしたら、やはりそれが溜まるんでしょ?」
「精液?」
「うん」
「そりゃ溜まる。100歳の爺でなきゃ、男はいつでも溜めてスタンバイしてる」と宏君。
「でも、無人島だから女の人はゼロ。どうすんの?」と由美ちゃん。
「仕方ない。オナニーすんだろな」

「じゃ、ここは無人島だと思いなさいよ。女遊びも我慢出来るでしょ?」と由美ちゃん。
「おい、無人島だって山羊とか羊とかいない?鶏でもいい」と宏君。
「いるかもね」
「お前、獣姦って知ってる?」
「ジューカン?何それ?」
「女がいなけりゃ、羊や鶏とナニすんだ。ギリシア時代の航海って、羊を沢山積んでたけど、食べるだけのためじゃないんだ」
「ひえーっ?動物と?」由美ちゃんがたまげる。
「それくらい男の生理ってやつは手に負えないんだ。どんな穴にだって入れちゃう」
「兄ちゃん!」由美ちゃんが眉を吊り上げる。
「なに?」と宏君。
「レディの前で、失礼な表現しないで!」
「穴って云っちゃいけないの?」
「また云った。もうっ!」由美ちゃんが兄を叩く真似をする。

「だからさ、お前が年頃のおれに、あれは駄目これは駄目なんて云うのが酷なこと、分ったろ?」
「わかんない」と由美ちゃん。
「少なくともオナニーぐらいは認めて欲しい。誰にも迷惑かけないわけだし、お前が嫌がる女遊びでもないし」と宏君。
「でも」
「でも、何だい?」
「兄ちゃんのあんな姿見たくないのよ。あれまでは尊敬してたんだけど…」
「もう軽蔑ってか?」
「ちょっとね」と由美ちゃん。

「お前ね。大学の学長だろうが総理大臣だろうが、最高裁長官だろうが、みんなオナニーして育ったんだぞ。今でもやってるかも知れんけど」と宏君。
「まさか」と由美ちゃん。
「オナニーって本当のセックスとは違う。でも、相手に気を使わないでいいからな。既婚者だって、時々やってるって話だ」
「気持ちいいわけ?」と由美ちゃん。
「そりゃ、おまんこには敵わない」
「お兄ちゃんっ!言葉に気をつけてっ!」由美ちゃんが怒る。
「おれ、おまんこって言葉、可愛くて好きだけどな」
「また云う!もうっ!知らないっ!」
「で、なんだっけ?」と宏君。
「気持ちいいのか?ってこと」
「精液を発射する快感はある。そしてすっきりする。勉強の前にやると効果的だ」
「変なの」由美ちゃんが驚く。勉強に関係するとは思わなかったからだ。

「お前、見たいか?見たけりゃやってみせてもいい」宏君がからかう。
「止めてよ。冗談じゃない。そんなことしたら、兄ちゃんのお珍々鋏で切っちゃう」
「ひえーっ!乱暴なやつだな。これから、包丁とか鋏とかは鍵をかけておれが管理する」

お断りしておくが、宏君の精液貯蔵庫の話は科学的に正しいとは云えない。エロチックな夢を見て射精する夢精になることはあっても、通常は溜まり過ぎて溢れるということはなく、射精されない精液は体内に吸収されて行くのだ。宏君の云うように溜まるから出さないといけないというのは、こじつけに過ぎない。




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