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32. 相性

宏君と由美ちゃんは渋谷に買い物に行った。食事も済ませて駅に向かう途中、突然宏君が妹の手を引っ張って手相見の前に座った。
「二人の相性かな?ふむ、どれどれ。いいね。ぴったりじゃな」と占い師。
「ということは、結婚してもいいということですか?」と宏君。
「ということになるな」と占い師。
「二人の将来はどうでしょう?」と宏君。
「悪くない。二人ともいい運勢が出とる」
姓名判断も人相見もみな二人の相性に太鼓判を押した。

「兄ちゃん、あんなの信じるの?」アパートに戻って由美ちゃんが云った。
「普通は女が信じるもんだろ。お前信じないのか?」と宏君。
「だって、兄妹で、同じ親から生まれて育ったわけだから、相性悪いわけないじゃない。あんなのにお金払わなくたって、とっくに分ってることでしょ」
「でも、全部の占い師が結婚すべきだって云ったじゃないか。凄いことだぜ」
「結婚しろなんて云わなかった。相性がいいから、結婚も問題ないだろうって、その程度よ。近親だということも知らないわけだし」由美ちゃんは冷静である。

「お前。そんなにおれが嫌いなのか」と宏君。
「嫌いなら一緒に住んでないわよ。兄ちゃんとおまんこなんかしないわよ。変な云い掛かりつけないでよ」と由美ちゃん。
「おれの気持が分って貰えなくて悲しいんだ」
「兄ちゃん、どうしてそうあたしにこだわるの?」
「お前が好きだから」と宏君。
「あたしのどこが好きなの?」由美ちゃんが畳み掛ける。
「そんな…。全部だ。お前は可愛いし、いいやつだし、兄妹という以上に友達としてもセックス・パートナーとしても最高だし」

由美ちゃんが突如泣き出す。
「由美!」宏君がびっくりする。
「あたしたち、どうして兄妹なの?兄妹でなきゃ、大手を振って恋人同士になれるし、結婚して子供も生めるし、人生バラ色なのに。同じ親から生まれたばっかりに、こそこそ愛し合わなきゃなんないなんて」と由美ちゃん。
「由美。おれ嬉しいよ。そう云ってくれただけで。おれ、幸せだ」二人は抱き合った。

「二人でアメリカに行くってのはどうだ?」と宏君。「あっちなら堂々と夫婦で暮らせるだろ」
「子供は生めないわよ。恐いから」
「人工授精は?」
「兄ちゃんがインポだとか、ちゃんとした理由がないと駄目よ」
「おれ、やり過ぎてインポになる。なら、いいだろ?」と宏君。
「おまんこしてくれない兄ちゃんと暮らすなんて意味ないじゃない!」と由美ちゃん。
「あ、おれのことスケベだとか非難するけど、お前だってスケベじゃないか!」宏君がなじる。
「いけね!」由美ちゃんがベロを出す。

翌日、宏君がアパートに戻ると由美ちゃんが出迎えた。
「お帰りなさい、あなた」と由美ちゃん。
「あなた?」宏君がびっくりする。そんな呼ばれ方は初めてだ。
「兄ちゃん、あたしと夫婦みたいになりたいって云うじゃない?そういう暮らしをしたら、どうなるのか試してみようと思って」
「シミュレーションか」
「そ!」

宏君が着替えて、台所で料理している由美ちゃんに声をかける。
「メシ前にビール飲みたい。缶ビール一本残ってたよな?」と宏君。
「もう無い」と由美ちゃん。
「無い?」宏君が呆気に取られる。
「あたし、昼に呑んじゃったの。あんまり暑かったから」
「お前、いつから呑んべになったんだ」
「ごめんなさい、あなた」と由美ちゃん。
「呑んでもいいけどな、補充しといてくれよ」あなたと呼ばれては怒るわけにもいかない。

「じゃ、メシだ。メシにしよう」
「あなた、あたし謝らなきゃいけないの」と由美ちゃん。
「何だ?」
「お料理、上手に出来なかったの」
「少しぐらいまずくたっていいよ。腹減ってるから、何でも食える」
「だといいんだけど」
由美ちゃんが御飯と味噌汁、お料理を運んで来て、折りたたみ座卓に載せる。
「何だい、これ?」宏君は見たこともない料理に目を丸くする。
「TVでやってたの。真似したんだけど、材料も足りないし、いい形にならなかったの」
「ふーん?じゃ、頂きまーす」
「頂きます」と由美ちゃん。

「うぷっ!何、この料理。ひでえ味!」と宏君。
「あなた、済みません」由美ちゃんが謝る。
「悪いけど、これ食えないや」と宏君。
「ごめんなさい」と由美ちゃん。
「おれ、おでん食ってくら。お前も行くか?」
「ううん。あたし責任とって、これ食べる」

宏君が財布を手に外へ行こうとする。
「兄ちゃん、頭に来たね?」と由美ちゃん。
「うん!」と宏君。
「やっぱり駄目だよ、あたしたち。夫婦みたいに暮らすなんて」
「今日だけだよ。おれ、いつもこんな風にならない」
「そうかしら?」

おでん屋から戻った宏君が由美ちゃんとおまんこしようとする。
「あたし、生理なの。ごめんなさい」
宏君は頭に来た。ビールは無い、料理はまずい、おまんこは出来ない。宏君はぶすっとして、妹を放し、ふて腐れた。

夜、喉が渇いた宏君が冷蔵庫を開けた。驚いた!なんと、ちゃんと缶ビールが一本あるではないか。
「おい!ビール、あるじゃないか!」と宏君。
「あら、そう?」と隣室の寝床の由美ちゃん。
「『あら、そう?』じゃないよ!どうして騙したんだ?」
「勘違いしたのね」

「おい、やらせろ」宏君が妹を抱く。
「何を?」由美ちゃんがしらばくれる。
「あれさ」
「だって、生理だもん」と由美ちゃん。
「生理でもいい。やる」
「そんな無茶苦茶な!」
「ほんとに生理かどうか見てやる。脱げ!」
「やーん!」二人は揉み合う。

宏君は妹のおまんこを点検する。妹はナプキンもタンポンもしていないし、宏君が挿入した指にも血の色はつかなかった。
「やっぱり嘘だった。あのまずい料理もわざとやったんだろ。どういうことだ?嘘ばっかりつきやがって」と宏君。
「兄ちゃんを試したの。あたしをどこまで許すか」
「そういうのを女の浅知恵ってんだ。お前、人を試すなんてよくないぞ。傷ついた記憶はそうすぐには消えないんだから」
「兄ちゃん怒らなかったけど、凄く不機嫌だった」と由美ちゃん。
「あれだけ重なりゃ当然だよ」と宏君。
「あたしたち、相性いいなんてでたらめよ。ちっとも良くないわ」
「お前が一杯嘘ついたのがいけないんだ」
「でも、ああいうことあり得るわ。あたし、兄ちゃんの本性を見た気がする」
「ひどいよ、そんな。ペテンにかけておいて!」
「あたし、あんな仏頂面の兄ちゃん、嫌い。見たくない」
「勝手だなあ!」
「そうよ。女は勝手で我がままな生きものなのよ。それを我慢出来ないんじゃ、あたしとずっと暮らすなんて無理よ」と由美ちゃん。
「…」宏君がしゅんとなる。

「兄ちゃん、ごめんね?騙して」由美ちゃんが兄の胸に顔を寄せる。
「おれも反省してる」と宏君。
「兄ちゃん、やりたい?」
「うん!」
「じゃ、仲直りしよ!」二人はキスし合った。




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